この記事では、企業のビジネスモデルと財務数値を結びつける会計クイズを元に、企業がどのような戦略で利益を生み出しているかを解説します。
今回扱うテーマは鉄道ビジネスです。
下記のクイズを通じて、鉄道ビジネスの儲けの仕組みを読み解いていきます。
新卒くん
鉄道会社のビジネスモデルなんてわかりません…
今の段階では分からなくても問題ありません。
この記事を読み終わる頃には、鉄道会社のビジネスモデルを決算書から読み取れるようになっているはずです。
初心者の方にもわかりやすいように鉄道ビジネスの基礎から解説していきますので、ぜひ最後まで読んでいただけますと幸いです。
目次
- 鉄道ビジネスの基本
- 鉄道ビジネスの収益構造
- 固定費が高いのが特徴的
- 利益率を高める方法
- 会計クイズ:鉄道ビジネス
- 登場企業の紹介
- 会計クイズ:問題
- 会計クイズ:正解の発表
- 東急グループの決算書の読み方
- 交通事業
- 生活サービス事業
- 不動産事業
- 会計クイズ:まとめ
鉄道ビジネスの基本
まずは初心者向けに、鉄道ビジネスの基礎から解説していきます。
鉄道ビジネスの収益構造
鉄道ビジネスの基本的な収益構造は、乗車人数×運賃が売上高となります。
- 売上高=乗車人数×運賃
固定費が高いのが特徴的
一方、費用に関しては固定費が高いという特徴があります。
固定費とは、乗車人数に関係なく一定額発生する費用です。一方、乗車人数に応じて発生する費用を変動費といいます。
鉄道業は装置型ビジネスであるため、売上をたくさん上げようが不況で落ち込もうが、一定の固定費がかかります。
固定費と変動費についてより詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
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利益率を高める方法
鉄道業が利益率を高める方法として、「乗車人数を増やす」方法と「遠くまで運ぶ」方法の2種類があります。
- 乗車人数を増やす
- 遠くまで運ぶ
電車は1回の運行でかかる費用が決まっているため、より多くの人を乗せた方が、より遠くに人を運んだ方が儲かる仕組みになっています。
会計クイズ:鉄道ビジネス
それでは、ここまでの内容を踏まえて、会計クイズに挑戦してみましょう。
登場企業の紹介
最初に登場企業の紹介です。
- 東急グループ
今回は、私鉄の「東急電鉄」や「伊豆急行」を核に様々な事業で売上を立てる東急グループを扱います。
東急グループの特徴として、鉄道業の他に、不動産事業や生活サービス事業、ホテル・リゾート事業など、複数の事業を展開しています。
会計クイズ:問題
以上の内容を踏まえて、クイズです。
東急グループの中で売上高の大半を稼いでいる事業はどこでしょう?
それぞれの事業の役割と、各事業がどのように決算書に反映されるのかを予想して考えてみてください。
タップで回答を見ることができます
交通事業
不動産事業
生活サービス事業
ホテル・リゾート事業
貸借対照表の読み方についてを基礎から詳しく学びたい方は、まずは下記の記事をご覧ください。
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それでは、正解の発表です。
会計クイズ:正解の発表
正解は、選択肢③の生活サービス事業でした。
みなさんわかりましたか?
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東急グループの決算書の読み方
それでは、ここから詳しい解説に入ります。
複数の事業を展開している東急グループの事業ごとの位置づけについてを、決算書から読み取っていきます。
交通事業
まずは、東急グループの花形事業である交通事業について見ていきます。
鉄道ビジネスの収益構造は上述した通り、乗車人数×運賃が売上高となります。
交通事業の収益の推移を確認すると、コロナ禍による外出自粛の影響を直接受けたため、2021年と2022年は赤字を計上しています。しかし、直近では乗車人数の回復がみられ、黒字に回復しているのが読み取れます。
2023年では交通事業だけで営業利益85億円と、鉄道ビジネスが多額の利益を生み出しています。
生活サービス事業
次に、正解の選択肢である生活サービス事業について見ていきます。
東急グループの生活サービス事業は、東急百貨店や東急ストア等の小売業がメインです。
小売業は商品単価×購入数で売ったお金がそのまま計上されるため、売上高が大きくなりやすい特徴があります。
しかし、生活サービス事業の利益率は2.14%と低いです。これは小売業がそもそも利益率の低いビジネスであるためです。
新卒くん
なぜ鉄道会社が利益率の低い小売事業をやっているんですか?
それは、鉄道会社のビジネスモデルにヒントがあります。
東急グループは、交通事業で稼いだ利益を鉄道沿線の開発投資に回すことで、沿線周辺の利用者を増やし、最終的に鉄道利用者を増加させるビジネスモデルを採用しています。
小売事業の役割は、売上を上げるのはもちろんですが、1番は沿線の利用者を増加させることです。そのため、東急グループの事業全体では利益率は低いものの、小売事業は非常に重要な位置づけとなっています。
不動産事業
不動産事業も小売事業と同様に、沿線人口の増加に貢献しています。
沿線付近にある住宅や商業施設の開発を行うことで、沿線地域を住みやすく、訪れやすくし、鉄道利用者の増加につなげています。
また、不動産事業は利益も多額に生み出しています。営業利益の内訳を見ると、不動産事業が1番利益を稼いでおり、東急グループの中で稼ぎ頭であることが分かります。
会計クイズ:まとめ
最後に、ここまでの内容をまとめます。
東急グループは鉄道事業の利益を小売事業や不動産事業への投資に回し、沿線人口を増加させることで、最終的に鉄道ビジネスの利益率を高める施策を行っています。
このように、東急グループは鉄道利用者を増やすために、他の事業への多角化をしています。したがって、小売事業は利益率が低いですが重要な役割を担っているのです。
以上、今回のクイズの正解は、選択肢③の生活サービス事業でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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<この分析記事の出典データ>
東急株式会社 IR