取引先や従業員から、一時的に金銭を預かるケースが存在します。その際には、「預かった現金を返す義務」が生じ、負債として「預り金」という勘定科目が使用されます。
この記事では、預り金の取引の流れや関連する勘定科目、具体的な仕訳事例についてを簿記初心者向けにわかりやすく解説します。預り金の知識を身につけて、簿記のスキルを向上させましょう。
目次
- 簿記の勘定科目:預り金とは?
- 高校生でもイメージできる預り金
- 預り金が登場する場面
- 預り金と間違えやすい簿記の勘定科目を解説
- 立替金との違い
- 前受金との違い
- 預り金の確認問題
- 正解発表
- 預り金の取引の全体像は?
- 金銭の預かり時
- 金銭の返金時
- 簿記の仕訳事例:預り金
- 金銭を預かった時の仕訳事例
- 金銭を返金した時の仕訳事例
- 従業員の給料から源泉徴収税を差し引いた時の仕訳事例
- 源泉徴収税を納めた時の仕訳事例
- 預り金の仕訳問題に挑戦
- 預り金:帳簿上の動き
- 預り金の勘定科目:まとめ
簿記の勘定科目:預り金とは?
預り金(あずかりきん)とは、取引先や従業員などから金銭を一時的に預かるときに発生する勘定科目です。
後で代金を支払う義務が生じるため、会計上では負債の勘定科目となります。
高校生でもイメージできる預り金
ビジネス経験の無い学生の方向けに、身近な事例で預り金を解説します。
今回は、文化祭のケースを考えてみましょう。
文化祭の際、クラス委員が参加費を一時的に預かることがあります。このお金は文化祭の準備や食材、装飾などに使われますが、使い切らなかった分は返されることになるため「預り金」として記録します。
そのあと、文化祭に必要な費用や使い切らなかった分は「預り金」の減少として取り崩します。
預り金が登場する場面
給料の支払い時に預り金の勘定科目が頻繁に使用されます。
ここからは従業員から税金や保険料を預かった際の取引の流れについて解説します。
従業員への給料の支払いの際に、通常は源泉徴収税を差し引くこととなります。
源泉徴収税は、会社が従業員の代わりに、国に納める所得税等の税金です。
そのため、税務署に納めるまでは、企業が従業員からお金を預かることとなります。
後日、従業員からの預り金を税務署に納付します。
このように、源泉徴収制度では、従業員負担の所得税や社会保険料分を給料から差し引き、従業員の代わりに会社が納付する制度です。
源泉徴収制度を利用することで、税務署の事務負担を軽減することができます。
給料から差し引かれる項目とは
給料から差し引かれる項目の例として以下のようなものがあります。
- 社会保険料
- 所得税
- 住民税
従業員に変わって企業が納付するケースが一般的ですが、負担する主体は従業員です。
したがって、企業の費用とはなりません。
預り金と間違えやすい簿記の勘定科目を解説
預り金と間違えやすい勘定科目が存在します。ここからは、預り金と間違えやすい下記の勘定科目についてを解説します。
- 立替金
- 前受金
立替金との違い
立替金とは、従業員や取引先などが負担すべき金銭を当社が一時的に立て替えた際に使用する勘定科目のことを言います。
預り金は取引先や従業員が負担すべき金銭を当社が預かり、後で支払先へ支払う際に使用する負債の勘定科目であるのに対して、立替金は取引先や従業員が負担すべき金銭を先に支払った(立て替えた)場合に用いる資産の勘定科目である点に違いがあります。
立替金について詳しく学びたい方は、下記の記事がおすすめです。
前受金との違い
前受金とは、商品やサービスを販売する前に、事前に代金の一部を手付金や内金として現金で受け取った場合に使用する勘定科目です。
預り金と前受金は事前に代金を受け取るという点で共通していますが、預り金は売上につながらないのに対して、前受金は売上につながるという違いがあります。
前受金について詳しく学びたい方は、下記の記事がおすすめです。
預り金の確認問題
それでは、ここまでの内容を踏まえて、預り金に関する問題です。
預り金の特徴として当てはまらないものを選びなさい。
タップで回答を見ることができます
一時的に預かるお金
負債の勘定科目
代表的な項目に社会保険料がある
商品販売時に受け取る
正解発表
正解は、④商品販売時に受け取るです。
預り金は一時的に預かるお金であり、負債の勘定科目となります。また、預り金の代表的な項目には社会保険料が含まれます。しかし、商品販売時に受け取るお金は、売上として計上されるため、預り金とは異なります。
預り金の取引の全体像は?
預り金を用いた取引の流れの全体像を紹介します。
金銭の預かり時
まず、金銭を一時的に預かります。
そのため、現金が増加すると同時に預り金が増加します。
金銭の返金時
その後、預かった金銭を返金します。
結果として、預り金を返金したため現金が減少するとともに、預り金の金額も減少します。
簿記の仕訳事例:預り金
簿記上の取引事例を通じて、預り金の使い方を解説します。
金銭を預かった時の仕訳事例
「取引先から一時的に100円を現金で預かった。」という取引の事例を使い、金銭を預かった時の仕訳の流れを順に説明します。
金銭預かり時:現金と預り金の増加
取引先から一時的に現金を預かったため、現金が増加します。
そのため、借方(左側)に現金(資産)100円を記入します。
また、現金を預かったと同時に「預かった現金を返す義務」が生じます。
したがって、貸方(右側)に預り金(負債)100円を記入します。
金銭を返金した時の仕訳事例
「取引先から一時的に預かった現金100円を返金した。」という取引の事例を使い、金銭を返金した時の仕訳の流れを順に説明します。
金銭返金時:預り金と現金の減少
預かっていた現金を返金したため、現金が減少します。
そのため、貸方(右側)に現金(資産)100円を記入します。
また、返金したと同時に「預かった現金を返す義務」が消滅します。
したがって、借方(左側)に預り金(負債)100円を記入します。
従業員の給料から源泉徴収税を差し引いた時の仕訳事例
「従業員の給料から源泉徴収税額100円分を差し引いて、現金で900円支払った。」という取引の事例を使い、従業員の給料から源泉徴収税を差し引いた時の仕訳の流れを順に説明します。
給料の支払い時:給料の発生、現金の減少、預り金の増加
従業員に対して給料を支払ったため、給料が発生します。
そのため、借方(左側)に給料(費用)1,000円を記入します。
従業員への給料の支払いの際に、源泉徴収税額を控除した金額を現金で支払ったため、現金が減少します。
同時に、源泉徴収額を企業が一時的に預かることになるため、預り金が増加します。
したがって、貸方(右側)に現金(資産)900円と預り金(負債)100円を記入します。
源泉徴収税を納めた時の仕訳事例
「預り金として処理した源泉徴収税額100円を税務署に現金で納付した。」という取引の事例を使い、源泉徴収税を納めた時の仕訳の流れを順に説明します。
源泉徴収税納付時:預り金と現金の減少
源泉徴収税を現金で納付したため、現金が減少します。
そのため、貸方(右側)に現金(資産)100円を記入します。
また、源泉徴収税を納めたため、預り金が減少します。
したがって、借方(左側)に預り金(負債)100円を記入します。
預り金の仕訳問題に挑戦
ここまでの内容で、預り金の仕訳の流れを理解していただけたかと思います。
早速、下記のLINEアプリから練習問題に挑戦してみてください。
預り金:帳簿上の動き
最後に、預り金の帳簿上での動きを解説します。
帳簿上の動きは、簿記を理解する際に、非常に重要となるため、必ず押さえておきましょう。
金銭の預かり時
金銭の返金時
預り金の勘定科目:まとめ
今回は簿記3級に登場する「預り金」という勘定科目の意味や取引事例を解説しました。
預り金には似たような勘定科目があるため注意しましょう。
また、従業員の給料から源泉徴収税を差し引いた際の取引の流れは仕訳問題で頻出のため覚えておく必要があります。
試験問題でも登場する可能性の高い勘定科目であるため、しっかり理解しておきましょう!
また、決算書や企業のビジネスについて少しでも興味を持っていただけましたら幸いです。
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