近年のデジタル化の波により、簿記における「電子記録債権・電子記録債務」の取り扱いがますます重要になってきています。
本記事では、電子記録債権・電子記録債務の簿記上の基本的な理解を深めることを目的に、取引の全体像や仕組み、仕訳事例について分かりやすく解説していきます。
電子記録債権・電子記録債務の知識を身につけて、簿記のスキルを向上させましょう。
目次
- 電子記録債権・電子記録債務とは?
- 電子記録債権
- 電子記録債務
- 電子記録債権・債務の簿記試験登場の背景
- 電子記録債権・債務の仕組み
- 電子記録取引の流れ:債務者が請求するパターン
- 電子記録取引の流れ:債権者が請求するパターン
- 電子記録債権・債務の確認問題
- 正解発表
- 電子記録債権・債務のメリット・デメリットは?
- 電子記録債権・債務を使うメリット
- 電子記録債権・債務を使うデメリット
- 電子記録債権・債務の取引の全体像
- 電子記録債権の取引の全体像
- 電子記録債務の取引の全体像
- 電子記録取引の仕訳事例
- 電子記録債権に移行した時の仕訳事例
- 電子記録債務に移行した時の仕訳事例
- 電子記録債権・債務の会計処理
- 簿記検定で出題される電子記録債権・債務の問題
- 電子記録債権・債務の仕訳問題の配点
- 電子記録債権・債務の仕訳問題に挑戦
- 電子記録債権・債務のまとめ
なお、簿記を基礎からしっかり学びたい方は、まずは先に下記のトレーニングから始めてみてください。
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電子記録債権・電子記録債務とは?
電子記録債権(でんしきろくさいけん)・電子記録債務(でんしきろくさいむ)とは、手形や掛け取引を電子化したものです。
紙の書類の場合は、書類を送る費用が発生したり、管理が手間となることが少なくありません。
そこで、電子上で管理することにより管理の手間を大きく削減することができます。
電子記録債権
電子記録債権とは、電子化された債権のことをいいます。
具体的には、売掛金や受取手形などの債権を電子上で切り替え管理します。
会計上では、資産の勘定科目となります。
電子記録債務
電子記録債務とは、電子化された債務のことをいいます。
具体的には、買掛金や支払手形などの債務を電子上で切り替え管理します。
会計上では、負債の勘定科目となります。
勘定科目について基礎から学びたい方は、下記の記事をご覧ください。
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電子記録債権・債務の簿記試験登場の背景
電子記録による管理は、利便性の高さから中小企業を中心に急速に広がっています。
そのような状況を背景として、電子記録債権・電子記録債務という論点が日商簿記の試験範囲に新たに加わりました。
(平成28年6月施工予定の第143回の検定試験から試験範囲となります。)
電子記録債権・債務の仕組み
電子記録債権・債務では、登場人物が3者存在します。
- 電子債権記録機関
- 債権者(売り手)
- 債務者(買い手)
電子記録取引の流れ:債務者が請求するパターン
債務者は電子債権記録機関への発生記録の請求を行います。
その後、債権者に対してその旨が通知され、電子記録への切り替えが行われます。
電子記録取引の流れ:債権者が請求するパターン
債権者は電子債権記録機関へ請求を行います。
その後、債務者がこれを承諾することで、電子記録債権への切り替えが行われます。
債権者側からも債務者側からも、電子債権記録機関への請求が可能となっています。
債務者請求方式と、債権者請求方式では、微妙に手続きが異なりますが、簿記の試験では全体の流れを押さえるだけで十分です。
電子記録債権・債務の確認問題
それでは、ここまでの内容を踏まえて、電子記録債権・債務に関する問題です。
電子記録債権・債務の特徴として正しいものは?
タップで回答を見ることができます
現金として扱われる
証券化された証書が必要
電子的に記録・管理される
管理に手間がかかる
正解発表
正解は選択肢③電子的に記録・管理されるです。
電子記録債権・電子記録債務は、証券化された証書が必要なく、電子的に記録・管理される特徴があります。
電子記録債権・債務のメリット・デメリットは?
ここからは、電子記録債権・債務を使うメリット、デメリットについて解説します。
電子記録債権・債務を使うメリット
債権者側は、紛失・盗難リスクの対策や管理する手間を削減するメリットがあります。
一方、債務者側は、収入印紙代の節約や事務手続きの簡略化などのメリットがあります。
電子記録債権・債務を使うデメリット
電子記録債権・債務は取引相手も利用していないと使えません。
また、手数料がかかったり会計処理変更の手間がかかったりするなどのデメリットもあります。
電子記録債権・債務の取引の全体像
電子記録債権の取引の全体像
電子記録債権を用いた取引の流れの全体像を紹介します。
商品の販売
まず、商品を販売し売上と同時に売掛金が増加します。
電子記録へ移行
次に、売掛金を電子記録債権へ移行します。その際、売掛金が減少し、電子記録債権が増加します。
代金の回収
その後、返済期限となり代金を回収するとともに、電子記録債権の金額が減少します。
電子記録債務の取引の全体像
電子記録債務を用いた取引の流れの全体像を紹介します。
商品の仕入れ
まず、商品を仕入れ、仕入と同時に買掛金が増加します。
電子記録への移行
次に、買掛金を電子記録債務へ移行します。その際、買掛金が減少し、電子記録債務が増加します。
代金の支払い
その後、返済期限となり代金を支払うとともに、電子記録債務の金額が減少します。
電子記録取引の仕訳事例
簿記上の取引事例を通じて、電子記録取引の仕訳方法を解説します。
電子記録債権に移行した時の仕訳事例
当社は、取引先に1,500円分の商品を掛けで販売していたが、取引先が掛け代金の支払いに電子記録債権を用いることにしたと取引銀行から連絡があった。
上記の取引事例を使い、電子記録債権に移行した時の仕訳の流れを順に説明します。
電子記録債権への移行時:電子記録債権の増加
売掛金を電子記録債権に切り替えるため、電子記録債権が増加します。
そのため、借方(左側)に電子記録債権(資産)1,500円を記入します。
電子記録債権への移行時:売掛金の減少
売掛金を電子記録債権に切り替えるため、売掛金が減少します。
したがって、貸方(右側)に売掛金(資産)1,500円を記入します。
電子記録債務に移行した時の仕訳事例
当社は、取引先から4,000円分を掛けで仕入れていたが、掛け代金の支払いに電子記録債務を用いることにし、取引銀行を通じて債務の発生記録を行った。
上記の取引事例を使い、電子記録債務に移行した時の仕訳の流れを順に説明します。
電子記録債務への移行時:電子記録債務の増加
買掛金を電子記録債務に切り替えるため、電子記録債務が増加します。
そのため、貸方(右側)に電子記録債務(負債)4,000円を記入します。
電子記録債務への移行時:買掛金の減少
買掛金を電子記録債務に切り替えるため、買掛金が減少します。
したがって、借方(左側)に買掛金(負債)4,000円を記入します。
電子記録債権・債務の会計処理
最後に、電子記録債権・債務の会計処理を見ていきます。
電子記録債権・債務は商品の売買時、切り替え時、返済期限日の流れを必ず押さえておきましょう。
電子記録債権の取引の全体像
電子記録債務の取引の全体像
簿記検定で出題される電子記録債権・債務の問題
電子記録債権・債務の論点は、簿記検定でも頻出です。
特に日商簿記検定3級では、毎回必ず第1問の仕訳問題で出題されます。
具体的には、問題文で与えられている取引を仕訳に変換する問題です。
通常、勘定科目と金額の完全解答で、配点が付与されます。部分点方式ではありませんので、似ている勘定科目名を選んだり、金額の入力ミスをしたりしないように注意しましょう。
電子記録債権・債務の仕訳問題の配点
簿記3級の試験において、電子記録債権・債務の仕訳問題は、第1問にて1~2問出題されます。
第1問は45点満点で、1問3点の仕訳問題が15問出題される問題構成です。
したがって、電子記録債権・債務の仕訳問題ができるようになることで、3~6点をものにすることができます。
電子記録債権・債務の仕訳問題の解き方について詳しく知りたい方は、下記の記事がおすすめです。
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電子記録債権・債務の仕訳問題に挑戦
簿記検定でも頻出となる電子記録債権・債務の仕訳問題の正答率を高めるためには、練習問題が必須です。
Funda簿記の公式LINEでは、仕訳問題を無料で解くことができます。
この記事の内容の復習として、早速、下記のLINEアプリから練習問題に挑戦してみてください。
電子記録債権・債務のまとめ
今回は簿記3級に登場する「電子記録債権・債務」の意味や仕訳方法について解説しました。
電子記録債権・債務は近年のデジタル化の波により注目されている分野であるため、仕訳事例をよく押さえておく必要があります。
試験問題でも登場する可能性の高い勘定科目であるため、しっかり理解しておきましょう!
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