この記事では、簿記の学習者が苦手意識を持ちやすい帳簿の解説をはじめ、「T字勘定」の使い方についてを図解で解説します。
T字勘定を使いこなせるようになると、簿記試験の合格はもちろん、勘定分析の基礎が身に付きます。
初学者にもわかるように、T字勘定の使い方を丁寧に解説しているので、ぜひ最後までお付き合いください。
目次
- 簿記の必須知識「T字勘定」とは?
- 簿記の全体像と総勘定元帳の位置づけ
- なぜT字勘定を使うのか?
- 簿記のT字勘定の考え方
- 勘定科目を振り分ける簿記の5つのグループ
- 貸借対照表科目の簿記のT字勘定
- 損益計算書科目の簿記のT字勘定
- 簿記のT字勘定の構成要素
- 貸借対照表科目の構成要素
- 損益計算書科目の構成要素
- 簿記のT字勘定の記入手順
- T字勘定の記入手順①大枠を記入
- T字勘定の記入手順②期首残高を記入
- T字勘定の記入手順③期中の取引を記入
- T字勘定の記入手順④期末残高を記入
- T字勘定の記入手順:まとめ
- 実際の試験形式
- 簿記のT字勘定:まとめ
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簿記の必須知識「T字勘定」とは?
T字勘定とは、仕訳をまとめるため、勘定科目別に作成する図のことをいいます。アルファベットの「T」の形をしていることからT字勘定と呼ばれています。
T字勘定は、総勘定元帳(下記で解説)を省略したものです。簿記検定にて出題される総勘定元帳の書き方は、T字勘定で書かれる場合が多いため、簿記検定を受験する際には、覚えておいて損はない知識となります。
簿記の全体像と総勘定元帳の位置づけ
T字勘定を理解するためには、簿記における取引記録の全体図を知る必要があります。
下記は取引記録の全体図を図解したものです。
図にも表されているように、日々の取引は、①仕訳帳に記録され、②仕訳帳から総勘定元帳に転記し、③その後、財務諸表が作成されます。
総勘定元帳とは、勘定科目別に取引が記録されている帳簿です。
総勘定元帳を見ることで、各勘定科目がどのような原因で増減したかを知ることができます。
T字勘定とは、この総勘定元帳を省略したものを意味します。
簿記試験でも、紙面の都合から出題される総勘定元帳の書き方は、T字勘定で表現されることが多いです。
なぜT字勘定を使うのか?
なぜT字勘定を使うことをお勧めするのかというと、仕訳や帳簿の動きを視覚的に把握することができるからです。視覚的に把握することで、ミスの防止はもちろん、新たな気づきを得るきっかけとなります。
従って、簿記試験では積極的にT字勘定を使うことをお勧めしています。
簿記のT字勘定の考え方
ここからは、簿記試験でもそのまま使える「T字勘定」の考え方を解説します。
T字勘定に、取引を記入していくことになりますが、正確に記入するためには、背景にある考え方を理解する必要があります。
勘定科目を振り分ける簿記の5つのグループ
T字勘定を理解する際に、まずは勘定科目ごとのホームポジション(借方科目か、貸方科目か)を確認する必要があります。
勘定科目は、資産、負債、純資産、収益、費用の5つに分けられ、それぞれにホームポジションが決められています。
貸借対照表科目の簿記のT字勘定
まずは、貸借対照表科目(資産、負債、純資産)のT字勘定入力ルールを紹介します。
資産科目の場合、ホームポジションは借方(左)となります。
従って、増加する場合は借方、減少する場合には貸方に記入します。
一方、負債・純資産科目の場合、ホームポジションは貸方(右)となります。
従って、増加する場合は貸方、減少する場合には借方に記入します。
損益計算書科目の簿記のT字勘定
次は、損益計算書科目(収益、費用)のT字勘定入力ルールを紹介します。
収益科目の場合、ホームポジションは貸方(右)となります。
従って、増加する場合は貸方、減少する場合には借方に記入します。
一方、費用科目の場合、ホームポジションは借方(左)となります。
従って、増加する場合は借方、減少する場合には貸方に記入します。
このように、勘定科目によって、入力する箇所が左右で入れ替わるため、注意が必要です。
T字勘定を記入する際には、勘定科目のホームポジションを常に意識しましょう。
簿記のT字勘定の構成要素
次は、T字勘定の構成要素について解説します。
T字勘定は、貸借対照表科目(資産・負債・純資産)と損益計算書科目(収益・費用)で構成が異なります。
貸借対照表科目の構成要素
貸借対照表科目の場合、①期首残高、②期中変動額、③期末残高の3つの構成要素となります。
上述したホームポジションが入れ替わると、構成要素の書き方も逆となります。
損益計算書科目の構成要素
損益計算書科目の場合、①期中変動額、②損益の2つの構成要素となります。
収益・費用は1年ごとに集計され、年度が替わるとまた0からスタートします。
従って、繰り越し等は存在しません。
損益計算書項目も、上述したホームポジションが入れ替わると、構成要素の書き方も逆となります。
簿記のT字勘定の記入手順
ここからは、実際にT字勘定を埋めていく流れを紹介します。
今回は貸借対照表科目である「現金」のT字勘定を埋めていきます。
T字勘定の記入手順①大枠を記入
T字勘定を埋める最初のステップは、T字勘定の大枠を記入することです。
今回は貸借対照表科目であるため、構成要素は①期首残高、②期中変動額、③期末残高の3つです。
さらに、現金は資産科目であるため、ホームポジションは借方(左側)となります。
T字勘定の記入手順②期首残高を記入
大枠を記入したら、期首残高から金額を埋めていきます。
前期から繰り越された現金の金額が300円あるため、T字勘定の期首残高に300円を記入します。
T字勘定の記入手順③期中の取引を記入
次は期中取引をT字勘定に記入します。
商品を販売したことによる現金の増加1,000円を期中増加に記入し、商品を仕入れたことによる現金の減少を期中減少に記入します。
さて、ここまでの内容を反映したT字勘定を確認してみましょう。
数字の情報のみ記入されていますが、これだと「何が原因で数字が増減したか?」をT字勘定から読み解くことができません。
そこで、数字の左に「増減の原因となった相手勘定」を記入します。
商品を販売した結果、現金が増加した場合は「売上」を記入。
商品を仕入れた結果、現金が減少した場合は「仕入」を記入します。
T字勘定の記入手順④期末残高を記入
最後に、期首残高に期中の増減額を加減し期末残高の数値を計算し記入します。
T字勘定の記入手順:まとめ
これで現金のT字勘定が完成しました。
いきなりすべてを覚えるのは難しいかもしれませんが、何回もT字勘定を作成することで、自然とできるようになります。
実際の試験形式
簿記3級の試験では大問2でT字勘定を埋める形式の問題が出題されます。
取引が提示され、それを元に仕訳を行いT字勘定に構成要素や増減の原因となった相手勘定、取引の数値を記入する問題です。
右と左を逆に記入しないよう注意しましょう。
簿記のT字勘定:まとめ
以上、今回はT字勘定の解説でした。苦手な人も多い帳簿の論点ですが、1つずつ丁寧に追っていくことで必ず理解できるようになります。
T字勘定を使いこなせるようになると、パズルを解くような感覚で、簿記の問題を解いたり、勘定分析ができるようになります。
この記事を参考に、まずは自分の手を動かして紙にT字勘定を作成してみましょう。
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