「当座借越」は、簿記の勘定科目の中でも重要な論点の一つです。しかし、初心者にとっては理解しづらい部分もあるかもしれません。本記事では、当座借越の定義や特徴、仕訳方法、実際の企業事例についてをわかりやすく解説します。当座借越の知識を身につけて、簿記のスキルを向上させましょう。
目次
- 簿記の勘定科目:当座借越とは?
- 高校生でも理解できる当座借越契約
- 当座借越の流れ
- 当座借越の確認問題
- 正解発表
- 簿記の仕訳事例:当座借越
- 当座預金残高を超えて小切手を振り出した時の仕訳事例
- 当座借越を解消するために入金した時の仕訳事例
- 決算日に当座借越状態の時の仕訳事例
- 翌期の再振替仕訳を行う際の事例
- 当座借越の仕訳問題に挑戦
- 当座借越:帳簿上の動き
- 当座借越の実際の事例を企業の決算書から紹介
- ゲオホールディングスのビジネスから見る当座借越
- 当座借越:まとめ
簿記の勘定科目:当座借越とは?
当座借越(とうざかりこし)とは、当座預金残高を超えて引き出しを行った時に生じた銀行への支払い義務を表す勘定科目です。
通常、当座預金口座の残高を超えて小切手を振り出すことはできません。
しかし、事前に銀行と当座借越契約を結ぶことにより、当座預金残高を超えても一定額までなら小切手を振り出すことが可能となります。
当座預金口座についてより詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
高校生でも理解できる当座借越契約
当座借越契約は、銀行と借り手(企業や個人)が結ぶ一定の限度額まで資金を借りられる契約です。この契約を利用することで、企業や個人は資金繰りを円滑に行うことが可能となります。
具体的には、100万円の限度額を持つ当座借越契約を結んでいる場合、必要に応じて最大100万円まで資金を借り入れることができます。
また、当座借越契約を利用することで、当座預金残高を超えた金額の引き出しが可能になります。
例えば、当座預金残高が50万円であっても、100万円まで借りられる契約を結んでいれば、50万円を超える額を引き出すことができます。ただし、当座預金残高を超えて引き出した分は借金として扱われ、利息が発生します。
小切手について詳しく学びたい方は下記の記事がお勧めです。
当座借越の流れ
当座借越を用いた取引の流れは、主に次のようなステップで進みます。
まず、当座預金残高を超える小切手が振り出されると、当座預金残高がマイナスになります。
その後、2つのケースが考えられます。
1つは入金などにより、マイナスの当座残高が解消されるケースです。この場合、当座預金(資産)として表示されます。
もう1つは、マイナスの当座残高が決算整理時まで解消されないケースです。この場合は、当座借越(負債)に振り替えられます。
このように、当座借越を用いた取引の流れは、当座預金残高がマイナスになった場合の処理方法によって異なります。
当座借越の確認問題
それでは、ここまでの内容を踏まえて、当座借越に関する問題です。
当座借越とは、どのようなものでしょうか?
タップで回答を見ることができます
現金の貸し出し
長期の借り入れ
一時的な資金繰りの借入れ
預金の引き出し
正解発表
正解は、選択肢③一時的な資金繰りの借入れです。
当座借越は、企業が銀行と取引する際に、一時的な資金繰りのために利用する短期の借入れを指します。
簿記の仕訳事例:当座借越
簿記上の取引事例を通じて、当座借越の使い方を解説します。
当座預金残高を超えて小切手を振り出した時の仕訳事例
「仕入代金1,000円を支払うため小切手を振り出した。当社の当座預金残高は500円であったが、取引銀行と限度額5,000円の当座借越契約を結んでいる。」という取引の事例を使い、当座預金残高を超えて小切手を振り出した時の仕訳の流れを順に説明します。
小切手振出時:仕入の発生
商品を仕入れたため、仕入が増加します。
そのため、借方(左側)に仕入(費用)1,000円を記入します。
小切手振出時:当座預金の減少
また、当座預金残高を超えて小切手を振り出したため、当座預金が減少します。
したがって、貸方(右側)に当座預金(資産)1,000円を記入します。
当座借越を解消するために入金した時の仕訳事例
「当座借越500円を解消するため、現金700円を当座預金に入金した。」という取引の事例を使い、当座借越を解消するための入金時の仕訳の流れを順に説明します。
入金時:現金の減少
当座預金に現金700円を入金したため、現金が増加します。
そのため、貸方(右側)に現金(資産)700円を記入します。
入金時:当座預金の増加
また、当座預金残高が500円マイナスの状態であったため、解消するために現金700円を当座預金口座に入金しています。その結果、マイナス状態の当座預金がプラスの状態となります。
したがって、借方(左側)に当座預金(資産)700円を記入します。
決算日に当座借越状態の時の仕訳事例
「決算日において、当座預金が500円の貸方残高であったため、当座借越勘定に振り替える。」という取引の事例を使い、決算日に当座借越状態の時の仕訳の流れを順に説明します。
振り替え時:当座預金の増加
当座預金のマイナス分だけ当座預金を増やし、当座預金残高をマイナスから0に戻します。
そのため、借方(左側)に当座預金(資産)500円を記入します。
振り替え時:当座借越の増加
振り替えた金額の分だけ、当座借越の勘定科目を増加させます。
したがって、貸方(右側)に当座借越(負債)500円を記入します。
翌期の再振替仕訳を行う際の事例
「前期の決算にて当座預金勘定の貸方残高を当座借越勘定に振り替えていたが、当期首に振り戻し処理を行った。」という取引の事例を使い、当座借越の再振替仕訳の流れを順に説明します。
再振替仕訳時:当座借越と当座預金の減少
前期末に当座借越に振り替えた金額を翌期首に当座預金のマイナスに振り戻します。
したがって、借方(左側)に当座借越(負債)500円を記入し、貸方(右側)に当座預金(資産)500円を記入します。
当座借越の仕訳問題に挑戦
ここまでの内容で、当座借越の仕訳の流れを理解していただけたかと思います。
早速、下記のLINEアプリから練習問題に挑戦してみてください。
当座借越:帳簿上の動き
最後に、当座借越の帳簿上での動きを解説します。
帳簿上の動きは、簿記を理解する際に、非常に重要となるため、必ず押さえておきましょう。
当座残高のマイナスが発生
当座預金のマイナスが解消
当座預金のマイナスが未解消
当座預金と当座借越
当座借越の実際の事例を企業の決算書から紹介
当座借越の実際の事例を企業の決算書から紹介します。
今回はゲオホールディングスを事例に解説します。
ゲオホールディングスのビジネスから見る当座借越
ゲオホールディングスは、中古のゲームや家電等の販売及びDVD・CDのレンタルを行っている会社です。
直近2023年3月期の第3四半期の決算説明会資料を見ると、「運転資金として当座借越で調達により増加」と記載されています。
これは商品の仕入や従業員の給与、広告宣伝費等の運転資金の支払いに当座預金の残高を超えて支払ったということが分かります。
当座借越:まとめ
今回は簿記3級に登場する「当座借越」の意味や仕訳方法について解説しました。
当座借越は当座預金残高を超えて引き出しを行った時に生じた銀行への支払い義務を表す勘定科目です。
決算日や再振替仕訳など複雑な仕訳事例も試験に出題されるため、しっかり覚えておきましょう!
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