簿記3級で出題される貸倒引当金の決算整理仕訳
簿記3級では、決算整理前残高試算表に決算整理事項を加味して、決算整理後の数値を表に入力する決算書作成問題が出題されます。
この決算書作成問題に解答するためには、決算整理事項の内容をもとに決算整理仕訳を作成する必要があります。
決算整理仕訳とは、決算書を作成するために数値の整理を行ったり、期中の取引の漏れなどを反映させる最終的な修正仕訳のことをいいます。
決算整理仕訳については下記の記事で詳しく解説していますので、ぜひ本記事とあわせてご覧ください。
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この記事では、簿記3級で出題される貸倒引当金の決算整理仕訳の解き方について解説します。
決算整理仕訳のパターンや解く手順を紹介していますので、簿記3級を勉強中の方はぜひご覧ください。
最後には、本試験レベルの練習問題も用意していますので、ぜひ挑戦してみてください。
目次
- 簿記3級で出題される貸倒引当金の決算整理仕訳
- 貸倒引当金の概要
- 貸倒引当金の決算整理仕訳
- 簿記3級での貸倒引当金の決算整理仕訳の配点
- 貸倒引当金の仕訳問題集
- 貸倒引当金の決算整理仕訳の作成手順
- ①問題文から論点を読み取る
- ②問題文から決算整理仕訳のパターンを読み取る
- ③決算整理によって変動する金額を計算する
- ④決算整理仕訳を行う
- 貸倒引当金の決算整理仕訳の事例
- 貸倒引当金の決算整理仕訳の問題
- 貸倒引当金の決算整理仕訳の解答解説
- 貸倒引当金の決算書への入力方法
- 決算整理後残高試算表への入力
- 貸借対照表・損益計算書への入力
- 精算表への入力
- 貸倒引当金の決算整理仕訳のまとめ
なお、今の実力を試したい方向けに、貸倒れの仕訳問題を3問用意しました。
ぜひ、力試しに下記のトレーニングにも挑戦してみてください。
おすすめトレーニング
貸倒引当金の概要
貸倒引当金とは、売上債権に対する貸倒の見積り高を表す評価勘定です。
過去の実績から期末の売上債権の残高に貸倒実績率を乗じることで貸倒見積高を概算します。
資産の控除項目として使用され、増加の際には貸方、減少の際には借方で仕訳を記入します。
貸倒引当金の基本については、下記の記事にて詳しく解説しています。
もし知識に自信のない方は、先にご覧ください。
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貸倒引当金の決算整理仕訳
日商簿記3級の第3問で出題される、貸倒引当金の決算整理仕訳は2パターンです。
- 売掛金に貸倒引当金を設定
- 売掛金と受取手形に貸倒引当金を設定
それぞれ1つずつ解説していきます。
①売掛金に貸倒引当金を設定
売掛金の期末残高に対して、貸倒引当金を差額補充法により設定するパターンです。
このとき、貸倒引当金が増加しますので、貸方(右側)に貸倒引当金を記入します。
また貸倒引当金繰入が発生しますので借方(左側)に貸倒引当金繰入を記入します。
②売掛金と受取手形に貸倒引当金を設定
売掛金と受取手形の残高に対して、貸倒引当金を差額補充法により設定するパターンです。
このとき、貸倒引当金が増加しますので、貸方(右側)に貸倒引当金を記入します。
また貸倒引当金繰入が発生しますので借方(左側)に貸倒引当金繰入を記入します。
簿記3級での貸倒引当金の決算整理仕訳の配点
貸倒引当金の決算整理仕訳は、簿記3級試験の第3問で問われます。
第3問は35点満点で、10個の決算整理仕訳が出題される問題構成です。
したがって、貸倒引当金の決算整理仕訳ができるようになることで、約3点をものにすることができます。
第3問の対策方法については、下記の記事で詳しく解説しています。
目安の時間配分や問題を解く際のポイントなどについて触れていますので、ぜひ参考にしてみてください。
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貸倒引当金の仕訳問題集
簿記の学習アプリ「Funda簿記」では、貸倒引当金の決算整理仕訳が登場する決算書作成問題を解くことができます。
問題を出題する設定は下記のとおりです。
- 級:簿記3級
- 大問:第3問
- 出題の方式:カテゴリー別
- 論点の選択:自由
また、Funda簿記を利用していない方も、LINEから無料で問題を解くことができます。
ぜひ下記より練習問題に挑戦してみてください。
貸倒引当金の決算整理仕訳の作成手順
貸倒引当金の決算整理仕訳の作成手順は次の4ステップです。
- 問題文から論点を読み取る
- 問題文から決算整理仕訳のパターンを読み取る
- 決算整理によって変動する金額を計算する
- 決算整理仕訳を行う
順に解説していきます。
①問題文から論点を読み取る
最初に、問われている決算整理の論点を読み取ります。
下の事例では「貸倒引当金を設定する」と書いてあるため、貸倒引当金の論点であることが読み取れます。
②問題文から決算整理仕訳のパターンを読み取る
次に、問題文から問われている決算整理仕訳のパターンを読み取ります。
下の事例では「売掛金の期末残高に対し」と書いてあるため、売掛金に貸倒引当金を設定のパターンであることが読み取れます。
③決算整理によって変動する金額を計算する
次に、決算整理によって変動する金額を計算します。
下の事例では「売掛金の期末残高」「4%」「差額補充法」と書いてあるため、(1,000,000×0.04)-10,000=30,000を用います。
金額の読み取りミスや計算ミスをしないよう注意しましょう。
④決算整理仕訳を行う
最後に、決算整理仕訳のパターンと計算した金額をもとに、決算整理仕訳を行います。
貸倒引当金の決算整理仕訳の事例
以上を踏まえて、簿記3級の本試験レベルの決算整理仕訳に挑戦してみましょう。
「作成手順」を参考に、決算整理仕訳として正しいものを選択肢から選んでください。
貸倒引当金の決算整理仕訳の問題
タップで回答を見ることができます
選択肢①
選択肢②
選択肢③
貸倒引当金の決算整理仕訳の解答解説
この問題の正解は選択肢②でした。
「作成手順」に沿って、この問題の解き方を解説します。
①問題文から論点を読み取る
最初に、問われている論点を読み取ります。
今回の問題では「貸倒引当金を設定する」と書いてあるため、貸倒引当金の論点であることが読み取れます。
②問題文から決算整理仕訳のパターンを読み取る
次に、問われている決算整理仕訳のパターンを読み取ります。
今回の問題では「売掛金と受取手形の期末残高に対し」と書いてあるため、売掛金と受取手形に貸倒引当金を設定のパターンであることが読み取れます。
【今回の決算整理仕訳のパターン】
③決算整理によって変動する金額を計算する
次に、決算整理によって変動する金額を計算します。
今回の問題では「売掛金と受取手形の期末残高」「3%」「差額補充法」と書いてあるため、(2,000,000×0.03)-10,000=50,000を用います。
④決算整理仕訳を行う
最後に、決算整理仕訳を行います。
貸倒引当金の増加
売掛金と貸倒引当金を合計した期末残高に実績率の3%を乗じた60,000円から、決算整理前残高試算表に計上されている10,000円を引いた、50,000円の貸倒引当金を設定します。
貸倒金は売上債権(資産)の控除科目であるため、貸方(右側)がホームポジションです。
したがって貸倒引当金の増加を表現するために、貸倒引当金をホームポジションの貸方(右側)に記入します。
貸倒引当金繰入の発生
貸倒引当金の設定は、翌期に発生する見込みの貸倒損失を、当期に繰り上げて費用計上する会計処理であるため、貸倒引当金繰入を発生させます。
貸倒引当金繰入は費用のグループに属するため、借方(左側)がホームポジションです。
したがって、貸倒引当金繰入の発生を表現するために、貸倒引当金繰入をホームポジションの借方(左側)に記入します。
以上より、正しい決算整理仕訳は選択肢②となります。
貸倒引当金の決算書への入力方法
簿記3級の第3問では決算整理仕訳を反映させた決算整理後の数値を決算書に入力して解答します。
そこで、最後に問題形式ごとの決算書への入力方法を解説します。
なお、第3問で出題される問題形式は以下のとおりです。
- 決算整理後残高試算表の作成
- 貸借対照表・損益計算書の作成
- 精算表の作成
決算整理後残高試算表への入力
決算整理仕訳によって貸倒引当金が増加しますので、貸倒引当金の変動を反映させます。
決算整理前残高試算表の数値が10,000、決算整理仕訳での変動額が+50,000のため、決算整理後残高試算表の貸倒引当金には60,000を入力します。
また、決算整理仕訳によって貸倒引当金繰入が発生しますので、貸倒引当金繰入の変動を反映させます。
決算整理前残高試算表の数値が0、決算整理仕訳での変動額が+50,000のため、決算整理後残高試算表の貸倒引当金繰入には50,000を入力します。
貸借対照表・損益計算書への入力
貸借対照表の借方にある受取手形と売掛金に、決算整理前残高試算表の数値を入力します。(※売掛金・受取手形に関する決算整理事項がない前提です)
決算整理仕訳によって貸倒引当金が増加しますので、貸倒引当金の変動を反映させます。
決算整理前残高試算表の数値が10,000、決算整理仕訳での変動額が+50,000のため、貸借対照表の借方にある貸倒引当金には60,000を入力します。
最後に貸倒引当金の右欄に売掛金・受取手形の合計額から貸倒引当金を差し引いた940,000を入力します。
これが売上債権の「回収見込み額」となります。
また、決算整理仕訳によって貸倒引当金繰入が発生しますので、貸倒引当金繰入の変動を反映させます。
決算整理前残高試算表の数値が0、決算整理仕訳での変動額が+50,000のため、貸借対照表の借方にある貸倒引当金繰入には50,000を入力します。
貸借対照表について基礎からしっかり学びたい方は、下記の記事がおすすめです。
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また、損益計算書を1から学びたい方は、下記の記事をご覧ください。
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精算表への入力
決算整理仕訳によって貸倒引当金が増加しますので、貸倒引当金の修正記入欄の貸方に50,000を入力します。
貸倒引当金の決算整理前残高試算表には貸方に10,000、修正記入欄には貸方に50,000が入力されているため、貸借対照表には貸方に60,000を入力します。
また、決算整理仕訳によって貸倒引当金繰入が発生しますので、貸倒引当金繰入の修正記入欄の借方に50,000を入力します。
貸倒引当金繰入の決算整理前残高試算表には入力されておらず、修正記入欄には借方に50,000が入力されているため、損益計算書の借方に50,000を入力します。
精算表については、下記の記事で詳しく解説しています。
精算表の知識に自信がない方や苦手意識を持っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
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貸倒引当金の決算整理仕訳のまとめ
簿記3級の第3問で出題される貸倒引当金の決算整理仕訳の解き方を解説してきました。
決算整理仕訳の中でも頻出論点であるため、試験を受ける方は必ず解けるようになりましょう。
簿記の学習アプリ「Funda簿記」では、今回のような本試験レベルの問題が解き放題です。
繰り返し問題を解いて理解度を深めたい方は、ぜひFunda簿記で一緒に勉強しましょう!