適切な経営戦略を立案するためには、判断の基礎となる「現場のデータ」を整理する必要があります。
この現場のデータを整理するために、簿記・会計の知識が不可欠となります。
この記事では、おにぎり屋の事例を元に、データの整理方法や、経営改善のポイントなどを図解を通じてわかりやすく解説します。
まずは簡単なクイズです。
あなたは小さなおにぎり屋を経営しています。
1か月間で、営業利益を構成する変数を10%改善することができます。
利益を最大化させる場合、どの変数を改善するべきでしょうか?
新卒くん
それはもちろん販売数量ですよ!
たくさん売ったら売上が10%上がりますからね!
さて、本当に販売数量でしょうか?
今回は、財務分析トレーニング特集として「正しい経営判断を行うための情報整理」を解説します。
経営者や事業責任者はもちろん、現場で活躍される方にとっても、役に立つ内容となっています。
ぜひ最後までお付き合いください。
目次
- 改善したら最も利益貢献が高い変数は?
- 単価の改善
- 販売数量の改善
- 変動費の改善
- 固定費の改善
- データ整理の重要性
- 経営データを整理する方法は?
- Step1.売上を分解する
- Step2.固変分解をする
- Step3.直接原価計算ベースの損益計算書を作成
- 情報を整理し判断力を高めるための学習方法
- 「Funda簿記」でデータ整理の基礎を学ぼう!
また、工業簿記の試験内容や学習方法については、下記の記事で詳しく解説しています。
工業簿記に苦手意識を持つ方は、ぜひこの記事とあわせてご覧ください。
関連記事
【日商簿記2級】工業簿記の試験内容や難易度、学習方法について解説
boki.funda.jp/blog/article/industrial-bookkeeping-2
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改善したら最も利益貢献が高い変数は?
それでは、まずは事例の紹介です。
今回は、おにぎり屋の事例を元に、ストーリ形式で解説していきます。
おにぎり屋さんの現時点での経営成績を確認します。
今月の利益は0であり、黒字にも赤字にはなっていない状態です。
- 販売単価:200円
- 販売数量:1,800個
- 変動費:@50円
- 固定費:270,000円
上司
うーん。
赤字ではないとはいえ、利益が出ないのも困るよ。
新卒くん
おっしゃる通りです…
次の月は利益を残します。
利益を出すためには経営改善が必要です。
そこで、次の1か月間で実行可能な施策とその効果を整理しました。
その結果、営業利益を構成する変数のうち1つだけ10%改善することが可能と判明しました。
もし、あなたがおにぎり屋さんの事業責任者で、1つだけ数値を10%改善できるとしたら、どこを改善しますか?
最も利益が大きくなる変数はどれかを考えてみてください。
タップで回答を見ることができます
単価
販売数量
変動費
固定費
正解発表
それでは正解の発表です。
利益が最も大きくなる変数は選択肢①の単価でした。
ここから解説に入ります。
それぞれの変数を改善したケース別の経営成績を見ていきましょう。
単価の改善
単価を10%引き上げ220円でおにぎりを販売した場合、利益貢献は36,000円増加します。
単価の改善を行った場合、値上げの金額がそのまま利益増加に貢献することがわかります。
販売数量の改善
販売数量を10%引き上げ1,980個のおにぎりを販売した場合、利益貢献は27,000円増加します。
値上げと同等の売上高になるものの、販売数量の増加に伴って変動費も増加しているため、単価を上げた場合と比べると利益貢献が小さいのが分かります。
変動費の改善
変動費を10%引き下げ1個あたり45円とした場合、利益貢献は9,000円増加します。
変動費を5円だけ改善したとしても、単価の増加ほどの経営改善がされないことが経営成績から読み取れます。
固定費の改善
固定費を10%引き下げた場合、利益貢献は27,000円増加します。
固定費27,000円の改善はそのまま利益に貢献しますが、単価を上げた場合と比べると利益貢献は小さいです。
データ整理の重要性
それぞれ10%の改善施策後のデータを並べると、価格改善が最も利益インパクトが高いことがわかります。
したがって、最も利益が大きくなる変数は選択肢①の単価でした。
このように、きれいなデータが整理されていれば、正しい判断を行うことが可能となります。
ここからは、データを整理する基本的な流れについてを解説します。
経営データを整理する方法は?
経営改善すべき箇所を判断する際は、先程のおにぎり屋さんの事例のように経営データを整理しなければなりません。
ここからは、実務でも使える経営データを整理する基本的な流れについて解説していきます。
Step1.売上を分解する
まずは、ビジネスの収益モデルを知る必要があります。
収益モデルとは、企業がどのように収益を上げるかを示すモデルです。
例えば、サブスクリプション型の動画配信サービスを運営するNetflixを事例に解説します。
ネットフリックスの売上分解式は、単価と顧客数というシンプルな変数です。
ネットフリックスは、約2億人の有料会員が毎月約11ドルを支払っている巨大コンテンツです。
直近3年のデータを見ると、有料会員数が年々増加していることが分かります。
Step2.固変分解をする
売上を分解したら、次はコスト構造を理解する必要があります。
コスト構造とは、企業が提供する製品やサービスにかかる費用がどのように構成されているかを示すものです。
原価の中に、固定費および変動費がどの程度含まれているかを知る必要があります。このように発生する原価を、固定費と変動費に分解することを固変分解といいます。
固変分解については、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事
【図解】変動費と固定費の違いは?工業簿記の基礎をわかりやすく解説
boki.funda.jp/blog/article/cost-structure
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Step3.直接原価計算ベースの損益計算書を作成
売上と費用を分解することができたら、直接原価計算ベースの損益計算書を作成し、利益のシミュレーションを行います。
具体的には、収益と費用の構成要素をExcelやスプレッドシートに反映させ、数字と数値の動きの関係性を可視化します。経営データを整理することで、適切な経営判断を行う土台が整います。
情報を整理し判断力を高めるための学習方法
今回はおにぎり屋を事例に経営判断に必要となるデータ整理についてを解説しました!
正しい判断を行うためには、その前提として、データの整理が必要となります。
ここまでの内容を踏まえて、最後にデータ整理を行うために必要となる知識を身に付けるための勉強方法について紹介します。
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練習問題はシステムが自動で生成するため、その都度判断が求められます。
また、今回の記事ではおにぎり屋さんの事例でしたが、Funda簿記では化粧品ECやホテル事業、WEBサービスなどより実践的な計算問題を用意しています。
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