前払費用は、決算整理仕訳でよく出題される経過勘定科目です。
この記事では、前払費用の取引の全体像や関連する勘定科目、具体的な仕訳事例についてを簿記初心者向けにわかりやすく解説します。前払費用の知識を身につけて、簿記のスキルを向上させましょう。
目次
- 前払費用とは?
- 高校生でもわかる前払費用の解説
- 前払費用の確認問題
- 正解発表
- 前払費用と前払金の違いは?
- 前払金とは
- 前払費用の取引の全体像は?
- 費用の発生
- 前払費用による決算整理
- 再振替仕訳
- 前払費用の仕訳事例
- 1年分の費用を前払いした時
- 決算整理手続きを行うとき
- 再振替仕訳を行うとき
- 前払費用の仕訳問題に挑戦
- 前払費用の帳簿上の動き
- 費用の発生(契約開始)時
- 決算整理時
- 翌期首の再振替仕訳時
- 前払費用のまとめ
前払費用とは?
前払費用(まえばらいひよう)とは、継続したサービスを受ける場合に、まだ提供を受けていないサービスに対して前払いした費用を計上する際に用いる勘定科目です。決算時に当期の費用を調整する際に用いる勘定科目です。
前払費用は、後でサービスの提供を受ける権利が生じるため、簿記上では資産の勘定科目となります。
前払費用は、決算のタイミングでサービスを受けていないにも関わらず、既に支払いをしている場合に使用します。
具体例として、1年単位でまとめて前払いする家賃や保険料などが挙げられます。
高校生でもわかる前払費用の解説
ビジネス経験の無い学生の方向けに、身近な事例で前払費用を解説します。
今回はAmazon Prime Videoを例に前払費用の考え方について説明します。
Amazon Prime Videoは、映画やドラマを視聴できるサービスで、毎年定額の料金を支払うことで利用できます。
例えば、4月1日にAmazon Prime Videoの年間料金を支払った場合を考えてみましょう。この時点では、1年分の利用料金を全額支払っていますが、実際には映画やドラマを視聴していない状態です。
その後12月31日になると、今年のサービスを9ヶ月分享受しましたが、来年の3ヶ月分もまだ利用できる状況です。しかし、今年の費用は実際には9ヶ月分であるため、3ヶ月分の費用を来年に持ち越す調整が必要になります。この調整を行う際に、前払費用の勘定科目が使用されます。
前払費用の勘定科目を用いて、3ヶ月分の費用を来年に持ち越すことで、今年と来年の費用を適切に計上することができます。このような仕組みにより、損益計算書の費用を正確に計上することができます。
前払費用の確認問題
それでは、ここまでの内容を踏まえて、前払費用に関する問題です。
前払費用が計上される時は?
タップで回答を見ることができます
1年分の費用を前払いした時
手付金を支払った時
決算時期
使用目的が不明の金額を前払いした時
正解発表
正解は、選択肢③決算時期です。
前払費用は、決算のタイミングでサービスを受けていないにも関わらず、既に支払いをしている場合に使用します。
前払費用と前払金の違いは?
前払費用と間違えやすい勘定科目に前払金が存在します。
ここからは、前払費用と前払金の違いについて説明します。
前払金とは
前払金(まえばらいきん)とは、商品等を購入する際に、事前に代金の一部を手付金や内金として現金で支払うときに使用される勘定科目です。
前払費用と前払金には「商品・サービスを受け取る前に代金を支払った」という共通点がありますが、大きく2つの違いがあります。
1つ目は、仕訳で登場するタイミングの違いです。
前払費用は、期末の決算整理仕訳で登場します。
一方で、前払金は、期中の取引を仕訳にする際に登場します。
2つ目は、商品・サービスを受け取るモノの違いです。
前払費用は、継続的なサービスを受け取る前に代金を支払っている場合に、費用の金額を適切な数値に修正するために使用します。
一方で、前払金は、商品や単発(1回で売り切り)のサービスを受け取る前に代金を支払った場合に使用します。
前払金の仕訳方法についてはこちら
前払費用の取引の全体像は?
前払費用を用いた取引の流れの全体像を紹介します。
費用の発生
まず、1年分の費用を支払います。
この時、代金が減少し、支払った費用名の勘定科目が発生します。
前払費用による決算整理
次に、決算時に前払費用による決算整理を行います。
これによって、費用を取り消すとともに、前払費用が増加します。
再振替仕訳
その後、翌期に再振替仕訳を行います。
結果として、費用を計上すると同時に、前払費用が減少します。
前払費用の仕訳事例
簿記上の取引事例を通じて、前払費用の仕訳方法を解説します。
1年分の費用を前払いした時
「当社は不動産会社から月額10万円で建物を賃借し、1月1日に1年分の家賃120万円を前払いした。」という取引の事例を使い、1年分の費用を前払いした時の仕訳の流れを順に説明します。
前払時:現金の減少
契約の時点で家賃を1年分前払いしています。支払いは現金のため「現金」の勘定科目が減少します。
そのため、貸方(右側)に現金(資産)120万円を記入します。
前払時:支払家賃の発生
1年分支払っているとはいえ、建物を賃借した場合には「支払家賃」が発生します。
したがって、借方(左側)に支払家賃(費用)120万円を記入します。
決算整理手続きを行うとき
「決算日(3月31日)となったため決算整理手続きを行なう。残高試算表の支払家賃は、1月1日に支払った1年分の家賃額が計上されている。」という取引の事例を使い、決算整理手続きを行う際の仕訳の流れを順に説明します。
決算整理仕訳時:支払家賃の取り消し
12か月分の支払家賃を、当期の経過期間分(1/1~3/31)に修正します。したがって、支払家賃120万円から翌期の期間分(4/1~12/31)の90万円を取り消します。
そのため、貸方(右側)に支払家賃(費用)90万円を記入します。
決算整理仕訳時:前払費用の増加
翌期分の費用を取り消すと同時に、前払費用に振り替えます。前払費用は翌期にサービスを受ける権利を有するため、資産として扱います。
したがって、借方(左側)に前払費用(資産)90万円を記入します。
再振替仕訳を行うとき
「翌期首(4月1日)となったため再振替仕訳を行なう。前期の資産に計上した前払費用の再振替仕訳を行なう。」という取引の事例を使い、再振替仕訳を行う際の仕訳の流れを順に説明します。
再振替仕訳時:前払費用の減少
次の期が始まったら、まずは経過勘定科目の再振替仕訳を行ないます。前期に計上されていた前払費用を2期目の費用額(9か月分)だけ減少させます。
そのため、貸方(右側)に前払費用(資産)90万円を記入します。
再振替仕訳時:支払家賃の発生
前払費用を減少させた額だけ、支払家賃の金額を費用として計上します。
したがって、借方(左側)に支払家賃(費用)90万円を記入します。
前払費用の仕訳問題に挑戦
ここまでの内容で、前払費用の仕訳の流れを理解していただけたかと思います。
早速、下記のLINEアプリから練習問題に挑戦してみてください。
前払費用の帳簿上の動き
最後に、前払費用の帳簿上での動きを解説します。
帳簿上の動きは、簿記を理解する際に、非常に重要となるため、必ず押さえておきましょう。
費用の発生(契約開始)時
家賃を1年分前払いしているため、支払家賃が発生します。
決算整理時
決算整理を行う際は、当期の経過期間分(1/1~3/31)に修正するため、翌期の9か月分の支払家賃を前払家賃に振り替えます。
翌期首の再振替仕訳時
翌期になった時は、前期に資産計上した前払費用の再振替仕訳を行います。これにより、翌期分の費用を適切に計上することができます。
前払費用のまとめ
今回は簿記3級に登場する「前払費用」という勘定科目の意味や取引事例を解説しました。
前払費用と前払金は間違えやすいため注意しましょう。
また、前払費用の取引の流れは仕訳問題で頻出のため覚えておく必要があります。
試験問題でも登場する可能性の高い勘定科目であるため、しっかり理解しておきましょう!
また、決算書や企業のビジネスについて少しでも興味を持っていただけましたら幸いです。
基礎からしっかり学びたい方は、ぜひ学習アプリ「Funda簿記」をご覧ください。
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