この記事では、代表的なマーケティングのフレームワーク「4P」を使って、喫茶店の収益性の分析の事例を紹介します。
まずは下記の画像をご覧ください。
現時点では全くわからなくても問題ありません。この記事が読み終わる頃には、それぞれの喫茶店ビジネスの戦略の違いが読み取れるようになっているはずです。
ぜひ最後までお付き合いください。
目次
- マーケティングの4P分析とは?
- Product:製品
- Price:価格
- Place:場所
- Promotion:プロモーション
- 会計クイズ:喫茶店業界
- 登場企業の紹介
- 会計クイズ:問題
- 会計クイズ:ヒント
- 会計クイズ:正解発表
- 価格の違いによる財務数値への影響は?
- 4PのPrice
- 単価と粗利の関係
- 両者の損益計算書
- 4P分析でわかる両者の経営戦略の違い
- Placeの違い
- Productの違い
- 会計クイズ:まとめ
マーケティングの4P分析とは?
4P分析とは、「Product:製品」「Price:価格」「Place:場所」「Promotion:プロモーション」の4つのPを用いて、具体的なマーケティング施策を考えるフレームワークです。企業のマーケティング戦略が違えば、決算書の形も異なります。
はじめに、4つのPの用語について詳しく解説します。
Product:製品
Productには、製品そのものの価値に加えて、ブランド価値やアフターサービスなどの付随価値があります。
たとえば、iPhoneには基本的なスマートフォンとしての機能だけでなく、AppleのロゴのブランドやApple Storeを利用できるなどの価値があります。
Price:価格
Priceには、商品の価格だけでなく、支払いに関する要素である支払い方法や支払い条件なども含まれます。
たとえば、Netflixの場合、映画やドラマを低価格で見ることができます。サブスクリプションモデルのため、クレジットカード等で毎月定額料金を支払うのが基本です。
Place:場所
Placeは、商品を購入できる場所だけでなく、製品を製造して顧客に販売するまでの流通も含まれます。
たとえば、セブンイレブンは多店舗展開をしており、商品をすぐに購入したい層のニーズを満たしています。また、ドミナント戦略を取ることで、配送効率も上げています。
Promotion:プロモーション
Promotionには、広告、販売促進、人的販売、PRなどが含まれます。企業はどんな内容を、どこでどうやって伝えるかを考える必要があります。
たとえば、ライザップは独特な音楽とサービスの利用前後の効果が一目でわかる構成のテレビCMで注目を集め、知名度の向上につながりました。
会計クイズ:喫茶店業界
それでは、上記の内容を踏まえて会計クイズに挑戦してみましょう。会計クイズとは、企業のビジネスモデルと財務数値を結びつけるクイズです。
今回扱うテーマは喫茶店業界です。
登場企業の紹介
最初に登場企業を紹介します。
- ドトール・日レスHD
- 銀座ルノアール
両者はどちらも喫茶店ビジネスを展開していますが、提供しているコーヒーの値段が異なります。
会計クイズ:問題
以上を踏まえて、会計クイズです。
コーヒー1杯約700円で提供する高単価の喫茶店「銀座ルノアール」の損益計算書はどちらでしょう?
コーヒーの単価が原価と利益にどう影響するのかを予想して考えてみてください。
タップで回答を見ることができます
選択肢①
選択肢②
損益計算書の基本について先に学びたい方は、下記の記事がお勧めです。
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会計クイズ:ヒント
全く分からない人向けにヒントです。
粗利とは、商品やサービスを販売する際に発生する原価を差し引いた利益のことをいいます。商品やサービスの強さを表すことから、企業がビジネスを行う上で非常に重要な概念となります。
それでは、正解発表です。
会計クイズ:正解発表
正解は、選択肢①が銀座ルノアールでした。
みなさん正解できましたか?
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価格の違いによる財務数値への影響は?
それでは、ここから詳しい解説に入ります。
4PのPrice
まずは両社のPrice、つまり価格からみていきましょう。
ドトールコーヒーでは、ブレンドコーヒーを1杯250円で提供しています。
一方、ルノアールは店舗によって値段が異なりますが、だいたい1杯700円前後でコーヒーを提供しています。
従って、両者には大きな価格の差が存在することがわかります。
単価と粗利の関係
仮に原価が同じであった場合、商品の単価が小さいと粗利も小さくなります。
反対に、商品の単価が高い場合は、その分だけ粗利も大きくなります。
両者の損益計算書
単価と粗利の関係性を踏まえたうえで、両者の損益計算書を見てみましょう。
コーヒー1杯700円で提供している銀座ルノアールは、商品の価格が高いため粗利が大きくなります。一方、コーヒー1杯250円で提供しているドトール・日レスHDは、商品の価格が安いため粗利が小さくなります。
新卒くん
なぜ、コーヒーの値段がこんなに違うんですか?
4P分析でわかる両者の経営戦略の違い
では、なぜ両者のコーヒーの値段がこれほど違うのでしょうか?
冒頭で説明した4P分析のフレームワークに当てはめて解説していきます。
Placeの違い
ドトールとルノアールでは、注文方法が異なります。
ドトールでは、入口付近にあるカウンターでコーヒーを注文し、会計を済ませたらコーヒーを受け取って席に着く形式です。また、テイクアウトにも対応しているため、お客さんの回転率は非常に高いです。
一方、ルノアールでは、お店に入ったらまずは席に着き、店員を呼んでコーヒーを注文します。食事が終わったら伝票をレジに持って行き、会計を済ませる形式です。テイクアウトはほとんどなく、お客さんの回転率は低めです。
両者の回転率の違いは売上高に反映されます。
銀座ルノアールとドトール日レスHDの、実数ベースでの損益計算書の比較です。
単価が高いため、銀座ルノアールの方が粗利率は高かったですが、稼ぎ出す粗利額はドトール日レスHDの方が圧倒的に大きいことがわかります。
Productの違い
また、ドトールとルノアールは店内の設計にも違いがあります。
ドトールは背もたれがないイスを採用するなど、テーブルのスペースが小さめに設計されているため、お客さんの滞在時間は比較的短いです。
これは、ドトールが低価格の商品で回転率を高める戦略を取っていることが要因となっています。
一方のルノアールは、高級感のあるイスを採用しており、テーブルのスペースが広めに設計されています。また、3時間までWi-Fiが利用できたりと快適な空間を提供しているため、お客さんの滞在時間は比較的長くなります。
ルノアールが顧客の長期滞在を前提としている理由は、顧客に快適な空間を提供する代わりに、その代金も商品の中に組み込む戦略を取っているためです。
コーヒーが1杯700円もするのは、商品の値段にコーヒーだけでなく、快適な空間というサービスも付いていたからです。
会計クイズ:まとめ
最後にまとめです。
今回は喫茶店業界というテーマで、喫茶店ビジネスを展開する2社のビジネスモデルを比較しました。
コーヒー1杯の値段の違いから、両者の経営戦略が全く異なることが4P分析をすることによって読み取ることができます。
以上、今回のクイズの正解は、選択肢①が銀座ルノアールでした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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<この分析記事の出典データ>
株式会社銀座ルノアール IR
株式会社ドトール・日レスホールディングス IR
また、ここまでの内容を踏まえて簡単な確認テストにも挑戦してみてください。
下記のより挑戦することができます。
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