この記事では、企業のビジネスモデルと財務数値を結びつける会計クイズを元に、企業がどのような戦略で利益を生み出しているかを解説します。
今回扱うのはコンテンツビジネスです。
下記のようなクイズを通じて、コンテンツビジネスの儲けの仕組みを解説します。
今は全くわからなくても問題ありません。
この記事を通じて、コンテンツビジネスを営む企業のビジネスモデルや経営戦略を、決算書の数字から読み解いていきます。
わかりやすく解説していますので、ぜひ最後まで読んでいただけますと幸いです。
目次
- 会計クイズ:コンテンツビジネス
- 登場企業の紹介
- 会計クイズ:問題
- 会計クイズ:正解の発表
- ネットフリックスの決算書の読み方
- ネットフリックスの収益モデル
- ネットフリックスの営業利益
- ネットフリックスのコンテンツ資産
- コンテンツビジネスのマーケティング戦略
- 任天堂の決算書の読み方
- 任天堂の流動資産
- 任天堂の固定資産
- 資金を借りやすい会社はどっち?
- ネットフリックスの動画制作費
- ネットフリックスの資金調達状況
- ゲーム会社の資金調達
- 会計クイズ:まとめ
会計クイズ:コンテンツビジネス
登場企業の紹介
最初に今回の登場企業の紹介です。
- Netflix
- 任天堂
この2社はいずれもコンテンツビジネスを展開している企業です。
しかし、提供しているサービスや販売形態は大きく異なります。
会計クイズ:問題
それでは、ここでクイズです。
動画配信サービスを提供しているNetflixはどちらでしょう?
両者のビジネスモデルの資産や負債を予想しながら考えてみてください。
タップで回答を見ることができます
選択肢①
選択肢②
貸借対照表の読み方についてを基礎から詳しく学びたい方は、まずは下記の記事をご覧ください。
関連記事
【初心者向け】貸借対照表の読み方とは?企業の財政状態を知ろう!
boki.funda.jp/blog/article/balance-sheet
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会計クイズ:正解の発表
正解は、選択肢①がNetflixです。
みなさん正解できましたか?
ここからは、コンテンツビジネスの決算書の読み方を解説します。
ぜひ、最後までお付き合い頂けますと幸いです。
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ネットフリックスの決算書の読み方
まずはネットフリックスのビジネスモデルを、決算書から読み取っていきます。
ネットフリックスの収益モデル
企業の収益の内訳は損益計算書に開示されます。
ネットフリックスは、売上の大部分がストリーミング配信の収益で構成されています。
ネットフリックスは有料会員からサブスクリプションの形式で収益を得る収益モデルです。
従って、収益の内訳は有料会員と単価に分けることができます。
ネットフリックスの決算資料では、収益の内訳の変数が開示されています。
2022年度の時点で下記のような数値となっています。
- 有料会員数 2.23億人
- ARPU(平均単価) 11.76ドル
この2つのデータを時系列で並べてみます。
2020年度は1.89億人だった有料会員が、2022年度には2.23億人にまで拡大しています。
この情報からもわかる通り、ネットフリックスの収益を押し上げている変数は有料会員数となります。
ネットフリックスの営業利益
営業利益は企業がどれだけ効率的に利益を上げているかを示す指標です。
これは、収益から売上原価や販管費などの営業費用を引いて計算されます。
ネットフリックスの営業利益と営業利益率の推移を見ると、直近では減少傾向にあることがわかります
営業利益が減少している理由を追うために、費用の内訳を確認しましょう。
ネットフリックスの損益計算書を見ると、動画制作コストや開発コストに占める割合が増加しています。
したがって、利益が減少した理由はコンテンツ制作費の増加であることが分かります。
ネットフリックスのコンテンツ資産
ネットフリックスは、自社で保有しているコンテンツが無形の資産として貸借対照表に計上されます。
そのため、固定資産の比率が非常に大きくなります。
また、コンテンツを制作・購入するために多額の資金が必要となります。
ネットフリックスは外部から負債で資金を調達し、動画制作や取得の原資に充てています。
その理由に、ネットフリックスの貸借対照表には有利子負債の金額が多額に存在します。
コンテンツビジネスのマーケティング戦略
もう少しネットフリックスについて深掘っていきます。
ネットフリックスのマーケティングコストは横ばいにも関わらず、会員数は増加しています。
なぜ広告費用をかけなくても会員数は増えているのでしょうか?
それはコンテンツ自体に集客力があるためです。
ネットフリックスでは、ここでしか見ることができないオリジナルコンテンツも制作しています。このオリジナルコンテンツが会員数の増加に大きく寄与しているのです。
任天堂の決算書の読み方
次は、ゲームメーカーである任天堂の決算書を見ていきましょう。
任天堂の流動資産
任天堂はゲームのヒットの有無により、業績が大きく変動します。
そのため、業績が悪化した際の安全性を確保する目的で現金をたくさん保有しています。
任天堂の固定資産
一方で、任天堂は製造業にも関わらず有形固定資産の割合が少ないという特徴があります。
任天堂は製品の大半を自社で製造せず、外部の企業に製造委託しています。つまり、任天堂は自社で工場を持たないファブレス企業です。
ファブレス企業とは
ファブレス企業とは、工場を持たないメーカーが自社で企画開発した商品の製造を他社の生産工場に委託して、自社ブランドとして販売を行うビジネスモデルです。
ファブレス経営を行うことにより、企画開発に注力できたり、固定費を抑えることができたりするなどのメリットがあります。
したがって、ファブレス経営を行う任天堂は、自社で生産設備をほとんど有していないため、有形固定資産の金額は僅少となります。
固定資産についてより詳しく学びたい方は、下記の記事をご覧ください。
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固定資産を取得・売却した時は?簿記試験頻出の仕訳事例を徹底解説
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資金を借りやすい会社はどっち?
最後に、両者の資金調達状況についてを決算書から読み取ります。
ネットフリックスの動画制作費
キャッシュフロー計算書を見ると、ネットフリックスはコンテンツ制作・購入に約2兆円の資金を投下しています。
参考に日本のテレビ局の番組制作費と比べると、ネットフリックスのコンテンツ制作費がいかに大きいかが一目瞭然だと思います。
在京キー局各社の番組制作費は削減傾向である中、ネットフリックスの制作費は年々増加傾向であるため、今後の動向に注目です。
ネットフリックスの資金調達状況
では、資金はどこから捻出しているのでしょうか?
それは先ほど述べた通り、外部からの借り入れです。
会員制のストックビジネスは、将来いくら利益が出るかが読みやすいです。したがって、金融機関側にとってもお金を貸しやすいビジネスとなります。
ゲーム会社の資金調達
一方、任天堂はゲームのヒットの有無によって業績が大きくブレる特徴があります。直近の約15年の間に約1兆円の増減があるのが下のグラフから分かると思います。
そのため、金融機関側からしたらお金を貸しにくいビジネスと捉えられます。
業績がブレるリスクを回避するために、任天堂は現金を多額に保有しています。決算書を見ると、約1.2兆円保有しているのが読み取れます。
また、金融機関からお金を借りにくい任天堂は、現金を大量に保有することによって無借金経営を行っています。したがって、負債の内訳を見ても借入金等は存在しません。
実は任天堂だけでなくゲーム業界の企業は現金を多額に保有し、ほとんど借金を抱えずに経営をしているという特徴があります。
そのため、ゲーム業界の決算書はどこも似たような形になります。
企業の借金を意味する借入金については、下記の記事で詳しく解説しています。
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会計クイズ:まとめ
最後にまとめです。
今回はコンテンツビジネスというテーマで、コンテンツビジネスを展開する2社のビジネスモデルを比較しました。
同じコンテンツビジネスと言っても、資産の持ち方や負債の依存度が全く違うことが決算数値を見ることによって読み取ることができます。
以上、今回のクイズの正解は、選択肢①がNetflixでした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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<この分析記事の出典データ>
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