手形貸付金とは？簿記の勘定科目を仕訳事例でわかりやすく解説

通常の資金の貸し借りでは、借用証書を作成します。
しかし、借用証書は作成に手間を要するため、簡便的な資金の貸し借りとして「約束手形」を使用する方法が存在します。

この記事では、簿記学習者はもちろん、ビジネスシーンでも使える手形貸付金の意味や取引事例についてをわかりやすく解説します。

なお、簿記を基礎からしっかり学びたい方は、まずは先に下記のトレーニングから始めてみてください。

手形貸付金とは？

手形貸付金（てがたかしつけきん）とは、取引先等の他社に約束手形を用いて、お金を貸し付けた場合に発生する勘定科目です。
手形を用いて取引先等にお金を貸した場合は将来的に現金を受け取る権利（返してもらう権利）が生じるため、会計上では、資産の勘定科目となります。

勘定科目について基礎から学びたい方は、下記の記事をご覧ください。

手形貸付金と貸付金の違い

簿記試験において、手形貸付金と、通常の貸付金はよく混合しがちです。
簿記の仕訳を行う際には、取引の中で、「手形」という単語が出てきたら手形貸付金と判断しても問題ありません。

ここからは、両者の違いについてわかりやすく解説します。

貸付金の勘定科目が使用されるケース

通常、企業がお金を貸す場合には、借用証書を取り交わします。
借用証書とは、借り手が借りたお金を返済することを保証する書類のことです。

例えば、あなたが友達からお金を借りた場合、友達に借用証書を作ってもらうことができます。
この借用証書には、あなたが借りたお金をいつまでにどのように返済するかといった内容を記載しています。

このような借用証書による貸付の場合には、「貸付金」という資産の勘定科目が簿記の世界では使用されます。

貸付金の仕訳方法については、下記の記事で詳しく解説しています。

手形貸付金の勘定科目が使用されるケース

借用証書の代わりに約束手形が使われる場合もあります。
約束手形とは、商取引の代金決済方法の１つです。第三者である金融機関を媒介して、取引を行います。

約束手形は、一定期日に代金を払うことを約束している有価証券で、代金を支払う側が受け取る側に約束手形を発行します。

要するに、通常の貸付金よりも信頼性の高い取引となります。
一方で、高額の借入が難しく返済期限が1年以内などのデメリットも存在します。

このように手形を使って貸し付ける場合には、「手形貸付金」という資産の勘定科目が簿記の世界では使用されます。

今回の記事では貸付取引をメインに扱います。
約束手形を用いた売買取引については下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご確認ください。

手形貸付金の取引で登場する受取利息

手形を用いて貸し付けたお金に対しては貸付金同様、利息が発生します。
そのため、手形を用いて資金を貸し付けた側は、貸し付けたお金の元本に加えて、利息を受け取ることができます。
利息を受け取った場合は、収益として認識するため「受取利息」勘定が使われます。

受取利息の仕訳方法について詳しく学びたい方は、下記の記事をご覧ください。

手形貸付金と手形借入金の違い

手形貸付金と手形借入金は表裏の関係にあります。
手形貸付金とは、手形を用いてお金を貸した側が貸し付けたお金のことです。
一方、手形借入金とは、手形を用いてお金を借りた側が借りたお金のことです。

手形貸付金はお金を貸した側の資産となり、手形借入金はお金を借りた側の負債となります。

手形借入金についてより詳しく学びたい方は、下記の記事がおすすめです。

手形貸付金の確認問題

それでは、ここまでの内容を踏まえて、手形貸付金に関する問題です。
手形貸付金が計上される時は？

正解発表

正解は、選択肢④約束手形を用いて資金を貸した時です。
手形貸付金とは、取引先等の他社に約束手形を用いて、お金を貸し付けた場合に発生する勘定科目です。
約束手形を用いて資金を借りた場合は、「手形借入金」という負債の勘定科目を使用します。

手形貸付金の取引の全体像

手形貸付金を用いた取引の流れの全体像を紹介します。

資金の貸し付け時

まず、手形を用いて資金を貸し付けた際には、お金が減少します。
それと同時に、将来お金を返して貰える権利として、手形貸付金が増加します。

資金の回収時

そのあと返済期限となり、受取利息とともにお金を返してもらいます。
結果として、お金が増加すると共に、手形貸付金の金額が減少します。

手形貸付金の仕訳事例

簿記の取引事例を通じて、手形貸付金の使い方を解説します。

手形を用いて資金を貸し付けた時の仕訳事例

上記の取引事例を使い、手形を用いて資金を貸し付けた時の仕訳の流れを順に説明します。

貸付時：手形貸付金の増加と現金の減少

取引先に現金1,000円を貸し付けたため、現金が減少します。
そのため、貸方（右側）に現金（資産）1,000円を記入します。

また、取引先に資金を貸し付け、約束手形を受け取ったため、手形貸付金が増加します。
したがって、借方（左側）に手形貸付金（資産）1,000円を記入します。

資金を回収した時の仕訳事例

上記の取引事例を使い、資金を回収した時の仕訳の流れを順に説明します。

資金の回収時：現金の増加

貸し付けた資金と利息を合わせた1,100円を現金で回収したため、現金が増加します。
そのため、借方（左側）に現金（資産）1,100円を記入します。

資金の回収時：手形貸付金の減少

手形貸付金を回収したことで「手形貸付金」勘定が減少します。
そのため、貸方（右側）に手形貸付金（資産）1,000円を記入します。
また、資金を貸し付けた際に発生した利息100円を受け取ったため、受取利息が発生します。
したがって、貸方（右側）に受取利息（収益）100円を記入します。

簿記検定で出題される手形貸付金の問題

手形貸付金は、簿記検定でも頻出の論点です。
特に日商簿記検定3級の試験では、第1問で手形貸付金の問題が頻繁に出題されています。

具体的には、問題文で与えられている取引を仕訳に変換する仕訳問題です。
通常、勘定科目と金額の完全解答で、配点が付与されます。

手形貸付金の仕訳問題の配点

手形貸付金の仕訳問題は、簿記3級試験の第1問に1～2問出題されます。
第1問は45点満点で、1問3点の仕訳問題が15問出題される問題構成です。
したがって、手形貸付金の仕訳問題ができるようになることで、3～6点をものにすることができます。

手形貸付金の仕訳問題が苦手な方や第1問の仕訳問題で満点を狙っている方は、ぜひ下記の試験対策記事を参考にしてみてください。

手形貸付金の仕訳問題に挑戦

簿記検定で頻出の論点である手形貸付金の仕訳問題を解けるようになるためには、練習問題をたくさん解く必要があります。
Funda簿記の公式LINEでは、仕訳問題を無料で解くことができます。
この記事の内容の復習として、早速、下記のLINEアプリから練習問題に挑戦してみてください。

手形貸付金の帳簿上の動き

最後に、手形貸付金の帳簿上での動きを解説します。
帳簿上の動きは、簿記を理解する際に、非常に重要となるため、必ず押さえておきましょう。

資金の貸し付け時

資金を貸し付け約束手形を受け取った際は、手形貸付金が増加します。

資金の回収時

資金を回収した時は、後で代金を受け取る権利が消滅するため、手形貸付金が減少します。また、代金受け取り時に利息が発生したため受取利息が発生し、受け取った金額分の現金が増加します。

手形貸付金のまとめ

今回は簿記3級に登場する「手形貸付金」という勘定科目の意味を解説しました。
簿記で使う手形貸付金は、約束手形を用いてお金を貸し付けた際に使用されます。
また、手形貸付金には受取利息が発生することが多いのでセットで覚えておく必要があります。
試験問題でも登場する可能性の高い勘定科目であるため、しっかり理解しておきましょう！

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また、基礎からしっかり学びたい方は、ぜひ学習アプリ「Funda簿記」をご覧ください。
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