簿記では「クレジット売掛金」が重要な勘定科目の一つとして扱われます。本記事では、クレジット売掛金の基本概念から計上方法、取引の全体像、仕訳事例までをわかりやすく解説します。クレジット売掛金の知識を身につけて、簿記のスキルを向上させましょう。
目次
- 簿記の勘定科目:クレジット売掛金とは?
- クレジットカード取引で登場するプレイヤー
- 信販会社とは
- 売掛金とクレジット売掛金の違い
- クレジット売掛金:取引の全体像
- 商品販売
- 代金の回収
- 手数料の支払い
- クレジット売掛金の確認問題
- 正解発表
- 簿記の仕訳事例:クレジット売掛金
- クレジットカード払いで商品を販売した時の仕訳事例
- 信販会社から代金を回収した時の仕訳事例
- クレジット売掛金の仕訳問題に挑戦
- クレジット売掛金:帳簿上の動き
- クレジット売掛金:簿記試験での注意点
- クレジット売掛金:まとめ
簿記の勘定科目:クレジット売掛金とは?
クレジット売掛金とは、商品の売り上げ代金をクレジットカード払いで支払われた際に発生する、後で代金を受け取る権利のことを言います。
クレジット売掛金は信販会社に対する債権であるため、商品の販売先(得意先)に対して請求するわけではありません。従って、得意先に対する売上債権である売掛金とは区別する必要があります。
なお、仕訳を行う際には、通常の売掛金と同じように考えて問題ありません。
クレジットカード取引で登場するプレイヤー
クレジット売掛金を理解するためには、クレジットカードの取引の全体像を理解する必要があります。
まずは、クレジットカード取引で登場するプレイヤーから紹介します。
クレジットカード取引では、登場人物が3者存在します。
- 商品の売り手(当社)
- 商品の買い手(お客さん)
- 信販会社(クレジットカード会社)
信販会社とは
信販とは「信用販売」を略したものであり、信用をもとに商品代金を立て替えて、あとから請求することを生業とする業者を信販会社と言います。厳密には信販会社とクレジットカード会社は同義ではないのですが、簿記の試験上はほぼ同義であるため、信販会社とでたらクレジットカード会社と捉えて問題ありません。
信販会社は、消費者に対してお金を貸し付ける訳ではなく、一時的に商品代金を立て替えて、あとから請求を行なうため、貸金業には該当しません。
売掛金とクレジット売掛金の違い
クレジット売掛金は、クレジットカード払いで商品を販売し、信販会社から後で代金を受け取る権利です。
一方、売掛金はクレジットカード払い以外で商品を販売し、販売先(得意先)から後で代金を受け取る権利です。
クレジットカードによる取引の場合のみ、通常の売掛金とは区別してクレジット売掛金を使用します。
売掛金について、詳しく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。
クレジット売掛金:取引の全体像
ここからはクレジットカードを利用した取引の流れを3つのステップで解説します。
- 商品販売
- 代金の回収
- 手数料の支払い
商品販売
まず、売り手が商品を販売する際に、買い手が決済方法としてクレジットカード払いを選択します。
商品売買取引はこの時点で成立するため売上が計上されます。
代金の回収
商品の販売代金は、商品を販売したお客さんでは無く、信販会社から回収することになります。
なぜ信販会社を挟むのか?
商品を販売しても、買い手の財政状態が悪い場合には、代金を支払えないケースも存在します。
このような回収できないリスクを回避するために信販会社を挟みます。
信販会社は買い手から代金を回収できなかったとしても、売り手に代金を支払わなくてはなりません。
従って、売り手からすると確実に代金を回収することが可能となります。
手数料の支払い
信販会社は無料で回収不能のリスクを負う訳ではありません。
回収不能の可能性のリスクを負担する代わりに、売り手から手数料を徴収します。
したがって、代金を売り手に支払う際に手数料分を控除して代金を支払うことになります。
※仮に手数料が2%であった場合、1,500円の販売に対して30円の手数料を信販会社に支払う必要があります。
クレジット売掛金の確認問題
それでは、ここまでの内容を踏まえて、クレジット売掛金に関する問題です。
クレジット売掛金とは、どのようなものでしょうか?
タップで回答を見ることができます
信販会社に対する債権
信販会社に対する債務
得意先に対する債権
得意先に対する債務
正解発表
正解は、選択肢①信販会社に対する債権です。
クレジット売掛金は信販会社に対する債権です。商品の得意先に対して請求する際は「売掛金」勘定を使用します。
簿記の仕訳事例:クレジット売掛金
簿記上の取引事例を通じて、クレジット売掛金の使い方を解説します。
クレジットカード払いで商品を販売した時の仕訳事例
「当社は、商品を1,500円でクレジットカード払いで販売し、代金は翌月末に受け取る約束をした。なお信販会社への手数料は販売代金の2%とし、販売時に控除する。」という取引の事例を使い、クレジットカード払いで商品を販売した時の仕訳の流れを順に説明します。
商品販売時:売上の発生
商品を1,500円で販売したため、売上が発生します。
そのため、貸方(右側)に売上(収益)1,500円を記入します。
商品販売時:支払手数料の発生
信販会社への手数料(1,500×2%=30)が発生しているため、借方(左側)に支払手数料(費用)30円を記入します。
商品販売時:クレジット売掛金の増加
代金の受け取りは翌月末のため、クレジット売掛金(1,500-30=1,470)が増加します。
したがって、借方(左側)にクレジット売掛金(資産)1,470円を記入します。
信販会社から代金を回収した時の仕訳事例
「信販会社から、手数料を差し引かれた残額1,470円が、普通預金口座に振り込まれた。」という取引の事例を使い、信販会社から代金を回収した時の仕訳の流れを順に説明します。
代金回収時:普通預金の増加とクレジット売掛金の減少
クレジット売掛金を回収したため、クレジット売掛金が減少します。
そのため、貸方(右側)にクレジット売掛金(資産)1,470円を記入します。
代金は普通預金口座に入金されたため、借方(左側)に普通預金(資産)1,470円を記入します。
普通預金口座についてより詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
クレジット売掛金の仕訳問題に挑戦
ここまでの内容で、クレジット売掛金の仕訳の流れを理解していただけたかと思います。
早速、下記のLINEアプリから練習問題に挑戦してみてください。
クレジット売掛金:帳簿上の動き
最後に、クレジット売掛金の帳簿上での動きを解説します。
帳簿上の動きは、簿記を理解する際に、非常に重要となるため、必ず押さえておきましょう。
商品の販売時
代金の受け取り時
クレジット売掛金:簿記試験での注意点
クレジット売掛金は通常の売掛金とほとんど会計処理が同様であるため、売掛金の取引を理解していれば難しくない論点です。
しかし、1点だけ注意が必要なものとして手数料の取り扱いがあります。
信販会社へ手数料を支払うタイミングは2パターン存在します。
- 手数料を販売時に計上
- 手数料を代金入金時に計上
手数料を支払うタイミングについては、通常は問題文に明示されるため、仕訳問題を解く際には必ず確認しましょう。
クレジット売掛金:まとめ
今回は簿記3級に登場する「クレジット売掛金」という勘定科目の意味を解説しました。
クレジット売掛金は通常、手数料が発生するため支払手数料が一緒に出てきやすいです。
そのため、クレジット売掛金と支払手数料はセットで覚えておく必要があります。
試験問題でも登場する可能性の高い勘定科目であるため、しっかり理解しておきましょう!
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