仮払金とは？簿記の勘定科目を仕訳事例を用いてわかりやすく解説

旅費交通費の事前払いのように、金額や内容が未確定の段階で先にお金を支出する場合があります。この場合、まだ内容が確定してない状態での現金の支出のため、「仮払金」という勘定科目で処理します。

この記事では、仮払金の取引の全体像や関連する勘定科目、具体的な仕訳事例についてを簿記初心者向けにわかりやすく解説します。仮払金の知識を身につけて、簿記のスキルを向上させましょう。

なお、簿記を基礎からしっかり学びたい方は、まずは先に下記のトレーニングから始めてみてください。

仮払金とは？

仮払金（かりばらいきん）とは、使用目的が不明な金額を前もって支払ったときに、一時的に使用する勘定科目のことを言います。
使用目的や金額がはっきりした場合は、正しい勘定科目に振り替える必要があります。ホームポジションは、貸借対照表の資産グループに属します。

勘定科目について基礎から学びたい方は、下記の記事がおすすめです。

仮払金の具体例

仮払金の具体例として、従業員が出張に行く際、何にいくらかかるか分からないときに、会社が予め現金を前渡しするケースなどが挙げられます。

高校生でもイメージできる仮払金

ビジネス経験の無い学生の方向けに、身近な事例で仮払金を解説します。

今回は修学旅行に行くケースを考えてみましょう。
修学旅行の際にかかると予想される費用の一部を事前に学校側に支払います。この費用は、例えば宿泊費や食事費、観光地の入場料など、まだ具体的な金額が確定していないものも含まれています。この場合、支払った金額を「仮払金」として一時的に記録します。

修学旅行が終わった後、実際にかかった費用が明確になります。この時、仮払金から正しい勘定科目に振り替える必要があります。

また、もし徴収された金額が実際の費用より多かった場合、生徒たちに差額を返金することもあります。

仮払金と間違えやすい簿記の勘定科目を解説

仮払金と間違えやすい勘定科目が存在します。ここからは、仮払金と間違えやすい下記の勘定科目についてを解説します。

• 仮受金
• 立替金
• 前払金
• 未払金
• 小口現金

仮受金との違い

仮受金（かりうけきん）とは、入金・送金されたがその原因がわからない際に一時的に使用する勘定科目のことを言います。

仮払金は使用目的が不明の支払いを処理するために使用する勘定科目であるのに対して、仮受金は内容が不明な入金を処理するために使用する勘定科目であるという違いがあります。

仮受金について詳しく学びたい方は、下記の記事をご覧ください。

立替金との違い

立替金（たてかえきん）とは、従業員や取引先などが負担すべき金額を会社が一時的に立て替えた際に使用する勘定科目のことを言います。

仮払金と立替金はどちらも金銭を会社が立て替えていますが、仮払金は内容不明であるのに対して、立替金は内容が明確である点に違いがあります。

立替金の仕訳方法については、下記の記事で詳しく解説しています。

前払金との違い

前払金（まえばらいきん）とは、商品を受け取る前に先に支払うお金のことを言います。
仮払金は内容も金額も不明確ですが、前払金は内容も金額も確定しているという違いがあります。

前払金についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事がおすすめです。

未払金との違い

未払金（みばらいきん）とは、本業の商品やサービス以外のものを購入し、後で代金を支払う債務のことを言います。
仮払金はすでに金銭を支払っていますが、未払金はまだ代金を支払っていないという違いがあります。

未払金の仕訳方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

小口現金との違い

小口現金（こぐちげんきん）とは、日々の細かい支払いのために手元においておく少額の現金のことを言います。

仮払金と小口現金はどちらも内容不明な金額を前もって従業員に支給する点で共通していますが、仮払金は出張などの大きな費用であるのに対して、小口現金は日々の細かい費用である点に違いがあります。

小口現金の仕訳方法について詳しく学びたい方は、こちらの記事をご覧ください。

仮払金の確認問題

それでは、ここまでの内容を踏まえて、仮払金に関する問題です。
仮払金と前払金の違いは？

正解発表

正解は、選択肢④使用目的が明確か不明確かです。
仮払金は使用目的や金額が未確定な場合に使われる勘定科目で、前払金は使用目的や金額が確定している場合に使われる勘定科目です。

仮払金の取引の全体像は？

仮払金を用いた取引の流れの全体像を紹介します。

仮払金の支払い時

まず、目的が未確定の段階で現金を仮払いします。
この時、現金が減少すると同時に、仮払金が増加します。

内容の確定時

その後、利用した目的が確定した時は、判明した原因の勘定科目に振り替えるとともに、仮払金の金額が減少します。

仮払金の仕訳事例

簿記上の取引事例を通じて、仮払金の使い方を解説します。

仮払金を支払った時の仕訳事例

上記の取引事例を使い、仮払金を支払った時の仕訳の流れを順に説明します。

仮払金支払い時：現金の減少

旅費の概算額を現金で支払ったため現金が減少します。
そのため、貸方（右側）に現金（資産）1,000円を記入します。

仮払金支払い時：仮払金の増加

現金を支出したものの、内容も金額も確定していないため、一時的に仮払金という勘定科目で処理します。
したがって、借方（左側）に仮払金（資産）1,000円を記入します。

内容が確定した時の仕訳事例

上記の取引事例を使い、利用した目的が確定した時の仕訳の流れを順に説明します。

内容確定時：仮払金の減少、旅費交通費の発生、現金の増加

旅費の金額と内容が確定したため、仮払金を振り替えます。
そのため、貸方（右側）に仮払金（資産）1,000円を記入します。

また、仮払金の金額が確定したため旅費交通費の発生を認識します。
そのため、借方（左側）に旅費交通費（費用）900円を記入します。

多く支払った分の現金が返ってきたため、現金が増加します。
したがって、借方（左側）に現金（資産）100円を記入します。

簿記検定で出題される仮払金の問題

仮払金は、簿記検定でも頻出の論点です。
特に日商簿記検定3級の試験では、第1問と第3問で仮払金の問題が頻繁に出題されています。

第1問で出題される問題は、問題文で与えられている取引を仕訳に変換する仕訳問題です。
通常、勘定科目と金額の完全解答で、配点が付与されます。

また、第3問では、決算整理前残高試算表に決算整理事項を加味して、決算整理後の数値を表に入力する決算書作成問題が出題されます。

この決算書作成問題に解答するためには、決算整理事項の内容をもとに決算整理仕訳を作成する必要があります。

仮払金の配点

仮払金の仕訳問題は、簿記3級試験の第1問に1～2問出題されます。
第1問は45点満点で、1問3点の仕訳問題が15問出題される問題構成です。

また、決算整理仕訳は、第3問で問われます。
第3問は35点満点で、10個の決算整理仕訳が出題される問題構成となっています。

したがって、仮払金の論点を理解することで、約6～9点をものにすることができます。

仮払金の仕訳問題が苦手な方や第1問の仕訳問題で満点を狙っている方は、ぜひ下記の試験対策記事を参考にしてみてください。

第3問の決算整理仕訳を対策したい方は、下記の記事がおすすめです。
本試験問題の解き方や決算書への記入方法を詳細に解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

仮払金の仕訳問題に挑戦

簿記検定で頻出の論点である仮払金の仕訳問題を解けるようになるためには、練習問題をたくさん解く必要があります。
Funda簿記の公式LINEでは、仕訳問題を無料で解くことができます。
この記事の内容の復習として、早速、下記のLINEアプリから練習問題に挑戦してみてください。

仮払金の帳簿上の動き

最後に、仮払金の帳簿上での動きを解説します。
帳簿上の動きは、簿記を理解する際に、非常に重要となるため、必ず押さえておきましょう。

仮払い時

使用目的が不明な金額を前払いした際は、一時的に仮払金という勘定科目で処理します。そのため、仮払金が増加します。

内容確定時

内容が確定した時は、判明した内容を表す勘定科目に振り替え、仮払金を減少させます。

仮払金のまとめ

今回は簿記3級に登場する「仮払金」という勘定科目の意味や取引事例を解説しました。
仮払金には間違えやすい勘定科目があるため注意しましょう。
また、仮払金の取引の流れは仕訳問題で頻出のため覚えておく必要があります。
試験問題でも登場する可能性の高い勘定科目であるため、しっかり理解しておきましょう！

また、決算書や企業のビジネスについて少しでも興味を持っていただけましたら幸いです。
基礎からしっかり学びたい方は、ぜひ学習アプリ「Funda簿記」をご覧ください。
アプリ内で決算書の構成や作り方を学ぶことができます。