簿記3級で出題される減価償却の決算整理仕訳
簿記3級では、決算整理前残高試算表に決算整理事項を加味して、決算整理後の数値を表に入力する決算書作成問題が出題されます。
この決算書作成問題に解答するためには、決算整理事項の内容をもとに決算整理仕訳を作成する必要があります。
決算整理仕訳とは、決算書を作成するために数値の整理を行ったり、期中の取引の漏れなどを反映させる最終的な修正仕訳のことをいいます。
決算整理仕訳については下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひ本記事とあわせてご覧ください。
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この記事では、簿記3級で出題される減価償却の決算整理仕訳の解き方について解説します。
決算整理仕訳のパターンや解く手順を紹介していますので、簿記3級を勉強中の方はぜひご覧ください。
最後には、本試験レベルの練習問題も用意していますので、ぜひ挑戦してみてください。
目次
- 簿記3級で出題される減価償却の決算整理仕訳
- 減価償却の概要
- 減価償却の決算整理仕訳
- 簿記3級での減価償却の決算整理仕訳の配点
- 減価償却の仕訳問題集
- 減価償却の決算整理仕訳の作成手順
- ①問題文から論点を読み取る
- ②問題文から決算整理仕訳のパターンを読み取る
- ③決算整理によって変動する金額を計算する
- ④決算整理仕訳を行う
- 減価償却の決算整理仕訳の事例
- 減価償却の決算整理仕訳の問題
- 減価償却の決算整理仕訳の解答解説
- 減価償却の決算書への入力方法
- 決算整理後残高試算表への入力
- 貸借対照表・損益計算書への入力
- 精算表への入力
- 減価償却の決算整理仕訳のまとめ
減価償却の概要
建物・備品・車両運搬具等の有形固定資産は、使用するに伴い時間の経過とともに価値が減少していきます。耐用年数に応じ、毎期資産の価値を減少させ費用化していくことを減価償却といいます。
尚、簿記3級で出題される減価償却(定額法)の計算式は以下の通りとなります。
- 減価償却費=(取得原価-残存価額)÷耐用年数
減価償却の基本については、下記の記事にて詳しく解説しています。
もし知識に自信のない方は、先にご覧ください。
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減価償却の決算整理仕訳
日商簿記3級の第3問で出題される、減価償却の決算整理仕訳は3パターンです。
- 減価償却(備品:残存価額ゼロ)
- 減価償却(建物:残存価額ゼロ、備品:残存価額ゼロ)
- 減価償却(建物:残存価額10%、備品:残存価額ゼロ)
それぞれ1つずつ解説していきます。
①減価償却(備品:残存価額ゼロ)
備品を残存価額ゼロで減価償却を行うときのパターンです。
このとき、減価償却費が発生しますので、借方(左側)に減価償却費を記入します。
また、備品減価償却累計額が増加しますので、貸方(右側)に備品減価償却累計額を記入します。
②減価償却(建物:残存価額ゼロ、備品:残存価額ゼロ)
建物及び備品を残存価額ゼロで減価償却を行うときのパターンです。
このとき、減価償却費が発生しますので、借方(左側)に減価償却費を記入します。
また、建物減価償却累計額及び備品減価償却累計額が増加しますので、貸方(右側)に建物減価償却累計額及び備品減価償却累計額を記入します。
③減価償却(建物:残存価額10%、備品:残存価額ゼロ)
建物を残存価額10%、備品を残存価額ゼロで減価償却を行うときのパターンです。
このとき、減価償却費が発生しますので、借方(左側)に減価償却費を記入します。
また、建物減価償却累計額及び備品減価償却累計額が増加しますので、貸方(右側)に建物減価償却累計額及び備品減価償却累計額を記入します。
※②と仕訳の形は同じですが、建物の減価償却費の計算に残存価額10%を考慮する必要がある点に注意しましょう。
簿記3級での減価償却の決算整理仕訳の配点
減価償却の決算整理仕訳は、簿記3級試験の第3問で問われます。
第3問は35点満点で、10個の決算整理仕訳が出題される問題構成です。
したがって、減価償却の決算整理仕訳ができるようになることで、約3点をものにすることができます。
第3問の対策方法については、下記の記事で詳しく解説しています。
目安の時間配分や問題を解く際のポイントなどについて触れていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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減価償却の仕訳問題集
簿記の学習アプリ「Funda簿記」では、減価償却の決算整理仕訳が登場する決算書作成問題を解くことができます。
問題を出題する設定は下記の通りです。
- 級:簿記3級
- 大問:第3問
- 出題の方式:カテゴリー別
- 論点の選択:自由
また、Funda簿記を利用していない方も、LINEから無料で問題を解くことができます。
ぜひ下記より練習問題に挑戦してみてください。
減価償却の決算整理仕訳の作成手順
減価償却の決算整理仕訳の作成手順は次の4ステップです。
- 問題文から論点を読み取る
- 問題文から決算整理仕訳のパターンを読み取る
- 決算整理によって変動する金額を計算する
- 決算整理仕訳を行う
順に解説していきます。
①問題文から論点を読み取る
最初に、問われている決算整理の論点を読み取ります。
下の事例では「減価償却を行う」と書いてあるため、減価償却の論点であることが読み取れます。
②問題文から決算整理仕訳のパターンを読み取る
次に、問題文から問われている決算整理仕訳のパターンを読み取ります。
下の事例では減価償却対象が備品のみ、残存価額はゼロであるため、減価償却(備品:残存価額ゼロ)のパターンであることが読み取れます。
③決算整理によって変動する金額を計算する
次に、決算整理によって変動する金額を計算します。
下の事例では決算整理前残高試算表に記載されている備品の金額と「残存価額ゼロ、耐用年数4年」より、以下の計算結果を用います。
(取得原価100,000-残存価額0)÷耐用年数4=25,000
金額の読み取りミスや計算ミスをしないよう注意しましょう。
④決算整理仕訳を行う
最後に、決算整理仕訳のパターンと計算した金額をもとに、決算整理仕訳を行います。
減価償却の決算整理仕訳の事例
以上を踏まえて、簿記3級の本試験レベルの決算整理仕訳に挑戦してみましょう。
「作成手順」を参考に、決算整理仕訳として正しいものを選択肢から選んでください。
減価償却の決算整理仕訳の問題
タップで回答を見ることができます
選択肢①
選択肢②
選択肢③
減価償却の決算整理仕訳の解答解説
この問題の正解は選択肢②でした。
①問題文から論点を読み取る
最初に、問われている論点を読み取ります。
今回の問題では「減価償却を行う」と書いてあるため、減価償却の論点であることが読み取れます。
②問題文から決算整理仕訳のパターンを読み取る
次に、問われている決算整理仕訳のパターンを読み取ります。
今回の問題では減価償却の対象が建物と備品、共に残存価額はゼロであるため、減価償却の論点のうち、減価償却(建物:残存価額ゼロ、備品:残存価額ゼロ)のパターンであることが読み取れます。
【今回の決算整理仕訳のパターン】
③決算整理によって変動する金額を計算する
次に、決算整理によって変動する金額を計算します。
今回の問題では決算整理前残高試算表に記載されている建物と備品の金額と「残存価額ゼロ」「耐用年数10年、耐用年数4年」より、以下の計算結果を用います。
- 建物:(1,000,000-0)÷10=100,000
- 備品:(400,000-0)÷4=100,000
④決算整理仕訳を行う
最後に、決算整理仕訳を行います。
建物減価償却累計額の増加
減価償却を行うことで、建物減価償却累計額が増加しています。
建物減価償却累計額は資産の控除項目であるため、貸方(右側)がホームポジションです。
したがって、建物減価償却累計額の増加を表現するために、建物減価償却累計額のホームポジションである貸方(右側)に記入します。
備品減価償却累計額の増加
減価償却を行うことで、備品減価償却累計額が増加しています。
備品減価償却累計額は資産の控除項目であるため、貸方(右側)がホームポジションです。
したがって、備品減価償却累計額の増加を表現するために、備品減価償却累計額のホームポジションである貸方(右側)に記入します。
減価償却費の発生
建物と備品の減価償却を行うことで、減価償却費が発生しています。
減価償却費は費用グループに属する勘定科目であるため、借方(左側)がホームポジションです。
したがって、減価償却費の発生を表現するために、減価償却費のホームポジションである借方(左側)に記入します。
以上より、正しい決算整理仕訳は選択肢②となります。
減価償却の決算書への入力方法
簿記3級の第3問では決算整理仕訳を反映させた決算整理後の数値を決算書に入力して解答します。
そこで、最後に問題形式ごとの決算書への入力方法を解説します。
なお、第3問で出題される問題形式は以下のとおりです。
- 決算整理後残高試算表の作成
- 貸借対照表・損益計算書の作成
- 精算表の作成
決算整理後残高試算表への入力
決算整理仕訳によって建物減価償却累計額が増加しますので、建物減価償却累計額の変動を反映させます。
決算整理前残高試算表の数値が200,000、決算整理仕訳での変動額が+100,000のため、決算整理後残高試算表の建物減価償却累計額の貸方には300,000を入力します。
また、決算整理仕訳によって備品減価償却累計額が増加しますので、備品減価償却累計額の変動を反映させます。
決算整理前残高試算表の数値が150,000、決算整理仕訳での変動額が+100,000のため、決算整理後残高試算表の備品減価償却累計額の貸方には250,000を入力します。
さらに、決算整理仕訳によって減価償却費が発生しますので、減価償却費の変動を反映させます。
決算整理前残高試算表の数値が0、決算整理仕訳での変動額が+200,000のため、決算整理後残高試算表の減価償却費の借方には200,000を入力します。
貸借対照表・損益計算書への入力
貸借対照表の借方にある建物に決算整理前残高試算表の数値1,000,000を入力します。
決算整理仕訳によって建物減価償却累計額が増加しますので、建物減価償却累計額の変動を反映させます。
決算整理前残高試算表の数値が200,000、決算整理仕訳での変動額が+100,000のため、貸借対照表の借方にある建物減価償却累計額には300,000を入力します。
最後に建物減価償却累計額の右欄に建物から建物減価償却累計額を差し引いた700,000を入力します。
これが建物の「帳簿価額」となります。
次に、貸借対照表の借方にある備品に決算整理前残高試算表の数値400,000を入力します。
決算整理仕訳によって備品減価償却累計額が増加しますので、備品減価償却累計額の変動を反映させます。
決算整理前残高試算表の数値が150,000、決算整理仕訳での変動額が+100,000のため、貸借対照表の借方にある備品減価償却累計額には250,000を入力します。
備品減価償却累計額右欄に備品から備品減価償却累計額を差し引いた150,000を入力します。
さらに、決算整理仕訳によって減価償却費が発生しますので、減価償却費の変動を反映させます。
決算整理前残高試算表の数値が0、決算整理仕訳での変動額が+200,000のため、損益計算書の借方にある減価償却費には200,000を入力します。
貸借対照表について基礎からしっかり学びたい方は、下記の記事がおすすめです。
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精算表への入力
決算整理仕訳によって建物減価償却累計額が増加しますので、建物減価償却累計額の修正記入欄の貸方に100,000を入力します。
建物減価償却累計額の決算整理前残高試算表には貸方に200,000、修正記入欄には貸方に100,000が入力されているため、貸借対照表の貸方に300,000を入力します。
また、決算整理仕訳によって備品減価償却累計額が増加しますので、備品減価償却累計額の修正記入欄の貸方に100,000を入力します。
備品減価償却累計額の決算整理前残高試算表には貸方に150,000、修正記入欄には貸方に100,000が入力されているため、貸借対照表の貸方に250,000を入力します。
さらに、決算整理仕訳によって減価償却費が発生しますので、減価償却費の修正記入欄の借方に200,000を入力します。
減価償却費の決算整理前残高試算表には入力されておらず、修正記入欄には借方に200,000が入力されているため、損益計算書の借方に200,000を入力します。
精算表については、下記の記事で詳しく解説しています。
精算表の知識に自信がない方や苦手意識を持っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
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減価償却の決算整理仕訳のまとめ
簿記3級の第3問で出題される減価償却の決算整理仕訳の解き方を解説してきました。
決算整理仕訳の中でも頻出論点であるため、試験を受ける方は必ず解けるようになりましょう。
簿記の学習アプリ「Funda簿記」では、今回のような本試験レベルの問題が解き放題です。
繰り返し問題を解いて理解度を深めたい方は、ぜひFunda簿記で一緒に勉強しましょう!