この記事では、企業のビジネスモデルと財務数値を結びつける会計クイズを元に、貸借対照表の読み方を解説します。
今回は、JR東日本を運営する鉄道会社「東日本旅客鉄道」と料理のレシピサイトを運営する「クックパッド」を扱います。
下記のようなクイズを通じて、貸借対照表の読み方を解説します。
新卒くん
そもそもこの図が何を表しているかぜんぜん分からないです…
今の段階では全くわからなくても問題ありません。
この記事を読み終わる頃には、貸借対照表が読めるようになっているはずです。
初心者の方にも理解しやすいように図解を用いて解説していきますので、ぜひ最後まで読んでいただけますと幸いです。
目次
- 貸借対照表とは?
- 貸借対照表からわかる情報
- 貸借対照表の実物は難しい
- 貸借対照表の構造
- 貸借対照表の内訳
- 会計クイズ:貸借対照表の読み方
- 登場企業の紹介
- 会計クイズ:問題
- 会計クイズ:正解発表
- 会計クイズ:解説
- 鉄道業の決算書の読み方
- IT業の決算書の読み方
- 貸借対照表の読み方:まとめ
貸借対照表とは?
貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)とは、企業の財政状態や資金調達・運用状況を記録したものをいいます。
簡単に言うと、企業が保有している財産や借金の状況などが一目でわかる報告書です。
大手町さん
貸借対照表を「ちんしゃくたいしょうひょう」と間違える方が多いので注意しましょう。
貸借対照表は、左側(運用サイド)と右側(調達サイド)の金額の合計が必ず一致します。そのため、英語ではバランス・シート(Balance sheet)と呼ばれます。
貸借対照表からわかる情報
貸借対照表からは以下の情報を読み取ることができます。
- 会社の規模
- 資産や負債の中身
- 会社の純資産
貸借対照表を見ることで、会社の規模の大きさや、保有している財産、企業が抱えている借金などを知ることができます。また、企業が自由に使えるお金がいくらあるのかも分かります。
貸借対照表の実物は難しい
ところが、実際の貸借対照表を見ると、難しい単語や数字ばかりで初心者の方は理解できないかと思います。
そこで、この記事では初心者の方でも理解できるように、貸借対照表を図解にして説明します。
まずはシンプルな図から貸借対照表の読み方を理解し、慣れてきたら実物の貸借対照表に挑戦してみてください。
貸借対照表の構造
貸借対照表は左(資産)と右(負債と純資産)に分けて見ます。
貸借対照表は右から左にお金が流れていく構造になっています。右(負債・純資産)からお金を調達し、調達したお金を左(資産)で運用する流れです。
右側の負債と純資産を調達サイド、左側の資産を運用サイドと呼んだりします。
調達サイド
貸借対照表の右側(負債と純資産)は資金調達の状況を表しています。
銀行からの借り入れなどの返済が必要な資金調達の場合は負債に計上されます。一方、株主からの調達のような返済が不要な資金調達の場合は純資産に計上されます。
運用サイド
貸借対照表の左側(資産)は資金運用の状況を表しています。
企業は調達してきたお金を元に利益を生み出す必要があります。そこで、資産の中身を見ることで、どのような手段で利益を生み出そうとしているのかを読み取ることができます。
貸借対照表の内訳
ここからは、貸借対照表の区分である資産・負債・純資産について詳しく解説していきます。
資産
資産とは、企業が保有する財産を意味します。
企業は資産を運用し利益を生み出しますが、その回収期間が長いか短いかによって、流動資産と固定資産に分けられます。
- 流動資産
- 固定資産
流動資産は短期間で資金を回収できる資産のことをいいます。資産そのものである現金や売ればすぐに現金化できる商品などが該当します。
一方、固定資産は資金回収が長期に及ぶものをいいます。事務所や社用車、パソコン等の備品などが当てはまります。
負債
負債とは、企業が返済しなければならない債務を意味します。
負債も返済期限の期間に応じて、流動負債と固定負債に区分されます。
- 流動負債
- 固定負債
流動負債は決算日から1年以内に返済する必要がある負債です。具体例として、商品を仕入れるときの代金をツケで支払った際に生じる買掛金や、1年未満に返済期限が到来する短期借入金などがあります。
一方、固定負債は決算日から1年を超えて返済する予定のある負債です。代表的なものに、返済期限が1年以上先になっている長期借入金や、返済期限が1年以上先になっている社債などがあります。
純資産
純資産とは、返済が不要な資金を意味します。
株主が出資した資本金や、今までに上げた利益の積み重ねである利益剰余金などが純資産に当てはまります。
また、新株予約権や評価換算差額などのような、資産でも負債でもないその他の項目も純資産に記載されます。
貸借対照表のまとめ
以上の内容をまとめます。
貸借対照表は、企業の財政状態を報告する決算書で、資産・負債・純資産の3つの項目で構成されています。右側(負債と純資産)が調達状況を表し、左側(資産)が運用状況を表しています。
また、資産と負債はそれぞれ流動項目と固定項目に分けられます。
会計クイズ:貸借対照表の読み方
以上の内容を踏まえて、会計クイズに挑戦してみましょう。
登場企業の紹介
はじめに、登場企業の紹介です。
- 東日本旅客鉄道
- クックパッド
両社はそれぞれ業界が異なるため、資産の持ち方や資金調達の方法も異なります。
会計クイズ:問題
それでは、改めてクイズです。
JR東日本を運営する東日本旅客鉄道の貸借対照表はどちらでしょう?
鉄道会社がビジネスを行う際にどのような資産が必要かを予想して考えてみてください。
タップで回答を見ることができます
選択肢①
選択肢②
会計クイズ:正解発表
正解は、選択肢②が東日本旅客鉄道でした。
みなさん正解できましたか?
会計クイズ:解説
それでは、ここから詳しい解説に入ります。
両者のビジネスモデルが貸借対照表にどう反映されるのかを見ていきましょう。
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鉄道業の決算書の読み方
鉄道事業を運営するには土地や建物等の多額の設備が必要となります。そのため、東日本旅客鉄道の固定資産には建物や土地が多く計上されています。
また、その多額の設備を購入するためには、多額の資金が必要となります。東日本旅客鉄道は、長期の有利子負債を使い、設備を購入するための資金を調達しています。したがって、負債の比率が大きくなります。
このような特徴は他の鉄道会社も同様です。
東武鉄道と阪神阪急HDの貸借対照表を並べてみると、同じような形になることがわかります。
IT業の決算書の読み方
IT企業はパソコンとネットワーク環境があれば事業を展開することが可能なため、事業運営に大きな資産を必要としません。クックパッドの貸借対照表を見ても分かる通り、資産の大半が現金等の流動資産で構成されています。
多額の設備を必要としないため、外部からの資金調達も鉄道業に比べ必要ありません。そのため、クックパッドの貸借対照表には負債がほとんどありません。積み上がった利益が純資産にそのまま計上されるため、純資産の比率が大きくなります。
他のIT企業の貸借対照表と比較してみましょう。
ニュース配信アプリを運営するグノシーや、地元の掲示板を運営するジモティーの貸借対照表も、クックパッドと似たような形になっていることが分かります。
貸借対照表の読み方:まとめ
最後にまとめです。
今回は、貸借対照表の読み方を実際の企業事例を元に解説しました。貸借対照表を見ることで、企業の財政状態を読み取ることができます。ぜひ他の企業の決算書も見てみてください。
以上、今回の正解は、選択肢②が東日本旅客鉄道でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
貸借対照表について、より詳しく学びたい方は下記の記事をご覧ください。
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<この分析記事の出典データ>
東日本旅客鉄道株式会社 IR
クックパッド株式会社 IR