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特集

2024/02/14

簿記の得意不得意は何で決まるのか?東京理科大学との共同研究を紹介

簿記の得意不得意は何で決まるのか?東京理科大学との共同研究を紹介_サムネイル画像

今回は、「簿記・会計教育」をテーマに、東京理科大学様とFunda簿記で共同研究した内容についてを紹介します。
簿記を学習中の方はもちろん、簿記・会計の教育に携わる方にも有用な内容となっていますので、ぜひ最後まで読んでいただけますと幸いです。

目次

  • 東京理科大学との共同研究の概要
  • アカウンティングコンペティションとは
  • 受賞者・指導教員
  • 受賞内容
  • 研究内容「簿記の得意不得意は何で決まるのか?」
  • 研究目的
  • 研究のステップ
  • 研究結果
  • 学生・先生によるコメント
  • 佐藤由衣さん
  • 杉本秋さん
  • 後藤大翔さん
  • 岩澤先生
  • まとめ

Funda簿記の公式LINE

東京理科大学との共同研究の概要

東京理科大学岩澤ゼミの学生3名が簿記学習アプリ「Funda簿記」の学習データを用いて単元ごとのミス傾向を分析し、効果的な勉強方法を提言した研究内容が第8回アカウンティングコンペティションの実践的研究分野において優秀賞を受賞しました

大手町さんのアイコン

大手町さん

この度は優秀賞の受賞おめでとうございます!

アカウンティングコンペティションとは

アカウンティングコンペティション(通称:アカコン)は、2016年に創設された会計学分野における大学生の研究発表会です。

2023年12月24日に開催された第8回では、同時開催方式(2方式×2分野=4部門で表彰する方式)で行われ、71チーム、29ゼミ、23大学が学術的研究分野と実践的研究分野に分かれて、研究成果を競いました。

出典:第8回(2023)実施要領|アカコンホームページ

受賞者・指導教員

Funda簿記と共同研究し、見事優秀賞を受賞した東京理科大学岩澤ゼミの学生3名を紹介します。

  • 経営学部経営学科3年の後藤大翔さん
  • 経営学部経営学科3年の佐藤由衣さん
  • 経営学部経営学科3年の杉本秋さん

下の写真は、左から杉本さん、佐藤さん、後藤さんです。
3人のインタビューに関しては、後ほど紹介します。

また、学生3名の指導を行ったのは東京理科大学経営学部経営学科の講師である岩澤佳太先生です。

岩澤 佳太(いわさわ けいた)東京理科大学経営学部経営学科 講師
慶應義塾大学商学研究科博士課程終了後、立教大学経営学部助教を経て、2022年より現職。
専門は会計学で、主に「コスト」を切り口に、企業にとって有効なマネジメントとはどのようなものか、そのメカニズムや阻害要因等を定性的かつ定量的なアプローチで研究している。
詳しくはこちら

受賞内容

受賞題目は「簿記の得意不得意は何で決まるのか?~仕訳回答データ5千件超とアンケートの分析より~」です。

今回の共同研究は、簿記学習においてミスが起こる要因や苦手意識を持つ要因について、膨大なデータ分析から検証した研究です。簿記学習アプリ「Funda簿記」の学習データを分析し統計的に検証することで、分野ごとのミス傾向等を分析しました。
膨大なビックデータの分析に基づいて、簿記学習に対して有意義な提言を行ったことなどが高く評価され、全体2位となる優秀賞の受賞に至りました。

研究内容「簿記の得意不得意は何で決まるのか?」

それでは、東京理科大学とFunda簿記で共同研究した内容についてを要約して紹介します。
研究内容はタイトルにもある通り「簿記の得意不得意は何で決まるのか?」です。簿記が嫌いになってしまう要因をデータをもとに解明し、効果的な勉強方法を提言します。

研究目的

はじめに、研究目的を明確にするために、先行研究についてをいくつか見ていきます。

学習方法に関する先行研究によると、学習内容・方法は成績や苦手意識に影響があるとされています。たとえば、簿記の講義では資格試験のために暗記重視の学習になり、面白さを感じにくい点から苦手意識を持つ人が多くいます。

また、学習者の特性に関する先行研究では、学習者の特性は学習量・成績に影響を及ぼすとされています。たとえば、誠実性の高い人は他の人に比べて学習量が多くなります。

簿記教育に関する先行研究においては、結論・暗記ベースの学習で各単元の習熟度の差が生じるとされています。このことから、暗記学習だけでは簿記を完璧に理解することは難しいことが分かります。

最後に、山根氏によると、簿記の各単元と各得意科目やGPAに相関があると結論付けています。簿記の単元ごとに求められる能力が異なるため、各単元で効果的な勉強方法も異なることがこの先行研究から分かります。

上記の先行研究をまとめます。

  • 学習内容・方法は成績や苦手意識に影響あり
  • 学習者の性質は学習量・成績に影響あり
  • 結論・暗記ベースの学習で各単元の習熟度の差が生じる
  • 簿記の各単元と得意科目やGPAとの間に相関あり

以上を踏まえると、簿記嫌いになってしまう理由を説明するためには、「仕訳問題の各単元に着目して、簿記の得意不得意を分ける要因を解明する」ことが賢明です。こちらが本研究の目的となります。

研究のステップ

研究目的を達成するために、以下の3ステップで簿記の得意不得意を分ける要因を解明します。

  1. 仕訳問題にはどのようなミスがあるのか?
  2. 単元ごとにミス傾向の違いがあるのではないか?
  3. 単元ごとの得意不得意には、勉強方法や得意科目が影響しているのではないか?



また、その際に以下の2つのデータを用いて分析していきます。

  • 「Funda簿記」の仕訳問題回答データ
  • 東京理科大学経営学部経営学科1年生144人を対象とした簿記に関するアンケート

具体的なデータ収集について説明します。

簿記学習アプリ「Funda簿記」では、仕訳問題の回答データを収集することができます。そのため、こちらのデータをもとに単元ごとのミスのパターンや傾向についてを分析します。

簿記初学者に対する各単元の得意不得意・学習方法などを調査するために、東京理科大学経営学部経営学科1年生を対象に簿記学習に関するアンケートを取り、学習方法や学習者の性質の影響を抽出します。

STEP1.仕訳問題にはどのようなミスがあるのか?

はじめに、仕訳問題のミスを種類分けするために、簿記学習アプリ「Funda簿記」の3級合格者50名分の仕訳問題回答データを収集します。

整理したデータをミスの種類ごとに分けて、フローチャートでまとめます。
具体例として、数字の桁数を間違えた場合は「ケアレスミス」に分類し、数字は合っているのに勘定科目が違う場合は「単元の理解不足」に分類します。

STEP2.単元ごとにミス傾向の違いがあるのではないか?

STEP1でまとめたミスの種類は、ミスの原因によって4つのミス傾向に区別することができます。

  • ケアレスミス
  • 論点抜け
  • 理解不足
  • 暗記不足

フローチャートを用いたミス分類データを見ると、各単元でミスの割合が異なります。つまり、単元ごとにミスの傾向に違いがあることが分かります。
たとえば、ケアレスミスが多い論点は「貸付・借入」に対して、論点抜けがが1番多い論点は「有形固定資産の購入」です。

また、アンケートの分析結果によると、学生がそれぞれ苦手だと思っている単元には偏りがあるように見えます。
このことから、単元ごとに得意不得意が分かれることが読み取れます。

STEP3.単元ごとの得意不得意には、勉強方法や得意科目が影響しているのではないか?

STEP2の分析によって、単元ごとに固有のミス傾向があることを発見しました。したがって、各単元で求められる勉強方法が異なるのではないかという仮説が立てられます。これを仮説①とします。

今回はわかりやすく、アンケート結果を以下の4つの勉強方法に分類して仮説検証を行います。

  • 外向勉強タイプ
  • 基礎重視勉強タイプ
  • パワー勉強タイプ
  • コツコツ勉強タイプ


次に、STEP1で触れた「簿記学修達成度と高校時代の得意科目との関係性」から、単元によって高校時代の得意科目との関係が異なるのではないかという仮説が立てられます。これを仮説②とします。

上記の仮説を2つの単元に焦点を当てて検証します。

  • 固定資産の改良・修繕
  • 現金過不足

固定資産の改良・修繕の単元は暗記不足によるミスが多い傾向にあります。一方、現金過不足の単元は理解不足によるミスが多い傾向にあります。
この2つの単元で、求められる勉強方法得意科目との関係性が異なるのかを見ていきます。

最初に、仮説①について検証します。
重回帰分析の結果、固定資産の改良・修繕の単元の場合、パワー勉強タイプと基礎重視勉強タイプと関係があることが分かります。

一方、現金過不足の単元の場合は、パワー勉強タイプと関係があることが分かります。

以上の結果から、単元ごとに求められる勉強方法は異なることが証明できます。

次に、仮説②について見ていきます。
t検定の結果、固定資産の改良・修繕の単元は、数学の得意度と関係があることが分かります。

一方、現金過不足の単元は、数学の得意度との関係は見られませんでした。

以上の結果から、単元によって高校時代の得意科目との関係が異なることが証明できます。

仮説①と仮説②の検証の結果、各単元で有用な勉強方法や能力(得意科目)との関係性が異なることが分かりました。

研究結果

最後に本研究の結果をまとめます。
研究のステップ1~3によって、以下のことが分かりました。

  • 単元ごとに固有のミス傾向がある
  • 単元ごとに有用な勉強方法や能力(得意科目)との関係性は異なる

つまり、簿記の学習では、単元や問題ごとに適した勉強方法を考えるべきであり、また能力によって効率的な勉強方法が異なるため、自分に合った勉強方法を行うことが大切になります

学生・先生によるコメント

ここからは、Funda簿記と共同研究を行った東京理科大学岩澤ゼミの学生3人と指導教員である岩澤先生にお話を伺います。

大手町さんのアイコン

大手町さん

今回の研究の取り組みや満足度、簿記の勉強をしている方へのアドバイスなどについてを色々聞いていきます。

佐藤由衣さん

はじめに、佐藤由衣さんにお話を伺っていきます。

大手町さんのアイコン

大手町さん

まずはお疲れさまでした!
今回の研究の取り組みに対してなにか苦労した点などはありますか?

佐藤由衣さんのアイコン

佐藤由衣さん

1番苦労したのは方向性を決めたことです。
研究の3ステップや最後の結論をどのように持って行くかについて、先生のお話を色々伺ったりゼミ生の間でも話し合ったりして苦労した覚えがあります。

大手町さんのアイコン

大手町さん

ありがとうございます!
今回の研究を終えて、簿記の勉強をしている方へアドバイスがあればぜひお願いします。

佐藤由衣さんのアイコン

佐藤由衣さん

仕訳問題を解いて間違えたり、苦手だと感じたりしても、簿記を嫌いにならないでください。間違えた箇所を見直したり、もう一度理論に戻って復習を行ったりなどしたら、仕訳問題を解けるようになると思います。

大手町さんのアイコン

大手町さん

素晴らしいですね!
最後に、自分の中での満足度について教えてください。

佐藤由衣さんのアイコン

佐藤由衣さん

色々大変な部分はありましたし最優秀賞は取れませんでしたけど、ゼミ生との分析はすごく楽しかったので、満足度は120点です!

以上、佐藤由衣さんのコメントでした。
ありがとうございました!

杉本秋さん

続いて、杉本秋さんにお話を伺っていきます。

大手町さんのアイコン

大手町さん

杉本さんよろしくお願いします!
今回の研究の取り組みで1番力を入れた点などはありますか?

杉本秋さんのアイコン

杉本秋さん

1番力を入れた点は、フローチャートを作成してミスの傾向を分類ごとにまとめたことです。
どれがどのミスに分類するのかを判断する基準を作って、1つ1つミスを当てはめていく作業は大変でした。ただ、それと同時に、数字のデータに基づいて分析を行う重要性を実感しました。

大手町さんのアイコン

大手町さん

素晴らしいですね!
いま簿記の勉強をしている方へなにかアドバイスがあればぜひお願いします。

杉本秋さんのアイコン

杉本秋さん

問題を間違えた際に、ただ間違えたで終わらせるのではなく、間違えた理由を自分の中で分析しながら勉強した方が効果的だと思います。

大手町さんのアイコン

大手町さん

なるほど、ありがとうございます!
最後に、今回の研究に対する満足度について教えてください。

杉本秋さんのアイコン

杉本秋さん

最優秀賞を逃した点と、時間があれば人ごとのミス傾向についても分析したかった点を踏まえて、満足度は80点くらいです。

以上、杉本秋さんでした!
素晴らしい意見ありがとうございます。

後藤大翔さん

続いて、後藤大翔さんにお話を伺っていきます。

大手町さんのアイコン

大手町さん

この度は優秀賞の受賞おめでとうございます!
今回の研究の取り組みに対してやりがいを感じた点などはありますか?

後藤大翔さんのアイコン

後藤大翔さん

単元ごとにミス傾向の違いがあることを仕訳の回答データから統計的に確かめられた点は、研究をしていて非常にやりがいを感じました。

大手町さんのアイコン

大手町さん

ありがとうございます!
簿記の勉強をしている方へなにかアドバイスがあればぜひお願いします。

後藤大翔さんのアイコン

後藤大翔さん

間違えた問題に対して、なぜミスが起きたのかを分析して学習を進めていくことを大事にしてほしいです。

大手町さんのアイコン

大手町さん

ありがとうございます!
最後に、今回の満足度について教えてください。

後藤大翔さんのアイコン

後藤大翔さん

研究した成果をプレゼンする機会を経験できたのはすごく充実していたので、90点を自分につけたいと思います。

以上、後藤大翔さんのインタビューでした。
学生の皆さん素晴らしいコメントありがとうございました!

岩澤先生

最後に、指導教員である岩澤先生にもお話を伺います。

大手町さんのアイコン

大手町さん

貴重なお時間を割いて頂きありがとうございます。
今回の研究を通しての感想などがあればお聞きしたいです。

岩澤先生のアイコン

岩澤先生

データをもとに分野ごとのミス傾向を分析する研究は、教員としても興味深い内容でした。各単元でミスの傾向に違いがあるというのは、私の感覚としても違う部分があったので、学びが多かったです。

大手町さんのアイコン

大手町さん

私も研究テーマは非常に斬新な内容だったと思います。
今回の研究から気づきや示唆などがあればぜひお伺いしたいです。

岩澤先生のアイコン

岩澤先生

単元ごとに学習内容の特徴が異なるので、簿記は総合力が求められる資格であると改めて思いました。
たとえば、クレジット売掛金のミスではケアレスミスや計算ミスがなく、ほとんどが論点抜けです。論点さえ理解できれば解ける分野ですので、仕訳問題をたくさん解くことにはあまり意味がないです。
簿記の内容は論点ごとに勉強方法が異なるので、今回の研究は教える側からしても示唆がある内容でした。

大手町さんのアイコン

大手町さん

大変参考になるコメントありがとうございます。
大学の教員も論点ごとの教え方をまとめたマニュアルなどがあれば、より学生に伝えやすいですね。
本日は貴重なお時間を割いていただき、ありがとうございました!

まとめ

今回は、東京理科大学岩澤ゼミとFunda簿記で共同研究した内容についてを紹介しました。
本研究を通して、簿記の単元ごとに適した勉強方法が異なることが分かりました。岩澤ゼミの学生3名と指導教員である岩澤先生、お忙しいなかインタビューにご協力してくださり、本当にありがとうございました。

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トライアルなども大歓迎です。ぜひ気軽にご連絡ください。
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この記事を書いた人

著者:大手町のランダムウォーカー

大手町のランダムウォーカー

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トータルSNSフォロワー20万人の会計インフルエンサー。著書の『世界一楽しい決算書の読み方』はシリーズ累計30万部突破。

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