会計クイズ:中古品ビジネス
この記事では、企業のビジネスモデルと財務数値を結びつける会計クイズを元に、企業がどのように利益を生み出しているかを事例を用いて解説します。
今回扱うのは中古品ビジネスです。
中古品を扱う企業のビジネスモデルを、決算書の数字から読み解いていきます。
事例を用いてわかりやすく解説していますので、ぜひ最後まで読んでいただけますと幸いです。
目次
- 会計クイズ:中古品ビジネス
- 登場企業の紹介
- 会計クイズ:問題
- 会計クイズ:正解の発表
- ビジネスモデルとは?
- ビジネスモデルの構成要素
- ビジネスの目的
- 古本屋のビジネスモデルを解説
- 古本屋が生み出す利益
- 古本屋が安く仕入れる理由
- 古本屋のコスト構造
- 古本屋のビジネスモデル
- ブックオフのケイパビリティ
- ブックオフの貸借対照表
- メルカリの決算書の読み方を解説
- メルカリのビジネスモデルの構成要素
- メルカリの貸借対照表
- 会計クイズ:まとめ
登場企業の紹介
最初に今回の登場企業の紹介です。
- ブックオフGHD
- メルカリ
この2社はどちらも中古市場で小売業を展開している企業ですが、扱っている商品や利益を生み出す仕組みがそれぞれ異なります。
会計クイズ:問題
上記の内容を踏まえて、クイズです。
個人間で売買できるフリマアプリ「メルカリ」を運営しているメルカリの貸借対照表はどちらでしょう?
両者のビジネスモデルがどのように財政状態に影響するのかを予想して考えてみてください。
タップで回答を見ることができます
選択肢①
選択肢②
クイズの前に、貸借対照表の読み方について詳しく学びたい方は、下記の記事をご覧ください。
関連記事
【初心者向け】貸借対照表の読み方とは?企業の財政状態を知ろう!
boki.funda.jp/blog/article/balance-sheet
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それでは、正解の発表です。
会計クイズ:正解の発表
正解は、選択肢②がメルカリの貸借対照表でした。
みなさんわかりましたか?
それでは、解説に入る前に、まずはビジネスモデルとはなにかについて整理しましょう。
ビジネスモデルとは?
この記事では、ビジネスモデルは、「顧客価値を創造し、それを顧客へ届け、利益を生み出す仕組み」と定義します。
ビジネスモデルの構成要素
ビジネスの仕組みであるビジネスモデルは、大きく3つの要素で構成されています。
- 顧客価値の提供
- ケイパビリティ
- 利益方程式
また、顧客価値の提供はさらにターゲットとバリューに分かれ、ケイパビリティはリソースとプロセスに細かく分かれます。
今回はわかりやすく、
- 誰に?
- どんな価値を?
- どのように?
- どう儲けるのか?
の4つの要素に分けて、両者の違いを解説します。
ビジネスの目的
そもそもビジネスの目的とは、ターゲットの課題を解決することです。したがって、企業分析をする際は「ターゲット」と「ターゲットの抱える課題」を知ることが非常に重要となります。
ここからは、上記の内容を踏まえて、両者のビジネスモデルを事例とともに見ていきます。
古本屋のビジネスモデルを解説
古本屋が生み出す利益
書籍を読み終わったお客さんが、古本屋に書籍を売りに来ました。
中古の書籍は、いくらで買い取って貰えるのでしょうか?
ブックオフオンラインでは、中古商品の販売金額の相場が掲載されています。
こちらの情報によると「世界一楽しい決算書の読み方」は1,400円程度で売れていることがわかりました。
1,400円で販売されている商品は、いくらで買い取って貰えるのでしょうか?
ブックオフオンラインでは、商品の買取金額の相場も公開されています。
こちらの情報を確認すると、「世界一楽しい決算書の読み方」の買取価格は450円とのことです。
従って、単純計算で約950円(1,400円-450円)の利益が出る計算となります。
古本屋が安く仕入れる理由
古本屋は、なぜ安く仕入れる必要があるのでしょうか?その答えは、店舗運営に関する費用が一定金額発生するからです。
もし、中古の書籍を高い金額で仕入れた場合、人件費や賃料などの費用を回収できずに赤字になってしまいます。
したがって、ブックオフをはじめとした古本屋は、理由なく安く仕入れているわけではありません。
このようなビジネス構造を決算書の数値を元に見ていきましょう。
古本屋のコスト構造
古本屋を運営するブックオフの決算書を確認すると、売上高に占める売上原価の割合は約43%であることが分かります。
小売ビジネスの業界平均の原価率は60%前後であることから、ブックオフは商品をかなり安く仕入れていることが読み取れます。
しかし、発生する費用は仕入原価のみではありません。店舗運営に関する費用などの販売費及び一般管理費(以下販管費)も費用として発生します。
販管費の内訳には、賃料や人件費が多額に計上されています。
従って、中古の書籍をこれ以上高く仕入れてしまうと、営業利益がほとんどでなくなってしまうことが決算書から読み取れます。
古本屋のビジネスモデル
ここからは、ブックオフを例に古本屋のビジネスモデルを整理しましょう。
ブックオフは売り手から商品を仕入れ、買い手に商品を販売する仕入販売モデルです。
売り手に対しては不用品の処分とお金を得られるバリューを提供し、買い手に対しては新品より安く購入できるバリューを提供しています。
収益モデルを分解すると、売上高は販売単価と販売量に分かれます。一方で、仕入値である売上原価は買取単価と仕入量に分かれます。
仕入販売のビジネスモデル上、利益を生み出すためには買取単価をいかに安くするかが重要となります。
商品の仕入れ先である売り手は、儲けたいというよりも邪魔だから処分したいというニーズの方が高いです。そのため、ブックオフはその場ですぐに商品を買い取り、対価を支払うという価値を提供しています。
このように、ターゲットの抱える課題を解決することによって、ブックオフは費用を抑えているのです。
では、価値を提供するためのブックオフのケイパビリティには、どのようなものがあるのでしょうか?
ブックオフのケイパビリティ
古本屋のケイパビリティは主に3つあります。
- 店舗
- ブランド
- 在庫
1つ目は店舗です。ブックオフは書籍を大量に持ち運べるように駐車場付きのロードサイド店舗や、駅前の好立地を自社で保有しています。
2つ目はブランドです。「本を売るならブックオフ」というお馴染みのCMや看板を中心に、長年築きあげてきたブランドがあります。
3つ目は在庫です。書店を超える豊富な品揃えや、利用者へのいつ行っても目当ての商品があるという信頼感を売りにしています。
この3つのケイパビリティによってブックオフは競合他社と差別化を図り、顧客に価値を提供しています。
ブックオフの貸借対照表
以上を踏まえて、冒頭のクイズの解説をしていきます。
ブックオフは自社で商品を仕入れるモデルのため、商品が資産の中に計上されます。
一方、中古品の買い取りや販売をするための店舗が固定資産に計上されます。店舗を持たないメルカリよりも固定資産が多いのが特徴です。
メルカリの決算書の読み方を解説
次に、メルカリのビジネスモデルを見ていきます。
メルカリが登場したことにより、先ほどのお客さんがブックオフよりもメルカリの方が高く売れることに気づきました。
従来の店舗における中古品売買は、来店に時間を要したり、取扱商品が限定的であったり、売り手と買い手の双方にとって価格が不透明であるといった課題がありました。
この顧客が抱えていた課題を解決するために、メルカリは個人間取引のためのマーケットプレイスであるフリマアプリ「メルカリ」を提供し始めました。
メルカリのビジネスモデルの構成要素
それでは、ブックオフと同様にメルカリのビジネスモデルを構成要素に分けて解説します。
バリュー
従来の中古品販売市場では、仲介業者の取り分などが見えなかった課題がありました。そこでメルカリは、いくらで商品が販売されたかだけではなく、メルカリ自身が受け取る手数料10%も明示し、価格の透明性を確保しています。
ケイパビリティ
メルカリは、ブックオフと異なり、インターネット上での取引のみなので、店舗などの物的な資産が必要ないビジネスです。
ターゲット
店舗ビジネスを展開するブックオフは出店したエリアに住む消費者のみがターゲットでしたが、ネットビジネスを展開するメルカリはインターネットで接続できる全国のユーザーがターゲットとなります。
収益モデル
メルカリは、売り手と買い手をアプリ上でマッチングさせ、取引に応じて手数料を受け取るビジネスモデルです。
メルカリはプラットフォームの利用者を増やすための集客が重要となるため、テレビCM等の露出も多くなります。その結果、販管費に占める広告宣伝費の割合が非常に多くなります。
メルカリの貸借対照表
以上を踏まえて、メルカリの貸借対照表を見ていきましょう。
メルカリはインターネット上でフリマアプリを運営しているため、資産の欄には在庫も店舗も計上されません。
一方、負債には多額の預り金が計上されています。
預り金とは、顧客などから一時的に預かったお金のことをいいます。
出品者が売り上げたお金は引き出すまでメルカリにプールされます。プールされたお金は預り金として流動負債に計上されるとともに、現金が流動資産に計上されます。そのため、ブックオフと比べて流動資産と流動負債が大きくなる特徴があります。
預り金について詳しく学習したい方は、下記の記事がおすすめです。
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会計クイズ:まとめ
最後にまとめです。
今回は中古品ビジネスというテーマで、中古品を扱う2社のビジネスモデルを比較しました。
同じ中古品ビジネスと言っても、販売形態や売り手への価値が全く違うことが決算数値を見ることによって読み取ることができます。
以上、今回のクイズの正解は、選択肢②がメルカリでした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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中古品ビジネスの類似の事例として、こちらの記事もおすすめです。今回扱ったブックオフとバイク王を比較した内容となっています。
会計クイズの難易度もこちらの方が高いため、ぜひ挑戦してみてください。
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<この分析記事の出典データ>
株式会社メルカリ IR
ブックオフグループホールディングス IR