未収収益は、決算整理仕訳でよく出題される経過勘定科目です。
この記事では、未収収益の取引の全体像や関連する勘定科目、具体的な仕訳事例についてを簿記初心者向けにわかりやすく解説します。未収収益の知識を身につけて、簿記のスキルを向上させましょう。
目次
- 未収収益とは?
- 高校生でもわかる未収収益の解説
- 未収収益の確認問題
- 正解発表
- 未収収益と間違えやすい勘定科目を解説
- 売掛金との違い
- 未収入金との違い
- 未収収益の取引の全体像は?
- 未収収益による決算整理
- 再振替仕訳
- 収益の発生
- 未収収益の仕訳事例
- 資金を貸し付けた時の仕訳事例
- 決算整理手続きを行う際の仕訳事例
- 再振替仕訳を行う際の仕訳事例
- 貸し付けた資金を利息とともに回収した時の仕訳事例
- 未収収益の仕訳問題に挑戦
- 未収収益の帳簿上の動き
- 資金貸付時
- 決算整理時
- 未収収益のまとめ
未収収益とは?
未収収益(みしゅうしゅうえき)とは、継続的なサービス提供に対する収益を後で受け取る権利を表す勘定科目です。決算時に当期の収益を調整する際に使用します。
未収収益は、継続的な役務に対する対価を後で受け取る債権であるため、簿記上では資産の勘定科目となります。
未収収益は、決算のタイミングで、サービスをすでに提供しているにもかかわらず、現金等をまだ受け取っていない場合に使用します。
具体例として、貸付金に対する見返りとして発生した利息を後で受け取るケースや、不動産を貸した際に発生する家賃を後で受け取るケースなどが挙げられます。
高校生でもわかる未収収益の解説
ビジネス経験の無い学生の方向けに、身近な事例で未収収益を解説します。
今回は、家庭教師を例に考えてみましょう。
例えば、家庭教師として顧客に学習指導を行い、代金は翌月の後払いだったとします。この場合、4月のサービスを提供したとしても、4月末の時点ではまだ代金を受け取っていない状態です。この時、まだ受け取っていない収益を受け取る権利として「未収収益」を使用します。
未収収益の確認問題
それでは、ここまでの内容を踏まえて、未収収益に関する問題です。
未収収益の特徴として当てはまるものを選びなさい。
タップで回答を見ることができます
費用を払いすぎている状態
費用をまだ払っていない状態
収益をまだ受け取っていない状態
収益を受け取りすぎている状態
正解発表
正解は、選択肢③収益をまだ受け取っていない状態です。
未収収益とは、まだ受け取っていない収益を受け取る権利を表す資産の勘定科目です。
選択肢①は前払費用、選択肢②は未払費用、選択肢④は前受収益の説明です。
未収収益と間違えやすい勘定科目を解説
未収収益と間違えやすい勘定科目が存在します。ここからは、未収収益と間違えやすい下記の勘定科目について解説します。
- 売掛金
- 未収入金
売掛金との違い
売掛金(うりかけきん)とは、商品やサービスを販売したものの、まだ現金が未回収の状態である債権のことをいいます。
未収収益は、継続的なサービスの代金を後で受け取る場合に、収益の金額を適切な数値に修正するために使用します。一方で、売掛金は、本業の商品や単発のサービスを販売し後で代金を受け取る場合に使用します。
売掛金の仕訳方法についてはこちら
未収入金との違い
未収入金(みしゅうにゅうきん)とは、本業に関わる商品やサービス以外のものを販売し、後で代金を受け取ることができる権利として使用されます。
未収収益は、継続的なサービスの代金を後で受け取る場合に、収益の金額を適切な数値に修正するために使用します。一方で、未収入金は、本業以外の商品や単発のサービスを販売し後で代金を受け取る場合に使用します。
未収入金の仕訳方法についてはこちら
未収収益の取引の全体像は?
未収収益を用いた取引の流れの全体像を紹介します。
未収収益による決算整理
決算時に未収収益による決算整理を行います。
今期の収益を計上するとともに、未収収益が増加します。
再振替仕訳
その後、翌期に再振替仕訳を行います。
収益を取り消すと同時に、未収収益が減少します。
収益の発生
期日が到来したため、代金を受け取ります。
結果として、収益が発生し、代金が増加します。
未収収益の仕訳事例
簿記上の取引事例を通じて、未収収益の使い方を解説します。
資金を貸し付けた時の仕訳事例
「1/1に取引先に現金1,000万円を貸し付けた。毎月10万円の利息が発生し返済日である12/31に1年分の利息120万円と共に元本を受領する。」という取引の事例を使い、資金を貸し付け時の流れを順に説明します。
貸付時:貸付金の増加と現金の減少
他社や他人に貸し付けた場合には、「貸付金」という勘定科目が増加します。
そのため、借方(左側)に貸付金(資産)1,000万円を記入します。
また、現金で貸し付けたため、「現金」という勘定科目が同時に減少します。
したがって、貸方(右側)に現金(資産)1,000万円を記入します。
貸付金の仕訳方法についてはこちら
決算整理手続きを行う際の仕訳事例
「決算整理により、3か月分の受取利息30万円を計上する(10万円×3か月)。利息の受取りは元本返済時のため、未収収益として計上する。」という取引の事例を使い、決算整理手続きを行う際の仕訳の流れを順に説明します。
決算整理仕訳時:受取利息の発生
資金を貸し付けている見返りとして利息が発生します。利息は時間に応じて発生するため3か月分(1/1~3/31)の受取利息を計上します。
そのため、貸方(右側)に受取利息(収益)30万円を記入します。
受取利息の仕訳方法についてはこちら
決算整理仕訳時:未収収益の増加
収益が発生しているものの、未だ現金として受け取っていません。したがって、収益を受け取る権利として「未収収益」という勘定科目が増加します。
そのため、借方(左側)に未収収益(資産)30万円を記入します。
再振替仕訳を行う際の仕訳事例
「1期目に計上した未収収益(資産)を2期目の期首に振り替える仕訳を行なう。」という取引の事例を使い、再振替仕訳を行う際の仕訳の流れを順に説明します。
再振替仕訳時:未収収益の減少
まずは前期に計上した未収収益を取り崩す仕訳を行ないます。未収収益を取り崩すためには同額の未収収益を貸方に計上し、未収収益の金額を0とします。
そのため、貸方(右側)に未収収益(資産)30万円を記入します。
再振替仕訳時:受取利息の取り消し
同時に、前期に収益に計上した分の受取利息(1/1~3/31に相当する額)を取り消します。この仕訳により、2期目の正確な受取利息の額を算出することができます。
したがって、借方(左側)に受取利息(収益)30万円を記入します。
貸し付けた資金を利息とともに回収した時の仕訳事例
「12月31日に貸し付けた1,000万円を受領した。また、12か月分の利息である120万円を現金で受け取った。」という取引の事例を使い、貸し付けた資金を利息とともに回収した時の仕訳の流れを順に説明します。
元本回収時:現金の増加と貸付金の減少
貸付金が返済された場合には、「貸付金」という勘定科目が減少します。
そのため、貸方(右側)に貸付金(資産)1,000万円を記入します。
また、現金で回収したため、「現金」という勘定科目が同時に増加します。
したがって、借方(左側)に現金(資産)1,000万円を記入します。
利息受取時:現金の増加と受取利息の発生
利息を受け取った場合には、「受取利息」という勘定科目が発生します。
そのため、貸方(右側)に受取利息(収益)120万円を記入します。
利息は現金で受け取ったため、「現金」という勘定科目が同時に増加します。
したがって、借方(左側)に現金(資産)120万円を記入します。
未収収益の仕訳問題に挑戦
ここまでの内容で、未収収益の仕訳の流れを理解していただけたかと思います。
早速、下記のLINEアプリから練習問題に挑戦してみてください。
未収収益の帳簿上の動き
最後に、未収収益の帳簿上での動きを解説します。
帳簿上の動きは、簿記を理解する際に、非常に重要となるため、必ず押さえておきましょう。
資金貸付時
資金を貸し付けた際は、貸付金が増加し、手元にある現金が減少します。
決算整理時
3か月分の利息を未収収益として計上します。
翌期首の再振替仕訳時
翌期になった際は、前期に計上した未収収益の再振替仕訳を行います。
収益の発生時
貸し付けたお金を受領したため、貸付金が減少し現金が増加します。
また、返済期日に際して利息を受け取ったため、受取利息が発生し現金が増加します。
未収収益のまとめ
今回は簿記3級に登場する「未収収益」という勘定科目の意味や取引事例を解説しました。
未収収益には間違えやすい勘定科目として、売掛金や未収入金があるため注意しましょう。
また、未収収益の取引の流れは仕訳問題で頻出のため覚えておく必要があります。
試験問題でも登場する可能性の高い勘定科目であるため、しっかり理解しておきましょう!
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