【簿記3級】貸倒れの仕訳問題をわかりやすく解説

簿記3級で出題される貸倒れの仕訳問題

簿記3級では、問題文で与えられている取引を仕訳に変換する仕訳問題が出題されます。
通常、勘定科目と金額の完全解答で、配点が付与されます。


部分点方式ではありませんので、似ている勘定科目名を選んだり、金額の入力ミスをしたりしないように注意しましょう。


この記事では、簿記3級で出題される貸倒れの仕訳問題について解説しています。
問題の出題傾向や解き方を紹介していますので、簿記3級を勉強中の方はぜひご覧ください。
最後には本試験レベルの練習問題も用意していますので、ぜひ挑戦してみてください。

貸倒れの概要

貸倒れとは、売上債権が取引相手の経営感情の悪化等によって回収不能となることです。
貸倒れが発生した際は、回収不能な金額は費用である「貸倒損失」を計上します。


企業は経営活動を続けていくうちに、回収不能額を見積もれるようになります。
そこで翌期以降に貸倒れる可能性がある金額を概算して、期末に「貸倒引当金」を計上します。


貸倒れの基本については、下記の記事にて詳しく解説しています。
もし知識に自信のない方は、先にご覧ください。

貸倒れの出題傾向

日商簿記3級での貸倒れの仕訳問題は、大きく4パターンに分かれます。

1. 当期発生の売掛金の貸倒れ
2. 前期発生の売掛金の貸倒れ（引当金以内）
3. 前期発生の売掛金の貸倒れ（引当金以上）
4. 前期に貸倒れた債権の回収

それぞれ一つずつ解説していきます。

①当期発生の売掛金の貸倒れ

当期に発生した売掛金が貸倒れたときの仕訳パターンです。
このとき、貸倒損失が発生しますので、借方（左側）に貸倒損失を記入します。

②前期発生の売掛金の貸倒れ（引当金以内）

前期に発生した売掛金が当期に貸倒れたが、貸倒れの金額が設定されている貸倒引当金以内ときの仕訳パターンです。
この時、貸倒引当金が減少しますので、借方（左側）に貸倒引当金を記入します。

③前期発生の売掛金の貸倒れ（引当金以上）

前期に発生した売掛金が当期に貸倒れ、貸倒れの金額が設定されている貸倒引当金以上ときの仕訳パターンです。
この時、貸倒引当金が減少しますので、借方（左側）に貸倒引当金を記入します。
また、貸倒引当金を超えた金額分の貸倒損失が発生していますので、借方（左側）に貸倒損失を記入します。

④前期に貸倒れた債権の回収

前期に貸倒れた債権を当期に回収したときの仕訳パターンです。
この時、償却債権取立益が発生しますので、貸方（右側）に償却債権取立益を記入します。

簿記3級での貸倒れの配点

貸倒れの仕訳問題は、簿記3級試験の第1問に1～2問出題されます。
第1問は45点満点で、1問3点の仕訳問題が15問出題される問題構成です。
したがって、貸倒れの仕訳問題ができるようになることで、3~6点をものにすることができます。

第1問の対策方法については、下記の記事で詳しく解説しています。
目安の時間配分や問題を解く際の注意点などについて触れていますので、ぜひ参考にしてみてください。

貸倒れの問題集

簿記の学習アプリ「Funda簿記」では、貸倒れの仕訳問題を全パターン解くことができます。
問題を出題する設定は下記のとおりです。

• 級：簿記3級
• 出題の方式：カテゴリー別
• 論点の選択：貸倒れ
• 問題の出題数：自由

また、Funda簿記を利用していない方も、LINEから問題を解くことができます。
ぜひ下記より練習問題に挑戦してみてください。

貸倒れの仕訳問題を解く手順

貸倒れの仕訳問題を解く手順は次の3ステップです。

1. 問題文から論点を読み取る
2. 問題文から取引パターンを読み取る
3. 勘定科目を仕訳に記入する

ここからは、貸倒れの仕訳問題を解く手順を１つずつ解説します。

①問題文から論点を読み取る

最初に、問われている「論点」を問題文から読み取ります。
ここでの論点とは、通常の商品売買取引（「商品を仕入れ、代金を現金で支払う」などの取引）と異なる点のことを指します。

下の事例では「貸倒れ処理」と書いてあるため、貸倒れの論点であることが読み取れます。

②問題文から取引パターンを読み取る

次に、問題文から問われている「取引パターン」を読み取ります。
通常の商品売買以外の取引には、基本的に取引パターンが複数あります。（例：「商品の販売時」と「掛代金の回収時」など）

下の事例では「売掛金（当期発生分）」と書いてあるため、当期発生の売掛金の貸倒れのパターンであることが読み取れます。


論点を正しく読み取っても、取引パターンを読み間違えると、もちろん正しい仕訳は導き出せません。
問題文をしっかり読み、取引パターンも正確に把握しましょう。

③勘定科目を仕訳に記入する

最後に、勘定科目と金額を一つずつ仕訳に記入します。
取引パターンから勘定科目が増加しているのか、減少しているのかを判断して、記入しましょう。

貸倒れの仕訳問題の事例

以上を踏まえて、簿記3級の本試験レベルの仕訳問題に挑戦してみましょう。
「解く手順」を参考に、取引の仕訳として正しいものを選択肢から選んでください。

貸倒れの仕訳問題

この問題の正解は選択肢②でした。

貸倒れの仕訳問題の解答解説

「解く手順」に沿ってこの問題の解き方を解説します。

①問題文から論点＝貸倒れを読み取る

最初に、問われている「論点」を問題文から読み取ります。
今回の問題では「貸倒れ処理」と書いてあるため、貸倒れの論点であることが読み取れます。

②問題文から取引パターン＝貸付時利息受取での回収を読み取る

次に、問題文から問われている「取引パターン」を読み取ります。

今回の問題では「売掛金（前期発生分）」かつ回収不能額＞貸倒引当金残高のため、前期発生の売掛金の貸倒れ（引当金以上）（のパターンであることが読み取れます。

【今回の取引パターン】

③勘定科目を仕訳に記入する

最後に、登場する勘定科目を見落とさないように注意しながら、勘定科目と金額を仕訳に記入します。
今回の問題文には３つの勘定科目が登場します。

売掛金の減少

問題文の「売掛金（前期発生分）90,000円について、回収不能となったため貸倒れ処理を行う」より、売掛金が減少しています。
売掛金は貸借対照表の資産に含まれるため、借方（左側）がホームポジションです。
したがって、売掛金の減少を表現するために、売掛金をホームポジションとは逆の貸方（右側）に記入します。

貸倒引当金の取り崩し

問題文の「売掛金（前期発生分）90,000円について、貸倒れ処理を行う」「貸倒引当金の残高は81,000円」より、貸倒引当金を取り崩します。
貸倒引当金は資産の控除科目であるため、貸方（右側）がホームポジションです。
したがって、貸倒引当金の取り崩しを表現するために、貸倒引当金をホームポジションとは逆の借方（左側）に記入します。

貸倒損失の発生

問題文の「売掛金（前期発生分）90,000円について、貸倒れ処理を行う」「貸倒引当金の残高は81,000円」より、貸倒損失が発生します。
貸倒損失は費用に含まれるため、借方（左側）がホームポジションです。
したがって、貸倒損失の発生を表現するために、貸倒損失をホームポジションの借方（左側）に記入します。


以上より正しい仕訳は選択肢②となります。

貸倒れの仕訳問題の解き方まとめ

簿記3級の貸倒れの仕訳問題の解き方を解説してきました。
簿記3級の中で最も基本的な取引の一つであるため、試験を受ける方は必ず解けるようになりましょう。

試験合格レベルになると「仕訳問題を解く手順」に沿って瞬時に解答することができるようになります。
問題を繰り返し練習して、仕訳問題を一瞬で解けるようになりましょう！

簿記の学習アプリ「Funda簿記」では、今回のような本試験レベルの問題が解き放題です。
繰り返し問題を解いて理解度を深めたい方は、ぜひFunda簿記で一緒に勉強しましょう！