ビジネスモデルと決算書の関係は?
ビジネスモデルとは、企業がどのように価値を生み出し、その価値を顧客に提供し、収益を得るための仕組みのことです。この企業の儲けの仕組みを表すビジネスモデルは、決算書から読み取ることができます。
代表的な事例として、コスト構造があります。コスト構造は、そのビジネスモデルを実行するために必要な費用のことを指します。
異なるビジネスモデルは異なるコスト構造を持っています。
例えば、化粧品メーカーでも、企業によってビジネスモデルは全く異なります。
資生堂のビジネスモデルを知っていれば、どのようなコスト構造になるのかを決算書からすぐに読み取ることが可能です。
この記事では、ビジネスモデルと、決算書から読み取るコスト構造の関係についてを、化粧品メーカーの事例と共に紹介します。
目次
- ビジネスモデルと決算書の関係は?
- 売上総利益と営業利益の違い
- 販管費とは
- 会計クイズ:化粧品業界
- 登場企業の紹介
- 会計クイズ:問題
- 会計クイズ:正解の発表
- 会計クイズ:解説
- 化粧品業界の特徴
- 3社の相違点
- 資生堂のビジネスモデル
- 資生堂の付加価値
- 資生堂の販管費
- ポーラ・オルビスHDのビジネスモデル
- 委託販売制度とは
- ポーラ・オルビスHDの販管費
- ファンケルのビジネスモデル
- 化粧品での通信販売を成功させた理由
- ファンケルの販管費
- 会計クイズ:まとめ
売上総利益と営業利益の違い
決算書からビジネスモデルを読み取るためには、まずは利益の理解が重要です。
今回は、下記の2つの利益を解説します。
- 売上総利益
- 営業利益
売上から売上原価を差し引いた売上総利益は、商品の原価が反映されているため、商品・サービスの強さを表します。
一方、売上から売上原価と販管費を差し引いた営業利益は、商品の原価だけでなく消費者に届けるまでの費用が反映されているため、ビジネスモデルの強さを表します。
販管費とは
販管費とは、商品を販売するために間接的に発生した費用です。
たとえば、本を売る会社が本を販売するために、広告宣伝をしたり、本を販売するための店舗を借りたり、店舗で販売する従業員を採用したりする必要があります。この商品を販売するために発生する費用が販管費に分類されます。
つまり、コスト構造を見ることで、企業がどのような戦略で商品を売っているかを知ることができます。仮に同じ商品だとしても企業の売り方によって、コスト構造が大きく異なります。
たとえば、商品を販売するために営業マンを大量に採用している会社の場合は、販管費に人件費が多額に計上されます。一方、商品を販売するために広告を大量に出稿している会社の場合は、販管費に広告費が多額に計上されます。
会計クイズ:化粧品業界
それでは、上記の内容を踏まえて会計クイズに挑戦してみましょう。
会計クイズとは、企業のビジネスモデルと財務数値を結びつけるクイズです。
今回扱うテーマは化粧品業界です。
化粧品の販売戦略がコスト構造にどう影響するのかに注目して、会計クイズを解いてみてください。
登場企業の紹介
最初に今回の登場企業の紹介です。
- ファンケル
- 資生堂
- ポーラ・オルビスHD
この3社は化粧品を製造販売している点で共通していますが、販売チャネルがそれぞれ異なります。
ファンケル
ファンケルは、自社化粧品を販売する通販サイト「FANCL Online」を運営している会社です。
資生堂
資生堂は、百貨店の1階などに店舗を構え、美容部員によるコンサルティングを通して化粧品を販売する会社です。
ポーラ・オルビスHD
ポーラ・オルビスホールディングスは、化粧品の訪問販売が中心の会社です。委託販売契約を結んだ販売パートナーがカウンセリングをしながら、顧客にあった化粧品を提案します。
会計クイズ:問題
以上を踏まえて、会計クイズです。
化粧品を店頭で販売する資生堂の損益計算書はどれでしょう?
化粧品を販売するための戦略が販管費にどう影響されるのかを予想して考えてみてください。
タップで回答を見ることができます
選択肢①
選択肢②
選択肢③
損益計算書の読み方についてを基礎から詳しく学びたい方は、まずは下記の記事をご覧ください。
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会計クイズ:正解の発表
正解は、選択肢①が資生堂でした。
みなさんわかりましたか?
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会計クイズ:解説
それでは、ここから詳しい解説に入ります。
化粧品業界の特徴
化粧品は原材料の大部分が水であるため、化粧品業界の売上原価はどこも低い特徴があります。
3社の相違点
一方で、販管費を見てみると、それぞれ主要な項目が異なります。
これは、各社のビジネスモデルの違いが販管費の違いに影響しているためです。
ビジネスモデルが異なればコストのかけ方も異なります。
ここからは、具体的に各社のビジネスモデルについて詳しく解説していきます。
資生堂のビジネスモデル
まずは、資生堂のビジネスモデルから見ていきます。
資生堂は店頭販売がメインの会社です。
資生堂が化粧品事業に乗り出した戦前の化粧品業界では、値引きが当たり前の乱売合戦の状態でした。そのため、メーカー・問屋ともに疲弊した時代で倒産も相次ぎました。
そこで、資生堂はチェーンストア契約を結んだ店舗のみに卸すことで、値引き販売する小売店を排除しました。これによって、資生堂は自社商品を定価販売することができるようになりました。
新卒くん
競合が化粧品を定価より安く売る中、資生堂はどうやって定価販売で化粧品を販売したのでしょうか?
資生堂の付加価値
化粧品を定価販売しても売れる状態を作り上げるため、資生堂は“美容部員によるコンサル”という方法を取りました。
化粧品をただ販売するのではなく、付加価値をつけることによって化粧品を定価で買ってもらえるようにしたのです。
資生堂の販管費
店頭に美容部員を配置して顧客にあった化粧品を販売するビジネスモデルのため、人件費が多く発生します。
ポーラ・オルビスHDのビジネスモデル
次に、訪問販売がメインのポーラ・オルビスホールディングスを見ていきます。
ポーラは委託販売契約を結んだ販売員「ビューティーディレクター」が顧客のもとに訪問して化粧品を提案・販売する委託販売制度を採用しています。
委託販売制度とは
委託販売制度とは、委託販売契約を結んだ店舗オーナーやビューティーディレクターに対して、化粧品の販売量に応じて販売手数料を支払う仕組みです。
ポーラ・オルビスHDの販管費
委託販売制度を採用しているため、ビューティーディレクターや店舗オーナーへの販売手数料が販管費に多く計上されます。
ファンケルのビジネスモデル
最後に、通信販売がメインのファンケルを見ていきます。
化粧品での通信販売を成功させた理由
ファンケルが登場したのは化粧品による健康被害が問題となっていた時代であり、「安全」を求める消費者のニーズと合致し“通販のファンケル”が成功を収めました。
ファンケルの販管費
通信販売は一見すると、店頭販売に比べてコストが抑えられる印象を持たれやすいですが、自社のサイトに集客しなければ販売する機会が一切ありません。
したがって、自社ECサイトに集客するため、広告宣伝費などのマーケティング費用に多額の資金を投資しています。
会計クイズ:まとめ
最後にまとめです。
今回は化粧品業界というテーマで、化粧品を製造販売する3社のビジネスモデルを比較しました。
同じ化粧品業界と言っても、ビジネスモデルが異なることによってコスト構造が全く違うことが決算数値を見ることによって読み取ることができます。
以上、今回のクイズの正解は、選択肢①が資生堂でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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<この分析記事の出典データ>
株式会社ファンケル IR
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