この記事では、企業のビジネスモデルと財務数値を結びつける会計クイズを元に、企業がどのような戦略で利益を生み出しているかを事例を用いて解説します。
今回は誰もが1度は聞いたことがあるであろうP&Gを扱います。
下記のようなクイズを通じて、P&Gの経営戦略を読み解いていきます。
新卒くん
そもそもP&Gが何をやっている会社なのかわかりません…
今の段階では全く分からなくても問題ありません。
この記事を読み終わる頃には、P&Gの経営戦略を決算書から読み取れるようになっているはずです。
初心者の方にもわかりやすいように図解を用いて解説していきますので、ぜひ最後まで読んでいただけますと幸いです。
目次
- P&Gってどんな会社?
- P&Gの商品
- P&Gの事業セグメント
- P&Gの業績推移
- P&Gの資産の中身は?
- 会計クイズ
- 無形固定資産の内容
- 資産に計上されるのれん
- P&Gの買収戦略は?
- ブランドM&Aが起こる背景
- P&GのM&A戦略と事例
- 決算書に反映される無形固定資産の意味
- まとめ
P&Gってどんな会社?
P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)は、日用品や化粧品の製造販売を行っているアメリカの会社です。
一言でいうと、世界トップクラスの消費財メーカーです。
新卒くん
P&Gって名前は聞くけど、商品はパッと出てこないな…
P&Gの商品
早速ですが、ここでクイズです。
下記5つの商品のうち、P&Gの商品はどれでしょう?
- パンテーン(シャンプー)
- アリエール(洗濯用洗剤)
- パンパース(おむつ)
- ジレット(カミソリ)
- オーラルB(歯ブラシ)
※答えは1つとは限りません。
正解発表
正解は、すべてP&Gの商品でした。
P&Gの事業セグメント
P&Gは主に5つの事業を行っています。
- 美容ケア
- 家庭用品
- ベビー・ファミリー
- グルーミング
- ヘルスケア
売上高の内訳を見ると、どれか1つに絞ってビジネスを行っているわけではなく、すべての事業にブランド価値をつけて展開していることが読み取れます。
P&Gの業績推移
P&Gの売上高の推移を確認すると、右肩上がりで伸びています。
直近の売上高は820億ドルと、日本円で約12兆円の売上を上げており、日本の消費財メーカーである資生堂(売上:約1兆円)や花王(売上:約1.5兆円)と比べると、売上の規模が桁違いであることが分かります。
P&Gの資産の中身は?
次に、P&Gの決算書を分析していきます。
P&Gと他の消費財メーカーの貸借対照表を比較すると、P&Gだけ固定資産の比率が非常に高いことに気付きます。
会計クイズ
それでは、ここで2問目のクイズです。
P&Gの資産の大部分を占める勘定科目は何でしょう?
P&Gのビジネスが貸借対照表にどう影響するかを予想して考えてみてください。
タップで回答を見ることができます
棚卸資産
有形固定資産
無形固定資産
投資有価証券
貸借対照表の読み方についてを基礎から詳しく学びたい方は、まずは下記の記事をご覧ください。
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正解発表
正解は選択肢③の無形固定資産でした。
みなさん正解できましたか?
それでは、ここから解説に入ります。
無形固定資産の内容
P&Gの決算書を確認すると、のれんや商標権などの無形固定資産が資産の半分以上を占めています。
新卒くん
無形固定資産ってなんですか?
無形固定資産とは
無形固定資産とは、具体的な形はないが、財産的な価値を有する固定資産の総称をいいます。事業を行う上で長期的に使うことを目的とした資産であり、1年を超えて利用されるといった特徴があります。
無形固定資産の代表的なものとして、商標権やソフトウェア、特許権などがあり、いずれも形のない資産です。
無形固定資産についてより詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
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のれんとは
また、のれんとは、企業を買収した際に発生した、企業を買収する際に支払った金額と買収対象企業の純資産額の差額のことをいいます。つまり、買収対象企業にとってのブランドや期待値などの目に見えない資産価値を意味します。
例えば、優秀な社員がいることや、毎期かなりの収益を上げる事業があること、自社でブランドなどを抱えているなどが該当します。
のれんについては、下記の記事で詳しく解説しています。
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資産に計上されるのれん
つまり、P&Gが買収した企業ののれんや商標権などが資産として計上されているため、他の消費財メーカーよりも固定資産の比率が高いというわけです。
P&Gの買収戦略は?
新卒くん
なんでそんなに買収するんですか?
それでは、P&Gの買収戦略についてを事例を用いて解説していきます。
ブランドM&Aが起こる背景
まずはじめに、なぜブランドM&Aが起こるのかについて説明します。
ブランドM&Aが起こる背景は主に3つあります。
- 新規市場への進出
- スピードアップ
- 収益力増強
順に解説していきます。
新規市場への進出
M&Aをすることで、新しい市場に進出する際に既に市場で認知されているブランドを足掛かりにすることができるメリットがあります。
スピードアップ
ブランドを1から育てることは長期の時間を要します。そのため、既に形になっているブランドを買収することで、すぐに商品を販売しやすくなります。
収益力増強
不採算ブランドを売却し、収益性の高いブランドのみを残すことで、収益力を上げることが可能になります。
P&GのM&A戦略と事例
以上を踏まえて、P&GのM&A戦略を事例とともに見ていきます。
P&Gは数多くのブランドを買収し、大きく成長させてきました。また、買収後にもしっかり成長させられるだけの経営ナレッジを有しています。
買収後の戦略事例:ジレット
2005年に買収したジレットは、P&Gの研究開発力やマーケティングなどの強力なリソースと組み合わせることで、市場での競争力を高め、大きな成長を遂げることができました。
買収後の戦略事例:SK-II
また、1991年に買収した化粧品ブランドSK-IIは、独自成分「ピテラ」を活用した新製品開発を行い、SK-IIブランドの高級化と競争力向上に成功しました。
決算書に反映される無形固定資産の意味
このように、P&Gは買収した企業のブランドを大きく成長させ、業績を拡大してきました。この買収戦略がのれんや商標権として貸借対照表の資産に多額に計上されています。
まとめ
最後にまとめです。
今回はP&Gの経営戦略についてを解説しました。
P&Gは買収戦略を取ることでブランド価値を高め、収益力を上げていることが決算書を見ることによって読み取ることができます。
以上、今回の会計クイズの正解は、選択肢③の無形固定資産でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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<この分析記事の出典データ>
P&G IR