簿記における「売掛金」の勘定科目は、ビジネス取引において重要な役割を果たします。この記事では、売掛金の基本概念から計上方法、取引処理に至るまでを、簿記初心者にも分かりやすく解説します。売掛金の知識を身につけて、簿記のスキルを向上させましょう。
目次
- 簿記の勘定科目:売掛金とは?
- 掛け取引とは
- 高校生でもわかる売掛金の解説
- 売掛金の確認問題
- 正解発表
- 売掛金と混同しやすい勘定科目を解説
- 買掛金との違い
- 未収入金との違い
- 前受金との違い
- 立替金との違い
- 仮払金との違い
- 売掛金の取引の全体像は?
- 商品の販売
- 代金の受け取り
- 簿記の仕訳事例:売掛金
- 売掛金が発生した際の仕訳事例
- 売掛金を回収した際の仕訳事例
- 売掛金未回収(回収不可能)時の仕訳事例
- 掛けで売り上げた商品が返品された時の仕訳事例
- 売上割引を行った時の仕訳事例
- 商品販売時に消費税が発生した時の仕訳事例
- 売掛金の仕訳問題に挑戦
- 売掛金の実際の事例を企業の決算書から紹介
- ZOZOのビジネスから見る売掛金
- くら寿司のビジネスから見る売掛金
- 売掛金の勘定科目:まとめ
簿記の勘定科目:売掛金とは?
売掛金(うりかけきん)とは、商品やサービスを販売したものの、まだ現金が未回収の状態である債権のことです。
売掛金は、簿記の中で重要な役割を果たしており、会社の収益やキャッシュフローに関わるため、適切な管理が必要です。
会計上では、資産の勘定科目となります。
掛け取引とは
商品やサービスの販売時に、現金を受け取らない取引を「掛け取引」と言います。
掛け取引とは、商品やサービスを現金で即時に支払わず、後日決済することが約束された取引方法です。掛け取引は主に、信頼関係が築かれている取引先同士で行われます。
掛け取引には、現金をすぐに支払わずに一定期間経過後に支払うことで、資金繰りの面で買い手にメリットがあります。
また、売り手にとっても、顧客との信頼関係を深めることができます。
高校生でもわかる売掛金の解説
ビジネス経験の無い学生の方向けに、身近な事例で売掛金を解説します。
例えば友達に中古のゲームを販売したケースを考えてみましょう。
友達がゲームの引き渡し時にお金を持っていない場合、「来月のお小遣い日に払うね!」と言われたとします。この時、友達が後でお金を支払うという約束をしているため、あなたは友達からの「売掛金」が発生していると考えることができます。
会社の場合も同じで、商品やサービスを提供したが、お客様からまだお金を受け取っていない場合、その金額を売掛金として記録します。売掛金は、会社の資産の一部であり、後日受け取ることが見込まれるお金です。
売掛金の確認問題
それでは、ここまでの内容を踏まえて、売掛金に関する問題です。
売掛金とは、どのような勘定科目でしょうか?
タップで回答を見ることができます
後で代金を受け取る債権
後で代金を支払う債務
商品提供前に先に受け取るお金
使用目的が不明な前払金
正解発表
正解は、選択肢①後で代金を受け取る債権です。
売掛金とは、商品やサービスを販売したものの、まだ現金が未回収の状態である債権のことです。
会計上では、資産の勘定科目となります。
売掛金と混同しやすい勘定科目を解説
売掛金と混同しやすい勘定科目が存在します。ここからは、売掛金と混同しやすい下記の勘定科目についてを解説します。
- 買掛金
- 未収入金
- 前受金
- 立替金
- 仮払金
買掛金との違い
買掛金とは、商品やサービスを購入したものの、まだ代金が未払いの状態である債務のことです。
同じ掛け取引で発生しますが、売掛金はあとで代金を回収する債権に対して、買掛金はあとで代金を支払う債務という違いがあります。
買掛金について詳しく学びたい方は、下記の記事がおすすめです。
未収入金との違い
未収入金とは、本業の商品以外のものを売って、後で代金を受け取ることができる権利のことを言います。
売掛金が本業の取引で発生する勘定科目であるのに対して、未収入金は本業以外の取引で発生する勘定科目という違いがあります。
未収入金について詳しく学びたい方は、下記の記事がおすすめです。
前受金との違い
前受金とは、商品を提供する前に先に受け取るお金のことを言います。
売掛金は商品を提供し、あとで代金を回収する債権ですが、前受金は商品の提供前に先に代金を受け取るという違いがあります。
前受金について、詳しく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。
立替金との違い
立替金とは、従業員や取引先などが負担すべき金額を会社が一時的に立て替えた際に使用する勘定科目のことを言います。
あとで代金を回収する点で同じですが、売掛金は営業活動に対する債権であるのに対して、立替金は代金の立て替えであるという違いがあります。
立替金について詳しく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。
仮払金との違い
仮払金とは、使用目的が不明な金額を前払いした際に、一時的に使用する勘定科目のことを言います。
売掛金は使用目的が明確な売上債権ですが、仮払金は使用目的や金額が不明確な前払い金という違いがあります。
仮払金について詳しく知りたい方は下記の記事がおすすめです。
売掛金の取引の全体像は?
売掛金を用いた取引の流れの全体像を紹介します。
商品の販売
まず、商品を掛けで販売し、代金の受け取りは後日とします。
この時、掛けで商品を販売したため売上が増加するとともに、売掛金が増加します。
代金の受け取り
その後、期日が来たので代金を受け取ります。
売掛金を回収したため、代金が増加すると同時に、売掛金が減少します。
簿記の仕訳事例:売掛金
簿記上の取引事例を通じて、売掛金の使い方を解説します。
売掛金が発生した際の仕訳事例
「商品1,000円を掛けで販売した。」という取引の事例を使い、売掛金が発生した際の仕訳の流れを順に説明します。
売掛金発生時:売掛金の増加と売上の発生
商品を販売したことから売上が発生しているため、貸方(右側)に売上(収益)1,000円を記入します。
代金はあとで受け取るため、売掛金が増加します。そのため、借方(左側)に売掛金(資産)1,000円を記入します。
売掛金を回収した際の仕訳事例
「売掛金1,000円を現金で回収した。」という取引の事例を使い、売掛金を回収した際の仕訳の流れを順に説明します。
売掛金回収時:売掛金の減少と現金の増加
支払い期日が到来し、売掛金分の代金を受取ったら、「代金を回収する権利」が消滅し売掛金は減少します。そのため、貸方(右側)に売掛金(資産)1,000円を記入します。
代金を現金で回収したため、現金が増加します。したがって、借方(左側)に現金(資産)1,000円を記入します。
売掛金未回収(回収不可能)時の仕訳事例
「売掛金1,000円が貸し倒れた。」という取引の事例を使い、売掛金未回収時の仕訳の流れを順に説明します。
売掛金未回収時:売掛金の減少と貸倒損失の発生
貸し倒れとは、取引先の倒産などによって、売掛金や受取手形が回収できなくなることです。
売掛金の回収ができなくなったため、売掛金が減少します。そのため、貸方(右側)に売掛金(資産)1,000円を記入します。
売掛金が貸し倒れたため、貸倒損失が発生します。したがって、借方(左側)に貸倒損失(費用)1,000円を記入します。
貸倒損失について詳しく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。
掛けで売り上げた商品が返品された時の仕訳事例
「掛けで売り上げた商品1,000円が品違いのため返品された。」という取引の事例を使い、掛けで売り上げた商品が返品されたされた時の仕訳の流れを順に説明します。
商品返品時:売掛金の減少と売上の発生
商品が返品されたため、取引がなかったことになります。そのため、以前行った仕訳の処理を取り消します。
したがって、貸方(右側)に売掛金(資産)1,000円を記入し、借方(左側)に売上(収益)1,000円を記入します。
返品処理の仕訳についてより詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
売上割引を行った時の仕訳事例
「売掛金1,000円の受け取りについて、割引有効期間内につき2%の割引を行い、残額を小切手で受け取った。」という取引の事例を使い、売上割引を行った時の仕訳の流れを順に説明します。
売上割引時:売掛金の減少、現金の増加と売上割引の発生
売上割引とは、商品・サービスの提供により発生した売上債権について、期日よりも前に支払いがあった場合などに、債権の金額を一部免除することをいいます。
売掛金を回収したため、売掛金が減少します。そのため、貸方(右側)に売掛金(資産)1,000円を記入します。
売上割引を行った際は、受取金額から値引き相当額を免除するため、借方(左側)に売上割引(費用)20円(1,000円×2%)を記入します。
残額を小切手で受け取ったため、借方(左側)に現金(資産)980円を記入します。
商品販売時に消費税が発生した時の仕訳事例
「商品1,100円(消費税10%)を掛けで販売した。」という取引の事例を使い、商品販売時に消費税が発生した時の仕訳の流れを順に説明します。
消費税発生時:売上の発生と現金・仮受消費税の増加
商品を販売した際に受け取った消費税は、あとで税務署に納付するため仮受消費税(負債)で処理します。
そのため、貸方(右側)に仮受消費税(負債)100円を記入します。
商品1,000円分は売上となるため、貸方(右側)に売上(収益)1,000円を記入します。
商品は掛けで販売したため、借方(左側)に売掛金(資産)1,100円を記入します。
消費税の仕訳についてより詳しく学びたい方は、下記の記事をご覧ください。
売掛金の仕訳問題に挑戦
ここまでの内容で、売掛金の仕訳の流れを理解していただけたかと思います。
早速、下記のLINEアプリから練習問題に挑戦してみてください。
売掛金の実際の事例を企業の決算書から紹介
それでは、最後に売掛金の実際の事例を企業の決算書から紹介します。
今回はZOZOとくら寿司を事例に解説します。
ZOZOのビジネスから見る売掛金
ZOZOはアパレルを扱うECサイトを運営しています。
オンライン販売のため、販売してから入金までに時間がかかり、その分が売掛金に計上されます。
くら寿司のビジネスから見る売掛金
従来くら寿司は現金払いのみでしたが、キャッシュレスが流行る流れから、くら寿司は2017年4月からキャッシュレス決済を導入しています。
その結果、2017年10月期決算から今まで存在しなかった売掛金の勘定科目が登場しました。
これは、商品を提供し顧客がキャッシュレスで支払うことで、現金をあとでキャッシュレス会社から受け取るため発生したものです。
売掛金の勘定科目:まとめ
今回は簿記3級に登場する「売掛金」という勘定科目の意味を解説しました。
簿記で使う売掛金は主に商品を掛けで販売した時に使用されます。
また、売掛金の他に買掛金や未収入金のような似た勘定科目があるため、確実に押さえておくのがおすすめです。
売掛金は試験問題でも登場する可能性の高い勘定科目であるため、確実に習得しておきましょう!
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