CVP分析とは?
CVP分析とは、どれくらいの売上があれば利益を出せるかを調べる分析手法です。短期の利益計画を策定する際に用いられます。
CVPは「費用(Cost)- 収益(Volume)- 利益(Profit)」の頭文字を取ったものです。CVP分析を使って、企業は売上や費用と利益の関係を理解し、より良い経営判断を行うことができます。
これだけでは、イメージが付かないと思うので、早速簡単な経営のケーススタディを見ていきましょう。
あなたには、おにぎり屋を運営している友人がいます。
「経営に関するアドバイスをしてほしい…。何個売れば黒字になるのかもわからない」と相談されました。
あなたは何と答えますか?
最初は全くわからなくても問題ありません。この記事が読み終わる頃には、考え方が身に付いているはずです。
この記事では、マーケターの方が使いこなせなければならない会計・簿記の知識として「CVP分析」を解説します。
目次
- CVP分析とは?
- CVP分析の目的
- CVP分析に必要な情報
- CVP分析の流れは?
- ステップ1: 固定費と変動費を整理
- ステップ2: 貢献利益(限界利益)を把握する
- ステップ3: 損益分岐点売上高を求める
- ステップ4: 目標利益を達成するための売上を計算する
- CVP分析の事例は?
- 固定費と変動費の整理
- 貢献利益の計算
- 損益分岐点販売量の計算
- 経営戦略の立案
- CVP分析を身に付けるには?
- 類似問題にも挑戦してみよう
- 実際に手を動かしてみよう
なお、原価計算を基礎からしっかり学びたい方は、まずは先に下記のトレーニングから始めてみてください。
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また、工業簿記の試験内容や学習方法については、下記の記事で詳しく解説しています。
工業簿記に苦手意識を持つ方は、ぜひこの記事とあわせてご覧ください。
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CVP分析の目的
CVP分析の目的は、目標利益を達成するための戦略を立てることです。
そのためには、まずCVP分析を使い損益分岐点を特定する必要があります。損益分岐点とは、利益がゼロになる売上のポイントです。これを求めることで、企業がどれくらいの売上があれば利益を出せるかを知ることができます。
CVP分析に必要な情報
CVP分析を行うためには、コストデータと販売データが必要となります。 これらの情報を元に、CVP分析を行うことで、どれくらいの売上があれば利益が出せるか(損益分岐点)や、目標利益を達成するためにどのような戦略が必要かを把握することができます。
ここからは、CVP分析に必要となるデータについてを、1つずつ説明していいきます。
変動費
変動費とは、売上に応じて変わる費用です。例えば、原材料費や運送費などがあります。変動費は、商品やサービスを1つ提供するためにかかる費用で、売上が増えると増える分だけ費用がかかります。
固定費
固定費とは、売上に関係なく一定の金額がかかる費用です。例えば、家賃や給与などがあります。固定費は、売上が増えても減っても変わらない費用です。
販売価格
商品やサービスを売るときの価格です。企業がどれくらいの価格で商品やサービスを販売しているかを把握することが重要です。
販売量
企業がどれくらいの量の商品やサービスを販売しているかです。売上量は、利益を計算する際に必要な情報です。
CVP分析の流れは?
以下のステップを踏むことで、CVP分析を使って企業の利益を最大化する方法を見つけることができます。
ステップ1: 固定費と変動費を整理
まず、企業の費用を「固定費」と「変動費」に分けます。 固定費と変動費を分けることで、企業の費用構造がどのようになっているかを把握できます。
販売数量に応じて発生する費用を正確に特定することができ、その結果、利益を正確に計算することができます。これは、企業の経営判断において重要な情報になります。
ステップ2: 貢献利益(限界利益)を把握する
商品の価格データと変動費を元に、貢献利益を把握します。
貢献利益とは、1つの商品やサービスを販売したときに得られる利益のことです。貢献利益を把握することで、商品やサービスの収益性を評価できます。これにより、企業はどの商品やサービスに力を入れるべきか、判断しやすくなります。
貢献利益は、限界利益と表現されることもありますが、いずれも同様の意味と捉えて問題ありません。
ステップ3: 損益分岐点売上高を求める
損益分岐点とは、利益がゼロになる売上のポイントです。言い換えると、変動費と固定費を合わせた総費用の金額と、売上高が一致する地点を表します。
損益分岐点売上高を求めるためには、固定費を貢献利益の比率で割ります。これにより、利益がゼロになる売上高を計算できます。
ステップ4: 目標利益を達成するための売上を計算する
目標利益を達成するために必要な売上を計算することで、企業は販売戦略を立てることができます。
CVP分析の事例は?
さて、CVP分析の基礎を解説したところで、改めて冒頭のケーススタディに戻ります。
あなたには、おにぎり屋を運営している友人がいます。「経営に関するアドバイスをしてほしい…。何個売れば黒字になるのかもわからない」と相談されました。
おにぎり屋の経営データは下記となります。
販売データ
- 単価:おにぎり1個 200円
- 販売量:1か月1,500個
変動費
- 材料費: 1個あたり40円
- 包装材費用: 1個あたり5円
- 消耗品費用(おしぼり、箸など): 1個あたり5円
固定費
- 家賃: 月額100,000円
- 人件費: 月額130,000円 (オーナー自身の労働やスタッフの給与)
- 水道光熱費: 月額20,000円
- 会計事務所費用: 月額10,000円
- その他経費: 月額10,000円 (オフィス消耗品、通信費、電話代など)
あなたはなんと答えますか?
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1,500個
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1,700個
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それでは、販売戦略を考えるためのデータ整理を行っていきましょう。
固定費と変動費の整理
まずは、販売データとコスト構造の整理を行います。上記のデータを整理すると下記のようになります。
- 単価:200円
- 変動費:50円
- 固定費:270,000円
貢献利益の計算
次は、上記のデータを元に、貢献利益を計算します。貢献利益は、1単位の商品を売ることで得られる利益です。単価から変動費を引いて計算します。
- 貢献利益 = 単価 - 変動費合計
- 貢献利益 = 200円 - (40円 + 5円 + 5円) = 150円
損益分岐点販売量の計算
貢献利益がわかったら、次は損益分岐点販売量を計算します。損益分岐点販売量とは、総費用(変動費と固定費)と売上高がちょうど釣り合って利益がゼロになる販売量のことを指します。
ここまでデータを整理すると、何個販売すれば赤字にならないかを簡単に計算することが可能です。
- 損益分岐点 = 固定費合計 ÷ 貢献利益
- 1,800個 = 270,000円 ÷ 150円
経営戦略の立案
以上の計算から、赤字を回避するためには、最低1,800個のおにぎりを販売する必要があることがわかります。
- 現在の販売量:1,500個
- 損益分岐点販売量:1,800個
- 追加で販売すべき量:300個
ここまでデータを揃えることで、具体的な経営戦略を考えるために必要な土台が整います。
CVP分析を身に付けるには?
CVP分析は、企業の収益性やコスト構造を理解し、適切な経営判断を行うための重要なツールです。本記事では、マーケティング担当者向けに初心者でもわかるCVP分析の概要や計算方法、固定費・変動費の分解、限界利益の把握、損益分岐点の求め方、目標利益を達成するための売上高の計算について分かりやすく解説しています。
これらの知識を習得することで、ビジネスシーンで正確な判断を行うための情報整理が可能となります。
類似問題にも挑戦してみよう
今回のようなビジネス事例を通じて、分析力を高めたい方は、下記の問題にも挑戦してみてください。
正解と解説はこちらの記事をご確認ください。
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実際に手を動かしてみよう
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