簿記・会計の世界では、現金と言っても必ずしも小銭やお札というわけではありません。
この記事では、簿記学習者はもちろん、ビジネスシーンでも使える「現金」の種類と取引事例についてをわかりやすく解説します。現金の知識を身につけて、簿記のスキルを向上させましょう。
目次
- 簿記の勘定科目:現金とは?
- 通貨代用証券とは
- 簿記試験での出題実績
- 簿記の世界で登場する現金の種類は?
- 通貨
- 他人振出小切手
- 郵便為替証書
- 送金小切手
- 配当金領収書
- 期日の到来した公社債の利札
- 簿記上の現金(通貨代用証券)の覚え方は?
- 現金の確認問題
- 正解発表
- 簿記上では現金として扱わない項目
- 収入印紙
- 切手
- 自己振出の小切手
- 先日付小切手
- 簿記の仕訳事例:現金取引
- 他社が振り出した小切手を受け取った時の仕訳事例
- 郵便為替証書を受け取った時の仕訳事例
- 現金の仕訳問題に挑戦
- 簿記上の現金(通貨代用証券):まとめ
簿記の勘定科目:現金とは?
「現金」と聞くと紙幣や硬貨等の通貨をイメージされる方が多いと思います。
しかし、簿記の世界では、通貨(紙幣や硬貨)の他に「通貨代用証券」も現金の範囲に含まれます。
したがって、通貨代用証券を受け取った際にも「現金の増加」として扱います。
通貨代用証券とは
通貨代用証券(つうかだいようしょうけん)とは、銀行などでいつでも現金と交換が可能であり、また支払手段として第三者へ譲渡できるものを指します。
通貨代用証券の共通点として、銀行や郵便局等に持参するとすぐに現金に交換できるということです。
したがって、簿記の世界ではこのような換金性の高い通貨代用証券を受け取った場合、現金として扱います。
簿記試験での出題実績
簿記試験では、現金の勘定科目で処理するものを問う問題が出題されます。従って、通貨代用証券を正しく判断できる必要があります。この記事を通じて、現金として扱う項目を正しく判定できるようにしましょう。
※下記の画像は、現金を判定させる仕訳問題の事例です(Funda簿記アプリより)
簿記の世界で登場する現金の種類は?
簿記の世界では、通貨(紙幣や硬貨)と通貨代用証券が現金の範囲に含まれます。
通貨代用証券については、様々なものが存在するため、それぞれの用語の意味について解説します。
通貨
紙幣や硬貨など日常生活で使っている現金は、簿記上でも現金として扱います。
他人振出小切手
他人が振り出した小切手は銀行に持っていけばすぐに現金化できるため、簿記上では現金として扱います。
郵便為替証書
郵便為替証書とは、現金を郵送にて送る場合に、郵便局にて発行される証書です。
当該証書を郵便局等に持ち込むことで現金化できるため、簿記上では現金として扱います。
送金小切手
送金小切手とは、銀行が直接支払う小切手のことを言います。
送金小切手を受け取った際には、それを銀行に持って行くことですぐに現金に交換することができるため、簿記上では現金として扱います。
配当金領収書
株式を保有している企業から配当金が出た際に発行されるものを配当金領収書と言います。
配当金領収書は銀行に持っていくとすぐに現金化できるため、簿記上では現金として扱います。
期日の到来した公社債の利札
公社債とは、国や地方公共団体がお金を集めるために発行した債券です。
公社債を保有すると利札を受け取ることができます。
期限が到来した利札は銀行に持っていくとすぐに現金化できるため、簿記上では現金として扱います。
簿記上の現金(通貨代用証券)の覚え方は?
通貨代用証券は、細かいため、ついつい忘れてしまいがちです。
しかし、試験を解く際には、上記5つの項目名だけ覚えておけば十分です。
現金の確認問題
それでは、ここまでの内容を踏まえて、現金に関する問題です。
簿記上の現金に含まれないものはどれでしょう?
タップで回答を見ることができます
他人振出小切手
郵便局で買った切手
送金小切手
紙幣
正解発表
正解は選択肢②郵便局で買った切手です。
簿記上の「現金」には通貨や紙幣のほかに通貨代用証券も含まれます。通貨代用証券とは、銀行などでいつでも現金と交換が可能であり、また支払手段として第三者へ譲渡できるものを指します。一方、郵便切手は銀行などで現金化できないため、簿記上の「現金」には含まれません。
簿記上では現金として扱わない項目
ここからは、簿記の世界では現金として扱わない項目を4つほど紹介します。
簿記試験では、通貨代用証券に似せて、下記のような項目が出題されます。
点数に直接影響を与えるため、問題を解く際には適切に判断できるようにしましょう。
- 収入印紙
- 切手
- 自己振出小切手
- 先日付小切手
収入印紙
収入印紙とは、高額の領収書や借用書に貼らなければならないものを言います。
借用書とは、お金を借りたことを証明する書類のことです。
収入印紙はそれ自体に価値があり、また銀行などで現金化できないため、簿記上では現金で処理できません。したがって、簿記上では「貯蔵品」という資産の勘定科目で処理します。
切手
郵便切手も銀行などで現金化できないため、現金には含まれません。
そのため、未使用の切手は簿記上では「貯蔵品」という資産の勘定科目で処理します。
貯蔵品について詳しく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。
自己振出の小切手
自分で振り出した小切手は当座預金口座から支払われるため、現金ではなく「当座預金」という資産の勘定科目で処理します。
当座預金とは、小切手・手形の支払いを目的として開設する決済専用の口座です。
小切手の仕訳について詳しく学びたい方は、下記の記事をご覧ください。
先日付小切手
先日付小切手とは、振り出す日が将来に約束されている小切手です。
将来、現金化するため、すぐには現金に換えられません。
先日付小切手は約束手形と同じく信用証券であるため、受け取った際は「受取手形」という資産の勘定科目で処理します。
手形取引の仕訳について詳しく学びたい方は、下記の記事をご覧ください。
簿記の仕訳事例:現金取引
それでは、実際に簿記試験で出題される現金の仕訳事例を紹介します。
- 他社が振り出した小切手を受け取った
- 郵便為替証書を受け取った
他社が振り出した小切手を受け取った時の仕訳事例
「商品を1,000円で販売し、他社が振り出した小切手1,000円を受け取った。」という取引の事例を使い、他社が振り出した小切手を受け取った時の仕訳の流れを順に説明します。
他人振出小切手受取時:現金の増加と売上の発生
商品を販売したため、売上が発生します。そのため、貸方(右側)に売上(収益)1,000円を記入します。
他社が振り出した小切手は、通貨代用証券です。したがって、受領時に現金が増加するため、借方(左側)に現金(資産)1,000円を記入します。
郵便為替証書を受け取った時の仕訳事例
「商品を1,000円で販売し、郵便為替証書1,000円を受け取った。」という取引の事例を使い、郵便為替証書を受け取った時の仕訳の流れを順に説明します。
郵便為替証書受取時:現金の増加と売上の発生
商品を販売したため、売上が発生します。そのため、貸方(右側)に売上(収益)1,000円を記入します。
郵便為替証書は、通貨代用証券です。したがって、受領時に現金が増加するため、借方(左側)に現金(資産)1,000円を記入します。
現金の仕訳問題に挑戦
ここまでの内容で、現金の仕訳の流れを理解していただけたかと思います。
早速、下記のLINEアプリから練習問題に挑戦してみてください。
簿記上の現金(通貨代用証券):まとめ
今回は簿記3級に登場する「現金」という勘定科目の意味を解説しました。
簿記で使う現金は様々な受取手段・支払手段として使用できるのが特徴です。
また、現金に含まれるものや現金と間違えやすい現金ではないものは、試験で間違えやすいため注意が必要です。
現金は試験問題でも登場する頻度の高い勘定科目であるので、しっかり理解しておきましょう!
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