財務分析とは、企業の健全性や成長性を評価するための重要なツールであり、投資家や経営者にとって必須のスキルとなっています。
この記事では、「倒産してしまった会社」の決算数値を題材に、財務分析の基本的な概念から、より深い理解を得るための高度なテクニックまで、一歩一歩詳しく解説していきます。
新卒くん
数字を見ただけで、会社の経営状況が読めるようになりたいです。
頑張ります!
倒産してしまった企業は?
それでは、早速クイズです。
下記の2つの会社のうち、倒産してしまった会社はどちらでしょう?
一方の会社は、業界を代表する優良企業。
もう片方の企業は、過去に倒産した会社の、上場廃止直前の決算数値です。
新卒くん
え?どちらかが倒産した会社の決算数値なの…?
どこを見たらいいかわからないよ。
タップで回答を見ることができます
選択肢①
選択肢②
両方の企業が倒産する
両方倒産しない
それでは正解の発表です。
正解は選択肢②でした。
- 選択肢①:パーク24(駐車場・カーシェア最大手)
- 選択肢②:エフ・オー・アイ(2010年上場廃止)
皆さんは、自信を持って正解することができましたか?
新卒くん
1mmもわかりませんでした。
正直、負債が大きいから左の会社を選んでましたよ。
現時点で全くわからなかったとしても、心配は不要です。
この記事を通じて、あなたは決算数値を分析する際の重要な視点を身につけることができます。
財務分析というテーマは複雑に思えるかもしれませんが、図解と事例を通じて初心者でもわかるように解説します。
ぜひ最後まで読み進めて、財務分析の知識を深めてください。
目次
- 倒産してしまった企業は?
- 登場企業の紹介
- 用いられた粉飾の手口
- 架空売上の数字の動き
- 架空売上の概要
- 通常の取引の数値の動き
- 架空売上の数値の動き
- 決算書を見る時の着眼点は?
- 増加する売上債権
- 増加する短期借入金の意味
- 売上債権回転期間に異常が発生
- 財務分析力の鍛え方は?
- 基礎知識を身に付けよう
- 数字に触れよう
- 分析力を鍛えるトレーニング
今回は業績が傾いてしまった企業の決算数値を題材に、粉飾決算の特徴や決算書を読む際の着眼点を解説します。
登場企業の紹介
株式会社エフオーアイ(以下エフオーアイ)は、1994年に設立された半導体製造装置メーカーです。
エフオーアイは、グローバルに事業を展開し、2009年に上場しました。
しかし、2009年に上場した後、2010年に粉飾決算が明らかになり、上場廃止が決定されました。
この事件は、新規上場から上場廃止までの7ヶ月という短期間で発覚します。
その後、元社長と関係者は逮捕され、エフオーアイは倒産します。
学生くん
なるほど。
この決算数値は粉飾された数値でもあったのですね。
新卒くん
粉飾が原因で倒産してしまったのですね。
ちなみに、どのような内容の粉飾だったのでしょうか?
用いられた粉飾の手口
粉飾には「架空売上」という手口が行われました。
その結果、公表された売上高118億円のうち、実際の売上は約2億円であり、その差はなんと60倍にも上りました。
新卒くん
架空売上?
正直よくわかりません。
架空売上の数字の動き
ここからは、架空売上を行った際の、数値の動きについてを解説します。
架空売上の概要
架空売上とは、一言で言えば、企業が実際には存在しない売上を報告書などに記載する行為を指します。
これは不正行為であり、企業の信用を損ない、法的な問題を引き起こす可能性があります。
新卒くん
ふーん。
普通の取引と、架空売上の取引では、
どのような違いがあるのでしょうか…?
通常の取引と架空売上の取引は、その性質と結果において大きく異なります。
ここからは、それぞれを比較して解説します。
通常の取引の数値の動き
通常の企業間での販売取引は、下記の流れで行われます。
- 商品の販売
- 現金の入金
Step1.商品の販売時
通常の取引の場合、商品を販売した時点で、売上高と売上原価が計上されます。
同時に、販売した商品の対価として売掛金を受け取り、資産科目である売掛金が増加します。
売掛金とは、商品を販売したものの、未だ現金の回収がされていない状態の金額を意味します。
企業間の取引は、金額の桁も大きくなるため、現金をその場で渡すということはほぼありません。
従って、売掛金などを使用した「掛け取引」が行われます。
売掛金について詳しく学びたい方はこちら
Step2.現金の入金時
その後、支払い期日が到来すると、買い手企業から現金が振り込まれます。
決算数値上では、このタイミングで資産科目である現金が増加し、一方で売掛金が減少します。
これが、通常の取引の数字の動きとなります。
架空売上の数値の動き
一方、架空売上の取引は、実際には商品やサービスが売買されていないにもかかわらず、売上があるかのように報告されます。
具体的には、「Step1.商品の販売」のみが決算数値上に積みあがっていき、いつまで経っても現金が振り込まれない状態となります。
新卒くん
な…なるほど。
売掛金だけが膨れ上がっていくのですね。
決算書を見る時の着眼点は?
それでは、改めてエフオーアイの決算数値を確認してみましょう。
怪しい数値に気づきましたか?
増加する売上債権
まずは、資産の大部分を占める売掛金の存在です。
売掛金が滞留しているということは、何らかの理由で現金の回収に時間がかかっていることを意味します。
増加する短期借入金の意味
売上は増加していたとしても、いつまで経っても売掛金を現金化することができなければ、いずれ現金が底を尽きてしまいます。
そこで、別の資金調達手段が必要です。
今回は、短期の借入金を利用することで、なんとか資金繰りを行っている様子が伺えます。
売上債権回転期間に異常が発生
新卒くん
しかし、「売掛金がただ大きいだけ」という場合もありますよね?
それだけでは数字の違和感に気づけないかもしれません…
大きさだけで判断するのは、慣れていないと難しいのは事実です。
そこで、経営指標を併せて確認してみましょう。
おかしな取引が発生した場合、経営指標に異常が現れます。
今回のケースでは、売上債権回転期間の数字が徐々に壊れていきます。
売上債権回転期間の意味
売上債権回転期間とは、商品を販売してから、現金の回収までの期間を意味する指標です。
「月末締めの翌月払い」のようなケースでは、売上債権回転期間は30日前後となります。
業種によって回収期間に差はあるものの、長くても60日~90日程度に落ち着きます。
エフオーアイの売上債権回転期間
架空売上を行っていたエフオーアイの売上債権回転期間は700日を示していました。
つまり、「商品を販売してから現金を回収するまでに700日かかる」という意味です。
新卒くん
700日は流石におかしいですね!
確かにこれなら違和感に気づきそうです。
このように、「売ったふり」をする架空売上では、売上高は大きく表示されるものの、いつまで経っても現金が回収されないため売掛金が膨張していく傾向にあります。
財務分析力の鍛え方は?
以上、倒産直前の会社の決算書の紹介でした。
企業の決算書を読む際の着眼点の1つとして押さえておきましょう。
最後に財務分析力の鍛え方についてを紹介します。
基礎知識を身に付けよう
決算書の勘定科目が何を意味しているのかを知ることが大切です。
今回のケースでは、「売掛金」という科目がわからなければ、違和感に気づくことができません。
従って、まずは簿記3級レベルの基礎知識を身に付けることが大切です。
数字に触れよう
決算数値がどのように出来上がるのかを学ぶことで、どのような取引が行われているかを知ることが可能となります。
今回のケースでは、商品を販売して終わりではなく、現金の回収取引まで見えていなければ、違和感に気づくことができません。
また、現金を回収することができない場合、かわりの資金調達手段が必要となります。
今回のケースでは短期の借入金が用いられています。
このように、ビジネスの流れと、数字の動きを体で覚えることは分析力の向上に繋がります。
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